「確定申告」と「市県民税申告」、名前は似ているけれど、一体何が違うの? と思っている人も多いのではないでしょうか。結論から言うと、 確定申告と市県民税申告の違い は、申告する場所や目的、そして計算方法にあります。それぞれの特徴を理解することで、スムーズに手続きを進めることができますよ。
申告の「窓口」が違う! どこに提出するの?
まず、一番分かりやすい違いは、どこに申告書を提出するかという点です。確定申告は、国に税金を納めるための手続きなので、国税庁の管轄である税務署に提出します。一方、市県民税申告は、お住まいの市区町村に納める税金に関する手続きなので、市区町村役場に提出することになります。
この「提出先」の違いを理解しておくと、どちらに何を提出すれば良いかが明確になります。
- 確定申告: 税務署へ
- 市県民税申告: 市区町村役場へ
では、具体的にどのような書類を、いつ、どのように提出するのか、もう少し詳しく見ていきましょう。
申告の「目的」が違う! 何のために申告するの?
確定申告と市県民税申告では、それぞれ「何のために申告するのか」という目的が異なります。確定申告は、主に所得税の計算と納税のために行われます。1年間の収入から経費などを差し引いて、いくら税金を納める必要があるのかを計算し、税務署に報告する手続きです。
対して、市県民税申告は、住民税(市民税・県民税)の計算と納税のために行われます。住民税は、前年の所得に基づいて計算され、お住まいの市区町村に納める地方税です。
| 申告の種類 | 主な目的 | 納める税金 |
|---|---|---|
| 確定申告 | 所得税の計算・納税 | 所得税 |
| 市県民税申告 | 住民税の計算・納税 | 住民税(市民税・県民税) |
たとえば、給与所得者で年末調整を受けている場合、所得税の確定申告は不要なことが多いですが、住民税の計算のために市県民税申告が必要になるケースもあります。
申告の「計算方法」が違う! 税金の計算はどうなるの?
確定申告と市県民税申告では、税金の計算方法にも違いがあります。所得税は、個人の所得に対してかかる税金であり、国が定めた税率で計算されます。所得の種類や金額によって税率が変わることがあります。
一方、住民税は、前年の所得に対してかかる税金で、一般的に所得額に対して一定の税率(都道府県民税と市町村民税を合わせた税率)が適用されます。
- 所得税の計算: 収入から経費や各種控除を差し引いた「課税所得」に、累進課税率(所得が多いほど税率が高くなる)をかけて税額を計算します。
- 住民税の計算: 前年の所得から社会保険料控除などを差し引いた「課税所得」に、ほぼ均一の税率(所得割)と、所得にかかわらず一定額がかかる「均等割」を合算して税額を計算します。
また、確定申告で利用できる控除(医療費控除や寄附金控除など)は、市県民税申告でも同様に適用されることが多いですが、一部異なる場合もあります。
申告「対象者」の違い:誰が申告する必要があるの?
確定申告と市県民税申告では、申告の対象となる人も異なります。一般的に、確定申告は、一定以上の所得がある人や、特定の控除を受けたい人が行うものです。
一方、市県民税申告は、前年中に所得があった人で、確定申告をしていない場合に必要となることが多いです。
- 確定申告が必要な人(例):
- 給与所得者で、給与以外の所得が年間20万円を超える人
- 自営業者やフリーランスの人
- 不動産収入や配当所得がある人
- 市県民税申告が必要な人(例):
- 前年中に所得があったが、確定申告をしなかった人
- 扶養に入っているが、アルバイトなどで一定以上の収入があった人
申告「時期」の違い:いつまでに申告すればいいの?
申告の時期も、確定申告と市県民税申告では異なります。確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間の所得について、原則として翌年の2月16日から3月15日までの間に申告を行います。
市県民税申告の時期は、市区町村によって多少異なりますが、一般的には確定申告の時期(2月下旬~3月)に合わせて行われることが多いです。
| 申告の種類 | 対象期間 | 申告期間 |
|---|---|---|
| 確定申告 | 1月1日~12月31日 | 翌年2月16日~3月15日 |
| 市県民税申告 | 前年1月1日~12月31日 | 市区町村により異なる(例:2月16日~3月15日頃) |
申告「種類」の違い:どんな申告書があるの?
確定申告と市県民税申告では、使用する申告書の種類も異なります。確定申告では、所得の種類に応じて様々な申告書が用意されています。例えば、給与所得者は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」や「給与所得者の保険料控除申告書」、自営業者は「所得税青色申告決算書」などです。
市県民税申告では、一般的に「市民税・県民税申告書」という1枚の用紙で手続きを行います。
- 確定申告書:
- 給与所得、事業所得、不動産所得など、所得の種類ごとに細かく分かれています。
- 税額控除や還付申告のための申告書もあります。
- 市県民税申告書:
- 前年の所得状況などをまとめて記入します。
- 確定申告書を提出した場合は、市県民税申告は不要なことが多いです。
申告「内容」の違い:所得以外に申告することは?
確定申告では、主に所得の計算とそれに伴う税額の計算を行います。各種所得控除(扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除など)を適用することで、所得税額が軽減されます。
市県民税申告では、所得に関する情報に加えて、前年の所得や控除の情報が、市区町村で住民税を計算するために使われます。
| 申告の種類 | 主な申告内容 |
|---|---|
| 確定申告 | 1年間の収入、経費、所得控除、税額控除など |
| 市県民税申告 | 前年の所得、扶養家族の状況、社会保険料控除など(確定申告をしない場合) |
ただし、退職した年の住民税の計算や、ふるさと納税のワンストップ特例制度を利用しない場合など、例外的に市県民税申告が必要となるケースもあります。
まとめ:確定申告と市県民税申告、正しく理解しよう!
ここまで、確定申告と市県民税申告の違いについて、窓口、目的、計算方法、対象者、時期、申告書の種類、申告内容といった様々な側面から解説してきました。どちらの申告も、ご自身の税金を正しく納めるために大切な手続きです。ご自身の状況に合わせて、どちらの申告が必要なのか、いつまでに済ませれば良いのかをしっかりと確認し、漏れなく手続きを行いましょう。