「暴行」と「傷害」、どちらも相手に危害を加える行為ですが、実は法律上、明確な違いがあります。この二つの言葉の 暴行 と 傷害 の 違い を理解することは、もしもの時に自分を守るためにも、とても大切です。
「暴行」とは? ~相手に物理的な力を加えること~
「暴行」とは、相手の身体に直接、物理的な力を加えることです。例えば、相手をつねる、叩く、突き飛ばすといった行為がこれにあたります。 相手に怪我をさせるつもりがなくても、相手に不快感や苦痛を与えるような物理的な接触があれば、暴行になる可能性があります。
暴行のポイントをまとめると、以下のようになります。
- 相手の身体に物理的な力を加えること
- 相手に怪我をさせる意図は問わない
- 殴る、蹴る、つねる、突き飛ばすなど
例えば、以下のようなケースが暴行にあたります。
- 口論になり、相手の腕を掴んで無理やり引き離した。
- 電車の中で、わざと人にぶつかり、相手をよろけさせた。
- 「そこに座るな!」と言って、相手の肩を強く押した。
「傷害」とは? ~相手に怪我を負わせること~
一方、「傷害」は、相手の身体に怪我を負わせることを指します。これは、暴行の結果として生じることが多いですが、暴行とは少し意味合いが異なります。例えば、相手を殴って鼻血を出させたり、骨折させたりする行為が傷害にあたります。
傷害のポイントは以下の通りです。
| 行為 | 結果 |
|---|---|
| 暴行(殴る、蹴るなど) | 相手に怪我(打撲、切り傷、骨折など)を負わせる |
「傷害」の定義は少し広めです。単に外傷があるだけでなく、健康状態を悪化させることも含まれます。
- 身体的な苦痛を与えること
- 病気にさせること
- 病状を悪化させること
例えば、以下のようなケースが傷害にあたります。
- 相手を殴って、顔に大きなアザを作らせた。
- 相手に無理な仕事をさせて、精神的に追い詰め、うつ病にさせたと認定された。
- 風邪をひいている人に、わざと咳を吹きかけた。
「暴行」と「傷害」の決定的な違い
「暴行」と「傷害」の最も大きな違いは、 「相手に怪我を負わせたかどうか」 という点です。
暴行は、相手に物理的な力を加える行為そのものを指します。たとえ相手が怪我をしなくても、その行為自体が「暴行」となります。一方、傷害は、その暴行の結果、相手に「怪我」という具体的な結果が生じた場合に成立します。
ここで、両者の関係性を整理してみましょう。
- 暴行 → 傷害 (暴行の結果、傷害が発生した場合)
- 暴行のみ (相手に怪我をさせなかった場合)
つまり、暴行は傷害の「原因」になることはありますが、必ずしも傷害を引き起こすわけではありません。
「暴行罪」と「傷害罪」の罰則
「暴行罪」と「傷害罪」では、罰則にも違いがあります。
一般的に、相手に怪我を負わせた方が、より重い罪に問われる傾向にあります。これは、法が、身体の安全をより重視しているためです。
| 罪名 | 罰則(例) |
|---|---|
| 暴行罪 | 2年以下の懲役、または30万円以下の罰金 |
| 傷害罪 | 5年以下の懲役、または50万円以下の罰金 |
さらに、相手に重傷を負わせた場合や、死亡させてしまった場合(暴行致死傷罪など)には、さらに重い罰則が科せられます。
法律は、このような行為を未然に防ぎ、社会の安全を守るために存在しています。
「暴行」と「傷害」の判断が難しいケース
中には、「これは暴行なのか?それとも傷害なのか?」と判断が難しいケースもあります。
例えば、相手を軽く押しただけで、相手が驚いて転んでしまい、軽い擦り傷を負ってしまった場合です。この場合、押した行為自体は「暴行」ですが、その結果として「傷害」も成立してしまう可能性があります。
裁判などでは、以下のような点が考慮されます。
- 行為の態様(どのくらいの力で、どのように押したか)
- 相手の年齢や体格
- 転倒した状況
- 負った怪我の程度
これらの要素を総合的に判断して、暴行罪だけで処罰されるのか、それとも傷害罪も問われるのかが決まります。
「暴行」と「傷害」をめぐる様々な状況
「暴行」や「傷害」は、様々な状況で起こり得ます。
例えば、
- 喧嘩や口論 :感情的になって相手を叩いたり、突き飛ばしたりした場合。
- いじめ :学校や職場などで、意図的に相手を傷つける行為。
- DV(ドメスティック・バイオレンス) :家庭内での暴力行為。
これらの行為は、たとえ相手が「大丈夫」と言っても、法律上、問題となる可能性があります。
特に、相手が抵抗できない状態(寝ている、酔っているなど)で危害を加えた場合は、より悪質な行為とみなされることがあります。
まとめ:知っておくべき「暴行」と「傷害」の基本
「暴行」と「傷害」の 暴行 と 傷害 の 違い は、相手に怪我を負わせたかどうか、という点にあります。暴行は相手に物理的な力を加える行為そのものであり、傷害はその結果として怪我を負わせた場合に成立します。
これらの違いを理解しておくことは、自分自身が加害者にも被害者にもならないために、そして万が一、事件に巻き込まれてしまった際に、冷静に対応するためにも非常に重要です。もし、ご自身が被害に遭われたり、加害者になってしまった場合は、すぐに専門家(弁護士など)に相談することをおすすめします。