知っておきたい!予防給付と総合事業の違いをわかりやすく解説

介護保険制度には、高齢者の自立した生活を支えるための様々なサービスがあります。「予防給付」と「総合事業」、どちらも似たような言葉ですが、実はその対象者や目的、提供されるサービスに違いがあります。この記事では、「予防給付と総合事業の違い」を、皆さんが理解しやすいように、わかりやすく解説していきます。

対象者と目的で見る、予防給付と総合事業の根本的な違い

まず、一番大きな違いは「誰が、どんな目的で」サービスを利用するのか、という点です。予防給付は、要介護認定を受けた方々が、病気や怪我の悪化を防ぎ、これ以上状態が重くならないようにするためのサービスが中心です。例えば、リハビリテーションや、介護予防のための体操などがこれにあたります。 このサービスは、将来的な介護負担の軽減や、高齢者のQOL(生活の質)の維持・向上にとって非常に重要です。

一方、総合事業は、要支援1・2と認定された方、または特定高齢者(基本チェックリストで一定以上の機能低下が認められた方)が対象です。こちらは、住み慣れた地域でいつまでも自分らしく暮らせるように、地域全体で高齢者を支えようという考え方に基づいています。サービスの内容も、見守りや配食、ちょっとした困りごとを解決するお手伝いなど、より地域に根ざしたものが中心となります。

つまり、

  • 予防給付: 要介護認定を受けた方の「悪化予防」が主な目的
  • 総合事業: 要支援認定者や特定高齢者の「地域での自立した生活支援」が主な目的

という違いがあるのです。

提供されるサービス内容の違い

「予防給付」と「総合事業」では、具体的にどのようなサービスが受けられるのでしょうか。ここでも、それぞれの目的を反映した違いが見られます。

予防給付で受けられるサービスは、例えば以下のようなものがあります。

  • リハビリテーション: 理学療法士や作業療法士による身体機能の回復・維持
  • 介護予防通所サービス: デイサービスのような施設で、運動やレクリエーションを通して心身機能の維持・向上を目指す
  • 訪問看護: 看護師が自宅を訪問し、医療的なケアや健康管理を行う

一方、総合事業で提供されるサービスは、より多様で地域の実情に合わせて柔軟に提供されます。例えば、

  1. 通所型サービス: 地域住民が運営するサロンなどで、体操や交流を行う(「通いの場」など)
  2. 訪問型サービス: ボランティアなどが自宅を訪問し、話し相手になったり、簡単な家事を手伝ったりする(「生活支援」など)
  3. その他のサービス: 地域包括支援センターが中心となり、住民同士の助け合いや、地域のイベントへの参加を促す

このように、予防給付は専門職による医療・介護的なアプローチが中心であるのに対し、総合事業は地域住民やNPOなどが主体となり、より身近で生活に密着した支援が中心となります。

利用するまでの流れの違い

サービスを受けるためには、まず「どうすれば利用できるのか」という手続きの流れも知っておきましょう。

予防給付を利用するには、まず市区町村に「要介護認定」の申請が必要です。申請後、調査員による聞き取りや、主治医の意見書をもとに、審査が行われ、要支援1~5、または要介護1~5のいずれかに認定されます。認定区分によって、利用できるサービスの量や内容が決まります。

総合事業の対象となる方(要支援1・2、または特定高齢者)も、原則として市区町村への申請が必要です。ただし、予防給付のような詳細な認定調査ではなく、「基本チェックリスト」という簡単な質問票に答えることで、利用できるかどうかが判断される場合が多いです。

まとめると、

サービス 申請・認定の流れ
予防給付 要介護認定申請 → 調査・審査 → 認定
総合事業 申請 → 基本チェックリスト等 → 利用判断

という流れの違いがあります。

財源と事業の実施主体

これらのサービスが、どのように成り立っているのか、財源や誰が事業を運営しているのかという点も、違いを理解する上で重要です。

予防給付は、基本的に「介護保険料」と「公費(国、都道府県、市区町村の税金)」で賄われています。そして、事業の実施主体は、市区町村が中心となりますが、その事業を実際に運営するのは、指定を受けた介護サービス事業者です。

一方、総合事業の財源は、介護保険料に加え、市区町村の一般財源(税金)や、国からの補助金などが使われます。こちらの事業の実施主体は、市区町村がより主体的に関わることが多く、地域住民やNPO、社会福祉法人などが、地域の実情に合わせてサービスを提供しています。

サービス単価と利用者負担

最後に、実際にサービスを受けた時の「お金」に関する違いです。

予防給付で提供されるサービスは、介護保険法で定められた基準に基づいて単価が設定されています。利用者負担は、原則としてサービス費用の1割(所得によっては2割または3割)ですが、利用できるサービス量には上限があります。

総合事業で提供されるサービスは、市区町村が事業の実施主体となり、地域の実情に合わせて単価や利用者負担額が設定されるため、地域によって違いがある場合があります。利用者負担は、予防給付と同様に1割が基本ですが、サービス内容によっては、より安価に利用できることもあります。

このように、サービス単価や利用者負担についても、制度設計の違いから差が見られることがあります。

「予防給付」と「総合事業」、それぞれの違いについてご理解いただけたでしょうか。どちらのサービスも、高齢者の皆さんが安心して、そして自分らしく地域で生活を続けるために、とても大切な役割を担っています。ご自身の状況や、周りの方の状況に合わせて、利用できるサービスを上手に活用していきましょう。

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