「退職所得」と「退職金」、この二つの言葉、何となく似ているけれど、実際にはどんな違いがあるのでしょうか？ 実は、この 退職所得 と 退職金 の 違い を理解することは、退職後の生活設計においてとても大切なんです。今回は、この二つの違いを分かりやすく、そして詳しく解説していきますね。
退職金は「もらえるお金」、退職所得は「税金計算のための枠組み」
まず、一番根本的な違いを説明しましょう。退職金というのは、会社を辞める時に会社から支払われる「実際のお金」そのものを指します。これは、長年勤めたことへの感謝の気持ちや、これからの生活を応援する意味合いで支払われるものです。
一方、退職所得というのは、その退職金という「お金」に対して、国が「税金」を計算するために設けた考え方、いわば「枠組み」のことです。退職金は、働いて得た給料とは違う特別な収入とみなされるため、税金の計算方法も特別になっているんですね。 この税金計算上の考え方こそが、退職所得の最も重要な特徴です。
- 退職金：会社から支払われる、実際に手にするお金。
- 退職所得：退職金にかかる税金を計算するための、税法上の考え方。
退職金を受け取るときの税金はどうなる？
退職金には、給料とは違った税金の優遇措置があります。これは、長年会社のために頑張ってくれたことへの感謝の気持ちを、税金面でもサポートしようという考え方からです。
退職金を受け取ったとき、まず「退職所得控除」というものがあります。これは、勤続年数に応じて、退職金から一定額を差し引くことができる制度です。この控除額が大きいので、多くの人が退職金にかかる税金を安く済ませることができます。
例えば、勤続年数が20年以下の場合と20年を超える場合で、控除額の計算方法が変わってきます。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 80万円（40万円×勤続年数） | （勤続20年以下） |
| 800万円＋70万円×（勤続年数－20年） | （勤続20年超） |
そして、この退職所得控除を差し引いた金額に、さらに「1/2課税」という優遇措置が適用される場合があります。これは、退職所得の金額を半分にして税金を計算するというもので、さらに税負担を軽くしてくれるんです。 これらの優遇措置があるかないかで、退職金の手取り額は大きく変わってきます。
退職所得の計算方法：具体的に見てみよう
では、実際に退職所得がどのように計算されるのか、もう少し詳しく見てみましょう。
まず、退職金から「退職所得控除額」を差し引きます。これが「課税退職所得」の元になります。計算式は以下のようになります。
課税退職所得 = （退職金の額 － 退職所得控除額）
次に、もし勤続年数が20年を超える場合は、「1/2課税」が適用されます。
1/2課税適用後の金額 = 課税退職所得 × 1/2
この計算された金額に、所得税と住民税がかかることになります。 この計算プロセスを理解しておくと、将来受け取る退職金の目安が立てやすくなります。
例えば、50歳で25年間勤続した人が、退職金として1000万円を受け取った場合を考えてみましょう。
- 退職所得控除額を計算します。勤続25年なので、800万円 + 70万円 × (25年 - 20年) = 800万円 + 350万円 = 1150万円
- 課税退職所得を計算します。1000万円（退職金） - 1150万円（控除額） = -150万円
- この場合、控除額の方が退職金より大きいので、課税される退職所得はゼロになります。つまり、税金はかかりません。
退職所得以外の税金との違い
退職所得は、給料や事業で得た所得とは、税金の計算方法が大きく異なります。給料などの所得には、毎月「給与所得控除」というものがありますが、退職所得控除とは性質が違います。
- 給与所得控除 ：毎月の給料から差し引かれる経費のようなもの。
- 退職所得控除 ：退職金にかかる税金計算のために、勤続年数に応じて特別に設けられた控除。
また、退職所得は、通常、退職時にまとめて支払われるため、「分離課税」という方式で税金が計算されます。これは、他の所得と合算せずに、退職所得だけを独立して税額を計算する方法です。 この分離課税のおかげで、退職金にかかる税金は、給料などの所得と合算した場合よりも抑えられることが多いのです。
つまり、退職所得は、一度に大きな金額を受け取る特別収入に対する、特別な税制優遇措置と言えます。
退職金にはどんな種類がある？
退職金と一口に言っても、会社によって支払われる形態や金額が異なります。主なものとしては、以下のようなものがあります。
- 退職一時金 ：退職時に会社から一時金としてまとめて支払われるもの。
- 企業年金 ：退職後に、会社が運営する年金制度から分割して受け取るもの。
- 確定拠出年金（DB・DC） ：加入者自身が運用方法を選び、将来の年金資産を形成していくもの。
これらの種類によって、退職所得としての扱いや、税金の計算方法が若干異なる場合もあります。 ご自身の退職金がどの種類に該当するかを確認しておくことは、将来の資産計画に役立ちます。
例えば、企業年金の場合、受け取り方によっては、退職一時金とは異なり、年金としての所得税（雑所得など）がかかることもあります。また、確定拠出年金は、運用益に対する税金や、受け取る際の税金も、制度によって決まっています。
退職金と退職所得の違いを理解するメリット
「退職所得 と 退職金 の 違い」をきちんと理解しておくと、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか？
- 手取り額の把握 ：退職金からどれくらい税金が引かれ、実際にいくら手元に残るのかを、より正確に把握できるようになります。
- 賢い資産運用 ：退職金は、まとまった資金として受け取れるので、その後のライフプランに合わせて、どのように使うか、どのように運用するかを考える上で、税金面を考慮した計画が立てやすくなります。
- 将来設計の精度向上 ：退職後の生活費や、老後の資金計画を立てる際に、退職金がどれくらいになるか、税金はどれくらいかかるかを正確に把握することは、計画の精度を大きく高めます。
これらのメリットを享受するためにも、一度、ご自身の退職金制度について確認してみることをお勧めします。
まとめ：退職金と退職所得、上手に付き合おう！
ここまで、「退職所得 と 退職金 の 違い」について、退職金は「もらえるお金」、退職所得は「税金計算のための枠組み」であること、そして税金の優遇措置などについて解説してきました。退職金は、人生の大きな節目で受け取る大切なお金ですから、その税金についても正しく理解しておくと、より安心して、そして賢く活用することができます。
ご自身の会社の退職金制度について、一度確認してみてはいかがでしょうか。そうすることで、将来のライフプランが、より具体的で確かなものになるはずです。