血漿 と 血清 の 違い:知っておきたい血液の基本

血漿(けっしょう)と血清(けっせい)、どちらも血液から作られるものですが、その違いをご存知でしょうか?実は、この二つは「あるもの」が含まれているかいないかで大きく異なります。今回は、この 血漿 と 血清 の 違い を分かりやすく解説し、それぞれの重要性についてもお話ししていきます。

血液を「固める」か「固めない」かが、血漿と血清の分かれ道

血漿と血清の最も大きな違いは、血液が固まる過程で働く「凝固因子(ぎょうこいんし)」が含まれているかどうかです。血漿は、血液から血球(赤血球、白血球、血小板)を取り除いた、液体成分そのものを指します。この血漿には、体に必要な栄養素やタンパク質、そして血液を固めるための凝固因子も含まれています。

一方、血清は、血液を試験管などで固めた後に、その固まり(血餅:けっぺい)を取り除いた残りの液体です。血液が固まる過程で、凝固因子は消費されたり、血餅に吸着されたりするため、血清にはほとんど含まれていません。つまり、 血漿 と 血清 の 違い は、血液を採取した後に凝固因子が残っているかどうかなのです。

この違いを理解することは、血液検査の結果を正しく解釈するためにも非常に重要です。例えば、病気の診断や治療効果の判定に用いられる多くの検査項目は、血清を使って行われます。

  • 血漿に含まれるもの:
    • 水分(約90%)
    • タンパク質(アルブミン、グロブリン、フィブリノーゲンなど)
    • 栄養素(グルコース、アミノ酸、脂質など)
    • ホルモン
    • 電解質
    • 凝固因子
  • 血清に含まれるもの:
    • 血漿から凝固因子を除いたもの

採血後の処理で決まる!血漿と血清の分離方法

血漿と血清を分ける方法は、採血した後の処理にあります。血漿を得るためには、血液を採取する際に「抗凝固剤(こうぎょうこざい)」という、血液を固まりにくくする薬が入った試験管に採血します。こうすることで、血液中の凝固因子が働かずに、血液は液体のまま保たれます。その後、遠心分離機にかけると、血球が下に沈み、上澄み液として血漿が得られます。

対して、血清を得る場合は、抗凝固剤の入っていない普通の試験管に採血します。採血後、しばらく(通常は15分~1時間程度)放置しておくと、血液が自然に固まります。そして、固まった血餅を遠心分離機で取り除くと、残った上澄み液が血清となります。

  1. 血漿の分離:
    1. 抗凝固剤入りの試験管に採血
    2. 遠心分離機で血球と分離
    3. 上澄み液が血漿
  2. 血清の分離:
    1. 抗凝固剤なしの試験管に採血
    2. 自然に血液を凝固させる
    3. 血餅を遠心分離機で除去
    4. 残った上澄み液が血清

それぞれが活躍する場:血漿と血清の利用方法

血漿と血清は、それぞれ異なる目的で利用されます。血漿は、血液製剤として、出血多量で血漿成分が不足している患者さんへの輸血や、免疫グロブリン製剤、アルブミン製剤など、様々な医薬品の原料として使われます。特に、血漿に含まれる凝固因子は、血友病などの出血性疾患の治療に不可欠です。

一方、血清は、各種の血液検査で広く用いられます。例えば、血糖値、コレステロール値、肝機能や腎機能を示す酵素値、ホルモン値、感染症の抗体などを調べる際に、血清が使われます。これは、血液を固める過程で一部の物質が失われたり変化したりするものの、多くの検査項目は血清でも正確に測定できるためです。

血漿と血清の主な利用方法
項目 血漿 血清
輸血・製剤 ×
血液検査 △(一部)

凝固因子が鍵!血漿を構成するタンパク質の役割

血漿の約7%はタンパク質で占められており、その中でも特に重要なのが「凝固因子」です。凝固因子は、血管が傷ついて出血した際に、血液を素早く固めて止血する(止血作用)のに不可欠な役割を果たします。これらの因子は、複雑な連鎖反応を起こして、最終的にフィブリンという丈夫な網目を作り、血球を絡め取って血餅を形成します。

血漿には、この凝固因子の他にも、体に必要な様々なタンパク質が含まれています。例えば、「アルブミン」は体液のバランスを保ったり、物質を運搬したりする役割があります。「グロブリン」には、免疫に関わる抗体などが含まれており、体を病原体から守る働きをしています。

血漿は、これらのタンパク質が溶け込んでいる「生きた」液体であり、生命維持に欠かせない多くの機能を担っています。

血液検査で「血清」がよく使われる理由

前述の通り、血液検査の多くでは血清が用いられます。その主な理由は、血液を凝固させる過程で、検査に影響を与える可能性のある物質(特に凝固因子)が除去されるからです。これにより、より安定した状態で、目的とする物質の濃度を正確に測定しやすくなります。

例えば、血糖値やコレステロール値などの代謝系検査、肝臓や腎臓の働きを示す酵素の測定、ホルモン検査など、日常的に行われる多くの血液検査は、血清を用いて行われています。これは、これらの検査項目が血清でも正確に測定でき、かつ検体の取り扱いが比較的容易であるためです。

ただし、全ての検査が血清で行われるわけではありません。一部の検査、例えば凝固時間を測定する検査などでは、凝固因子が残っている血漿が用いられます。

凝固因子が失われた血清の意外な一面

血清は、凝固因子が失われた液体ですが、それでも多くの情報を含んでいます。例えば、病気にかかると、体内で様々な物質の濃度が変化します。血清中のこれらの物質の濃度を測定することで、病気の診断や進行状況の把握が可能になります。

また、感染症にかかった際に産生される「抗体」も血清中に存在します。この抗体を検出することで、過去にかかった病気や、ワクチン接種の効果などを知ることができます。このように、血清は「過去の記録」を反映しているとも言えるでしょう。

  • 血清中の変化からわかること:
    • 病気の有無や種類
    • 病気の進行度
    • 治療の効果
    • 栄養状態

結論:血漿と血清、どちらも大切!

血漿と血清は、血液から作られるという点では共通していますが、「凝固因子」の有無によって明確に区別されます。血漿は、凝固因子を含んだ生きた血液の液体成分であり、輸血や医薬品の原料として、また生命維持に不可欠な役割を担っています。一方、血清は、凝固因子が除かれた液体ですが、各種血液検査で病気の診断や健康状態の把握に不可欠な情報を提供してくれます。

このように、 血漿 と 血清 の 違い を理解することは、私たちの体や医療についてより深く知るための第一歩となります。どちらも私たちの健康にとってかけがえのない存在なのです。

この記事を通して、血漿と血清の違いについて、ご理解いただけたでしょうか?どちらも私たちの体にとって、そして医療の現場で、非常に重要な役割を果たしています。これからも、ご自身の健康と向き合う上で、これらの知識がお役に立てれば幸いです。

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