課税事業者と免税事業者の違いを徹底解説!知っておきたいビジネスの基本

「課税事業者」と「免税事業者」、この二つの言葉、ビジネスをしている方なら一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか? 実は、この 課税事業者と免税事業者の違い を理解することは、事業運営において非常に重要です。どちらに該当するかで、消費税の扱いが大きく変わり、税金計算や事務手続きに影響が出てくるからです。今回は、この二つの違いについて、分かりやすく解説していきます。

消費税の納税義務者、それが課税事業者

まず、結論から言うと、 課税事業者と免税事業者の違い の最も大きな点は、消費税を国に納める義務があるかどうかです。課税事業者とは、文字通り、消費税を納める義務がある事業者のことを指します。これは、事業者が商品やサービスを提供した際に、受け取った消費税を、最終的に国に納める必要があるということです。

課税事業者になるかどうかは、主に「基準期間」という期間における「課税売上高」によって決まります。基準期間とは、原則として、前々年のことを指します。例えば、2023年の課税事業者かどうかを判断する基準期間は、2021年となります。

  • 課税売上高とは: 消費税の課税対象となる商品やサービスの売上高のことです。
  • 課税事業者になる基準: 基準期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合、原則として翌課税期間から課税事業者となります。

しかし、例外もあります。例えば、特定期間(上半期など)の課税売上高などが一定額以上の場合、前々年の課税売上高が1,000万円以下でも課税事業者となることがあります。また、新たに事業を開始した場合などは、課税売上高がまだ確定していないため、簡易課税制度や、消費税課税事業者選択届出書を提出しない限り、免税事業者としてスタートすることが一般的です。

課税事業者 消費税を納める義務がある
免税事業者 消費税を納める義務がない

免税事業者とは?消費税を納めなくていいラッキーな人?

一方、免税事業者とは、消費税を納める義務がない事業者のことです。これは、事業者が商品やサービスを提供しても、受け取った消費税を国に納める必要がないということです。一見すると、免税事業者の方が有利に聞こえるかもしれませんが、そう単純な話ではありません。

免税事業者になれる条件は、先ほどの課税事業者の逆で、基準期間の課税売上高が1,000万円以下である場合です。ただし、これも例外があり、先ほど説明した特定期間の売上高などで課税事業者になるケースもあります。

  1. 基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円以下
  2. 基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも、特定期間(上半期など)の課税売上高が1,000万円を超える場合(※これは課税事業者になるケースです)

免税事業者であることのメリットは、消費税の計算や申告といった事務手続きが不要になることです。これにより、経理業務の負担が軽くなります。しかし、後述しますが、取引先との関係や、価格設定において不利になる場合もあるのです。

課税事業者と免税事業者の関係性:請求書の発行

課税事業者と免税事業者の違い は、請求書の発行方法にも影響します。課税事業者は、発行する請求書に消費税額を明記する必要があります。これは、取引先が仕入税額控除を受けるために必要な情報だからです。

一方、免税事業者は、請求書に消費税額を明記する必要はありません。ただし、免税事業者であることを明示するために、「消費税法により免税事業者であるため、請求書に消費税額の記載はございません」といった旨を記載することが推奨される場合もあります。

  • 課税事業者の請求書: 商品・サービス代金+消費税額を明記
  • 免税事業者の請求書: 商品・サービス代金のみ。消費税額の記載は不要

この請求書の記載方法の違いは、取引先が消費税の計算をする上で重要なポイントとなります。

インボイス制度(適格請求書等保存方式)と課税事業者・免税事業者

近年、 課税事業者と免税事業者の違い を語る上で、避けて通れないのが「インボイス制度」です。インボイス制度は、消費税の仕入税額控除の適用を受けるために、売り手が買い手に対して発行する「適格請求書(インボイス)」の保存を義務付ける制度です。

この制度により、課税事業者は、インボイスを発行するためには「適格請求書発行事業者」の登録をする必要があります。適格請求書発行事業者になるためには、課税事業者であることが前提となります。

  1. インボイス制度とは: 消費税の仕入税額控除を受けるための請求書がインボイス。
  2. 適格請求書発行事業者: インボイスを発行できる事業者。課税事業者のみ登録可能。

免税事業者は、原則としてインボイスを発行できません。そのため、取引先が課税事業者である場合、免税事業者から仕入れを行うと、その仕入にかかる消費税を控除できなくなってしまいます。これが、免税事業者にとっての大きなデメリットとなり、取引先から課税事業者になることを求められるケースが増えています。

インボイス制度導入後、免税事業者は、

  • 自身も課税事業者になる
  • 取引先との関係を維持するために、価格交渉を行う
  • インボイスを発行できないことを理解してくれる取引先とのみ取引を行う
といった対応を迫られることになります。

仕入税額控除の仕組み

課税事業者と免税事業者の違い は、消費税の「仕入税額控除」の仕組みに深く関わってきます。課税事業者は、売上にかかる消費税額から、仕入れにかかった消費税額を差し引いた差額を納付します。この仕入れにかかった消費税額を差し引くことを「仕入税額控除」といいます。

しかし、免税事業者は消費税を納める義務がないため、仕入れにかかった消費税を控除することはできません。これは、免税事業者が仕入れを行う際には、消費税も含めた総額で費用を負担することになる、ということを意味します。

課税事業者 売上消費税 - 仕入消費税 = 納付税額
免税事業者 仕入消費税の控除はできない

インボイス制度により、課税事業者は、仕入税額控除を受けるためには、原則としてインボイスの保存が必要となりました。これにより、免税事業者からの仕入れは、課税事業者にとっては仕入税額控除ができなくなるというデメリットが生じるのです。

価格設定への影響

課税事業者と免税事業者の違い は、当然ながら価格設定にも影響します。免税事業者は、消費税を納める義務がないため、売上にかかった消費税分をそのまま利益にできると考えることができます。そのため、同じ商品やサービスであっても、免税事業者の方が課税事業者よりも低価格で提供できる可能性があります。

しかし、インボイス制度導入後は、この関係性が複雑化しています。課税事業者にとって、免税事業者から購入すると仕入税額控除ができないため、実質的な負担が増えることになります。そのため、課税事業者は、免税事業者との取引で、価格交渉を求めることが考えられます。

  1. 免税事業者の価格+消費税(納付しない)=取引先にとっての購入価格
  2. 課税事業者の価格+消費税(納付する)=取引先にとっての購入価格

このように、インボイス制度が導入されたことで、免税事業者が取引先から値引きを求められたり、課税事業者になることを促されたりするケースが増えています。

まとめ:どちらを選ぶべき?

課税事業者と免税事業者の違い について、ここまで詳しく解説してきました。どちらが良い、どちらが悪いということは一概には言えません。ご自身の事業規模、取引先、将来的な展望などを考慮して、どちらの立場がご自身にとって有利になるかを慎重に判断する必要があります。

特にインボイス制度導入後は、免税事業者であっても、取引先との関係維持のために課税事業者になることを検討するケースが多くなっています。ご不明な点があれば、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

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