「請負」と「派遣」、どちらも会社が社員を送り出す働き方ですが、実はその仕組みや法律上の扱いは大きく異なります。 請負 と 派遣 の 違い を理解することは、あなたが働く上で、または会社を経営する上で、とても大切になってきます。今回は、この二つの違いを分かりやすく、そして詳しく解説していきますね!
仕事の「完成」を約束する請負 vs. 「人」を貸し出す派遣
まず、一番大きな違いは、請負は「仕事の完成」を約束する契約であるのに対し、派遣は「人材」を一定期間、企業に提供する契約であるという点です。請負では、請負業者は依頼された仕事全体を責任を持って完成させ、その成果物に対して報酬が支払われます。たとえるなら、お料理のレシピ通りに、美味しい料理を完成させて届けるのが請負のようなイメージです。仕事の進め方や指示は、請負業者自身が行います。
一方、派遣では、派遣元から派遣先に「人」が派遣されます。派遣されたスタッフは、派遣先の指揮命令を受けて働きます。これは、料理教室で先生が「こうやって材料を切って、こうやって炒めてね」と、作り方を指示しながら一緒に料理をするようなイメージに近いかもしれません。 仕事の質や進め方における責任の所在が、請負と派遣では全く違う のです。
請負では、請負業者が独立して業務を遂行する権利と義務を持ちます。依頼主は、請負業者の業務遂行方法に口出しすることはできません。しかし、派遣の場合は、派遣先の指揮命令下で働くため、指示を受けて業務を行うことになります。この指揮命令権の有無が、両者の大きな違いと言えるでしょう。
- 請負:仕事の完成に責任を持つ
- 派遣:人を派遣し、指揮命令を受ける
指揮命令系統の違い
請負と派遣の最も分かりやすい違いの一つは、誰の指示を受けて仕事をするか、という点です。請負契約の場合、仕事の進め方や指示は、請負業者が自社内で決定します。依頼主は、成果物に対してのみ口出しができますが、業務のプロセスには基本的に干渉しません。例えば、建築の請負であれば、建築会社が自社の職人を使い、自社のやり方で建物を完成させます。依頼主は、完成した建物についてのみ、契約通りの品質であるかなどを確認します。
一方、派遣契約では、派遣されたスタッフは、派遣先の担当者の指揮命令を受けて業務を行います。派遣先が、どのような業務を、いつまでに、どのような方法で行うかなどを指示します。これは、派遣会社と派遣スタッフの間には雇用関係がありますが、実際に働いている現場では、派遣先の指示に従うという形になります。 この指揮命令系統の違いは、業務の管理や責任範囲を理解する上で非常に重要 です。
例えるなら、請負は「完成品」を購入するイメージ。派遣は「一時的に人を借りて、指示しながら働いてもらう」イメージです。ですから、業務の進め方で困ったことがあっても、請負の場合は請負業者に相談しますが、派遣の場合は派遣先の担当者に指示を仰ぐことになります。
| 請負 | 請負業者が業務遂行方法を決定 |
|---|---|
| 派遣 | 派遣先の指揮命令を受ける |
責任範囲の違い
請負契約では、請負業者は依頼された仕事全体を完成させる責任を負います。もし、契約通りに仕事が完成しなかった場合、請負業者はその責任を追及されることになります。これは、請負業者が自らの裁量で業務を進めているため、その結果に対する責任も請け負うからです。 仕事の品質や納期、そしてそれに伴う損害についても、請負業者の責任範囲 となります。
対して、派遣契約では、派遣されたスタッフが業務中にミスをしたり、損害を与えてしまったりした場合の責任は、基本的には派遣先と派遣元が折半する、あるいは派遣元が責任を負うケースが多いです。ただし、派遣スタッフ自身の故意や重大な過失による場合は、責任の所在が複雑になることもあります。しかし、請負のように「仕事の完成」そのものに対する責任を直接負うわけではありません。
ちょっと難しいかもしれませんが、請負は「物」や「サービス」の完成度に対して責任があり、派遣は「人材」の提供や、それに伴う安全配慮などに責任がある、と考えると理解しやすいかもしれません。
- 請負:仕事の完成に対する包括的な責任
- 派遣:派遣スタッフの労働に関する責任(派遣元・派遣先で分担)
契約形態の違い
請負と派遣の契約形態も、その本質を理解する上で重要です。請負契約は、請負業者と依頼主の間で結ばれる、特定の業務を完成させることを目的とした契約です。これは、成果物に対する契約と言えます。
一方、派遣契約は、派遣元(派遣会社)と派遣先(人材を受け入れる会社)の間で結ばれる、一定期間、労働者を派遣することに関する契約です。そして、派遣された労働者と派遣元との間には、雇用契約が結ばれています。つまり、 請負は「業務委託契約」のようなもの、派遣は「人材派遣契約」+「雇用契約」 という構造になっています。
この契約形態の違いが、それぞれの責任範囲や指揮命令系統のあり方に大きく影響しています。
- 請負:業務委託契約(成果物に対する契約)
- 派遣:人材派遣契約(労働力提供契約)+ 雇用契約
報酬の支払われ方の違い
請負と派遣では、報酬の支払われ方にも違いがあります。請負契約では、原則として「仕事の完成」に対して報酬が支払われます。これは、請負業者が成果を出したことに対する対価です。契約内容によっては、成果の一部が完成した段階で一部支払いがある場合もありますが、基本的には成果物全体が完成して、契約内容を満たしていることが支払いの前提となります。
派遣契約では、派遣されたスタッフが実際に働いた時間や日数に基づいて、派遣元に報酬が支払われます。そして、派遣元は、派遣スタッフに給与を支払います。つまり、 派遣の報酬は、労働力の提供に対する対価 ということになります。派遣先は、派遣会社に「労働者派遣料」という形で支払いをします。
この違いは、どちらの契約形態が、どのようなビジネスモデルに向いているかという点にも関わってきます。
- 請負:成果物に対する報酬
- 派遣:労働時間・日数に応じた報酬
事業所・事業の独立性の違い
請負契約における請負業者は、依頼主とは独立した事業主体として業務を行います。請負業者は、自社の事業所を持ち、自社の従業員を指揮監督し、自己の責任において業務を遂行します。依頼主は、請負業者の事業運営に直接関与することはありません。 請負事業者は、独立した事業者としての立場を保ちます 。
一方、派遣契約では、派遣されたスタッフは派遣先の事業所で、派遣先の指揮命令のもとで働きます。派遣先は、派遣スタッフの業務遂行場所を提供し、指示を出しますが、派遣スタッフを直接雇用しているわけではありません。派遣元が、派遣スタッフの雇用主となります。この「事業の独立性」という観点でも、両者には明確な違いがあります。
請負は、請負業者が「自分たちの事業」として仕事を進めるのに対し、派遣は、派遣先が「自分たちの事業」を進めるために、外部から人材を借りてくる、というイメージです。
- 請負:請負業者が独立した事業として業務を遂行
- 派遣:派遣先が自社事業を進めるため、人材を借りる
請負と派遣の違いについて、基本的なポイントを解説しました。どちらの働き方にもメリット・デメリットがあり、状況に応じて適切な方を選ぶことが重要です。この情報が、あなたの理解を深める一助となれば幸いです。