「うつ病」と「躁鬱病(そううつびょう)」、どちらも「気分」に関わる病気ですが、その症状の現れ方には大きな違いがあります。この二つの病気の違いを理解することは、自分自身や周りの人を理解し、適切に対処するためにとても大切です。
症状の波:うつ病と躁鬱病の決定的な違い
うつ病と躁鬱病の最も大きな違いは、症状に「波」があるかないか、そしてその波がどのように現れるかという点です。うつ病は、一般的に気分が落ち込み、何もやる気が起きなくなる状態が続きます。一方、躁鬱病は、うつ状態と、気分が異常に高揚したり、活動的になったりする「躁(そう)状態」を繰り返すのが特徴です。
うつ病の場合、元気が出ない、眠れない、食欲がない、集中できない、といった症状が特徴的です。これらの症状が長期間続き、日常生活に支障をきたします。 この「落ち込み」がずっと続くのがうつ病の大きな特徴と言えます。
躁鬱病では、うつ状態の時にはうつ病と同じような症状が現れますが、それに加えて、躁状態が現れます。躁状態では、以下のような変化が見られます。
- 気分が異常に高揚し、活動的になる
- 眠らなくても平気になり、元気いっぱいになる
- 普段ならしないような大胆な行動をとる(浪費、無謀な計画など)
- おしゃべりが止まらなくなる
うつ病とは?
うつ病は、脳の機能のバランスが崩れることによって起こると考えられています。単に「怠けている」とか「気の持ちよう」で片付けられるものではなく、れっきとした病気です。うつ病になると、以下のような症状が現れることがあります。
- 気分の落ち込み: 悲しい、空虚な気持ちが続き、何事にも興味や喜びを感じられなくなる。
- 意欲の低下: 何をするにもやる気が出ず、日常生活の基本的な行動(入浴、着替えなど)さえ困難になる。
- 身体的な症状: 頭痛、肩こり、胃の不調、食欲不振や過食、不眠や過眠などが現れることがある。
うつ病の治療には、休養、薬物療法、精神療法(カウンセリングなど)があります。早期に適切な治療を受けることが、回復への近道です。
躁鬱病(双極性障害)とは?
躁鬱病は、「双極性障害」とも呼ばれ、気分が高揚する「躁状態」と、気分が落ち込む「うつ状態」を繰り返す病気です。この二つの状態の落差が非常に大きいのが特徴です。
躁状態では、活動的になりすぎてしまったり、周りが見えなくなってしまったりすることがあります。
| 症状 | 特徴 |
|---|---|
| 気分の高揚 | 気分が非常に明るく、楽観的になり、自分はすごい人間だと感じる。 |
| 活動性の亢進 | じっとしていられなくなり、普段以上に多くの活動をこなそうとする。 |
| 思考の奔逸 | 次々とアイデアが浮かび、話すスピードが速くなる。 |
一方、うつ状態では、うつ病と同じような症状が現れます。この躁状態とうつ状態の切り替わりは、数日から数週間、あるいは数ヶ月単位で起こることがあります。
それぞれの治療法
うつ病と躁鬱病では、治療法にも違いがあります。うつ病の治療では、主に抗うつ薬が使われ、休養や精神療法が中心となります。
対して、躁鬱病では、躁状態とうつ状態の両方に対応できる「気分安定薬」が治療の中心となります。躁状態が強い場合は、それを抑える薬も使われます。また、病気の波を理解し、自分でコントロールしていくための精神療法も重要です。
- うつ病の治療:
- 休養
- 抗うつ薬
- 精神療法
- 躁鬱病の治療:
- 気分安定薬
- 必要に応じて、躁状態を抑える薬や抗うつ薬
- 精神療法
診断の難しさ
うつ病と躁鬱病の診断は、専門医でも難しい場合があります。特に、躁鬱病の場合、うつ状態しか経験していないと、うつ病と診断されることもあります。
躁鬱病では、躁状態の時に「調子が良い」と感じてしまい、治療を中断してしまうケースもあります。そのため、 自分自身の気分の波に気づき、専門家に相談することが非常に重要です。
周りの人のサポート
うつ病や躁鬱病の治療において、周りの人の理解とサポートは欠かせません。病気についての正しい知識を持ち、本人の苦しみに寄り添うことが大切です。
躁鬱病の場合、躁状態での言動を責めるのではなく、病気の一つの症状として理解しようと努めることが大切です。うつ状態の時も、無理強いせず、本人のペースを尊重しましょう。
まとめ
うつ病と躁鬱病は、どちらもつらい病気ですが、その症状の現れ方や治療法に違いがあります。うつ病は「落ち込み」が続く状態、躁鬱病は「落ち込み」と「高揚」の波を繰り返す状態です。これらの違いを理解し、もし自分や周りの人に当てはまる症状があると感じたら、専門医に相談することが大切です。早期の適切な対応が、回復への大きな一歩となります。