「企業年金」と「退職金」、どちらも会社から退職時に受け取れるお金ですが、実はその仕組みや性格には大きな違いがあります。「企業年金と退職金の違い」をしっかり理解することで、将来のライフプランをより具体的に描くことができますよ。
企業年金と退職金、根本的な違いとは?
まず、一番分かりやすいのは「いつ、どのような形でお金がもらえるか」という点です。退職金は、文字通り「退職した時に一度にまとめて」もらうのが一般的です。一方、企業年金は、退職後も「年金形式で毎月少しずつ」受け取れるのが特徴です。もちろん、退職金も企業年金も、会社によって制度が違うので、一概には言えませんが、この「一時金か、年金か」という点が、両者の大きな分かれ目となります。 将来の生活設計を立てる上で、この違いは非常に重要です。
それぞれの特徴をもう少し詳しく見てみましょう。
-
退職金:
- 退職時に一時金として支払われる。
- まとまった金額なので、住宅購入の頭金や大きな買い物の資金にできる。
- 税制面で優遇措置がある場合が多い。
-
企業年金:
- 退職後、年金として分割で支払われる。
- 老後の生活費として、毎月安定した収入が得られる。
- 運用によって、将来受け取れる金額が増える可能性がある。
このように、どちらがお得か、ということは一概には言えません。ご自身のライフプランや、将来どのような生活を送りたいかによって、どちらの制度がより適しているかが変わってきます。
| 項目 | 退職金 | 企業年金 |
|---|---|---|
| 受け取り方 | 一時金(まとめて) | 年金(分割) |
| 受け取り時期 | 退職時 | 退職後 |
| 主な目的 | まとまった資金の活用 | 老後の生活費の確保 |
企業年金の種類の違い
企業年金と一口に言っても、実はいくつかの種類があります。代表的なものとして、「確定給付企業年金(DB)」と「企業型確定拠出年金(DC)」があります。この二つの違いを理解することが、企業年金と退職金の理解を深める上で大切です。
まず、「確定給付企業年金(DB)」について説明しましょう。これは、あらかじめ「いくら」もらえるかが決まっている年金制度です。会社が運用方法などを決めて、従業員のために資金を積み立ててくれます。従業員は、将来いくらもらえるかが分かっているので、安心感があります。まるで、お菓子屋さんが「このクッキーは1個100円だよ」と決めてくれるようなイメージです。
次に、「企業型確定拠出年金(DC)」です。こちらは、会社が毎月一定額を従業員のために積み立ててくれますが、その運用は従業員自身が行います。投資信託などで自分で運用していくことになります。運用がうまくいけば将来たくさんのお金がもらえる可能性がありますが、逆にうまくいかないと、もらえる金額が減ってしまうリスクもあります。こちらは、自分で好きなお菓子を選んで買う、といったイメージに近いでしょう。
これらの違いは、退職金との比較でも重要になってきます。退職金は基本的には一時金で、運用リスクは会社が負うことが多いですが、企業年金、特にDCの場合は、自分で運用することになるため、リスクとリターンの両方を考える必要があります。
- 確定給付企業年金(DB):もらえる金額が決まっている。
- 企業型確定拠出年金(DC):自分で運用して、もらえる金額が決まる。
退職金制度の多様性
退職金制度は、会社によって本当に様々です。一律の金額が支払われる場合もあれば、勤続年数や役職によって金額が変わる場合もあります。また、退職金制度がない会社も増えてきています。この「制度があるかないか」も、企業年金との違いを考える上で、まず確認すべき点です。
退職金制度には、主に「中小企業退職金共済」のような制度を利用している場合や、会社が独自に制度を設けている場合があります。どちらにしても、退職金は、長年会社に貢献したことへの感謝の印として、まとまったお金で支払われることが一般的です。
退職金がどのように計算されるか、というのは会社ごとに異なります。よくある計算方法としては、以下のようなものが挙げられます。
- 基本給×勤続年数×係数 :勤続年数が長ければ長いほど、もらえる金額は増えます。
- 役職や職務給による加算 :役職によって、さらに金額が上乗せされることもあります。
会社によっては、退職金としてではなく、福利厚生の一環として、退職後の年金制度(企業年金)を充実させている場合もあります。ですから、まずはご自身の会社がどのような制度を持っているのかを、人事部などに確認することが大切です。
企業年金と退職金の税金の違い
お金を受け取るとなると、気になるのが税金ですよね。企業年金と退職金では、税金の計算方法や、優遇措置に違いがあります。
退職金は、「退職所得」として扱われ、勤続年数に応じて計算される「退職所得控除」という、手厚い税金控除が受けられます。これは、退職金は長年の勤労に対する報酬であり、一時的に大きな金額が入るため、税負担を軽減するための措置です。例えば、勤続20年以上の場合は、1年につき40万円(最高800万円まで)が所得から差し引かれます。
一方、企業年金は、受け取り方によって税金の扱いが変わります。一時金として受け取る場合は、退職金と同じように退職所得として扱われ、退職所得控除が適用されることが多いです。しかし、年金形式で受け取る場合は、「雑所得」として、毎年年金を受け取るたびに所得税がかかります。ただし、公的年金等控除という、こちらも一定の控除があります。
どちらの制度も、税制上の優遇措置はありますが、受け取り方や金額によって、最終的に手元に残る金額は変わってきます。ご自身の状況に合わせて、どのような受け取り方が税金面で有利になるのかを検討することも重要です。
制度の選択肢とその影響
会社によっては、退職金制度と企業年金制度の両方を持っている場合もあれば、どちらか一方、あるいはどちらもない場合もあります。また、企業型確定拠出年金(DC)のように、従業員自身が運用方法を選ぶことができる制度もあります。
これらの制度の選択肢は、将来受け取れる金額に大きく影響します。例えば、DCの場合、若い頃から積極的にリスクを取って運用することで、将来的に大きな資産を築ける可能性があります。しかし、リスクを避けたい場合は、より安全な運用方法を選ぶことになります。
退職金制度しかない会社で働いている場合、退職後の生活資金は、貯蓄や投資など、自分で計画を立てて準備する必要があります。一方、充実した企業年金制度がある会社では、退職後の収入がある程度保障されるため、より安心して老後を迎えられるでしょう。
もし、ご自身の会社にどのような制度があるか分からなければ、まずは人事担当者に確認してみましょう。どのような制度があるかを知ることが、将来設計の第一歩となります。
まとめ:自分に合った制度を知ることが大切
「企業年金と退職金の違い」は、将来の生活設計を考える上で非常に重要なポイントです。退職金は一時金でまとまったお金、企業年金は年金形式で毎月受け取れるお金。それぞれの特徴を理解し、ご自身の会社の制度をしっかり把握することが、将来への安心につながります。