「癌」と「ポリープ」という言葉を聞いたことがあるけれど、一体何が違うの？と疑問に思っている人もいるかもしれませんね。実は、癌とポリープの違いを理解することは、体の健康を守る上でとても大切なんです。簡単に言うと、ポリープは「できもの」の一つですが、その中には将来癌になる可能性を秘めたものもあります。だからこそ、癌とポリープの違いを正しく知っておくことが、早期発見や予防につながるのです。
ポリープとは？良性から悪性まで
ポリープとは、体の中の粘膜から発生する「できもの」の総称です。例えば、鼻の中にできる鼻茸（はなたけ）や、腸の中にできる腸ポリープなどがよく知られています。これらのポリープは、その性質によって大きく「良性」と「悪性」に分けられます。良性のポリープは、周りの組織に広がることもなく、転移（他の場所に悪いものが移ること）することもありません。しかし、悪性のポリープ、つまり初期の癌は、周りの組織を侵したり、体に広がっていく（転移する）性質を持っています。
ポリープのできる場所によって、その症状も様々です。
- 大腸ポリープ： 出血、便秘、下痢、腹痛など
- 胃ポリープ： 無症状の場合が多いが、まれに胃の不快感や出血
- 子宮頸管ポリープ： 不正出血、性交時の出血など
ポリープのできやすさには、いくつかの要因が関係しています。
- 遺伝的要因： 家族にポリープができやすい人がいる場合、自分もできやすいことがあります。
- 生活習慣： 食生活の乱れ（特に肉類や脂肪分の多い食事）、運動不足、喫煙、過度の飲酒などが、ポリープ発生のリスクを高めることがあります。
- 年齢： 一般的に、年齢を重ねるにつれてポリープができやすくなる傾向があります。
癌とは？増殖し広がる悪性の塊
一方、癌とは、細胞が異常に増殖してできる「悪性の腫瘍（しゅよう）」のことです。癌細胞は、周りの正常な組織を破壊しながら増え続け、血管やリンパ管に入り込んで体の他の場所に「転移」する性質を持っています。これが、癌が命に関わる病気とされる理由です。ポリープの中にも、この癌へと進行する可能性のあるもの（前癌状態）や、すでに初期の癌であるものも含まれています。
癌とポリープの決定的な違いは、その「悪性度」にあります。
| 項目 | ポリープ（良性） | 癌 |
|---|---|---|
| 増殖 | ゆっくり | 速い |
| 転移 | しない | する可能性がある |
| 治療 | 切除（取り除く）で完治が多い | 進行度により手術、放射線療法、化学療法など |
癌の発生には、様々な要因が複雑に絡み合っています。
- 遺伝的要因： 生まれつき癌になりやすい体質を持っている場合があります。
- 環境要因： タバコの煙、紫外線、食品中の発がん性物質（有害な化学物質）など、外部からの影響で癌が発生することがあります。
- 生活習慣： 不規則な食生活、運動不足、肥満、過度の飲酒、ストレスなどが、癌のリスクを高めると考えられています。
- ウイルスや細菌： 特定のウイルス（例：B型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス）や細菌（例：ヘリコバクター・ピロリ菌）への感染が、癌の原因となることもあります。
ポリープが癌になる可能性
全てのポリープが癌になるわけではありませんが、一部のポリープ、特に腺腫（せんしゅ）と呼ばれる種類のポリープは、時間とともに癌化するリスクがあります。これは、ポリープの細胞が徐々に変化し、悪性化していくプロセスです。例えば、大腸ポリープの約8割は腺腫と言われ、この腺腫が癌になるまでには、数年から十数年かかることが多いとされています。
ポリープが癌になるかどうかを見分けるための重要なポイントは、以下の通りです。
- ポリープの大きさ： 一般的に、ポリープが大きいほど癌化するリスクが高まります。
- ポリープの形状： 表面がギザギザしていたり、いびつな形をしているポリープは注意が必要です。
- ポリープの組織： 顕微鏡で見たときの細胞の形や増え方（異型度）によって、悪性度を判断します。
ポリープの「前癌病変（ぜんがんびょうへん）」とは、まさに癌になる一歩手前の状態を指します。これらのポリープは、放置しておくと癌に進行する可能性が高いため、早期に発見し、適切な処置を行うことが非常に重要です。
- 腺腫（せんしゅ）： 大腸ポリープの多くを占め、癌化しやすい代表的な前癌病変です。
- 異型増殖： 細胞の形が正常から少しずれてきている状態。
早期発見・早期治療の重要性
癌とポリープの違いを理解することは、早期発見・早期治療につながります。ポリープは、自覚症状がないことも多いですが、定期的な検診で発見されることがよくあります。もし、ポリープが癌になる前（前癌病変の段階）で発見できれば、内視鏡で切除するだけで完治する可能性が非常に高くなります。
癌の治療において、早期発見がなぜそれほど重要なのでしょうか？
- 治療の選択肢が増える： 初期の癌であれば、体への負担の少ない手術で取り除けることが多いです。
- 再発・転移のリスクが低い： 早期に発見・治療することで、癌が広がるのを防ぎ、再発や転移の可能性を低くできます。
- 生存率の向上： 発見が遅れるほど、治療が難しくなり、生存率も低下してしまうため、早期発見が何よりも大切です。
まとめ：体のサインに耳を傾けよう
癌とポリープの違いは、その「悪性度」と「進行する可能性」にあります。ポリープはできものの一つですが、中には癌に進行するものもあります。だからこそ、体の変化に気づき、定期的な健康診断を受けることが大切です。もし、気になる症状があれば、迷わず医師に相談しましょう。早期に適切な対応をすることで、健康な体を長く保つことができます。