「確定申告」と「年末調整」、名前は似ているけれど、一体何が違うの?と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。実は、この二つはどちらも所得税に関わる手続きですが、目的や対象となる人が異なります。今回は、そんな「確定申告と年末調整の違い」を、分かりやすく、そしてなるべく専門用語を使わずに解説していきます。この違いを理解することで、もしかしたら税金が戻ってくるかもしれませんよ!
なぜ「確定申告」と「年末調整」があるの?その役割の違い
まず、なぜ「確定申告」と「年末調整」という二つの制度があるのか、その根本的な違いから見ていきましょう。簡単に言うと、年末調整は会社員など、給与所得者にとっての「年間の税金計算を会社が代わりにやってくれる便利な仕組み」です。一方、確定申告は、年末調整でカバーしきれない部分や、会社員以外の人も対象となる、自分で年間の税金を計算して国に申告する手続きです。 この二つの違いを理解することが、税金関係で損をしないための第一歩です。
- 年末調整の目的:
- 給与所得者の1年間の所得税額を確定させる。
- 源泉徴収された税金と、本来納めるべき税金の差額を精算する。
- 多く払いすぎた税金があれば、還付(返金)される。
- 確定申告の目的:
- 1年間のすべての所得を合計し、所得税額を計算・申告する。
- 年末調整で申告できなかった控除(税金が安くなる制度)などを適用する。
- 納めるべき税額が分かったら、自分で税務署に納める。
- 場合によっては、払いすぎた税金が還付される。
年末調整は会社員のお手伝い!
年末調整は、主に会社員やパート・アルバイトなど、給与を受け取っている人が対象です。会社は、1年間の給与から概算の税金(源泉徴収)を毎月天引きしていますが、年末調整を行うことで、その年の本当の税額を計算し直します。このとき、扶養家族の有無や生命保険料、地震保険料などを申告することで、所得税から差し引かれる「所得控除」を受けることができます。もし、毎月源泉徴収されていた税金が、年末調整で計算された本来の税額よりも多かった場合は、その差額が還付されるという仕組みです。
具体的には、以下のような流れで行われます。
- 11月~12月頃に、会社から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」などの書類を受け取る。
- 家族構成や、生命保険料、地震保険料、住宅ローンの年末残高などの情報を記入して会社に提出する。
- 会社が、提出された書類をもとに、1年間の給与と所得控除額から所得税額を計算する。
- 計算された所得税額と、毎月源泉徴収されていた税金を比較し、過不足を精算する。
- 過払いがあれば、年末または年明けの給与で精算される(還付)。
このように、年末調整は会社員であれば、ほとんどの手続きを会社が行ってくれるため、自分で税額を計算する必要がありません。 しかし、年末調整だけでは全ての税金計算を終えられない場合もあるのです。
確定申告は「自分で税金を申告する」手続き
確定申告は、年末調整とは異なり、原則として自分で税務署に所得と税金を申告する手続きです。給与所得者でも、年末調整では申告しきれなかった控除がある場合や、副業で収入があった場合、年間の給与収入が2000万円を超える場合などは、確定申告が必要になります。
確定申告が必要なケースの例をいくつか見てみましょう。
| ケース | 説明 |
|---|---|
| 副業収入がある | アルバイトやフリーランスなどで得た収入がある場合。 |
| 投資で利益が出た | 株式の配当金や譲渡益など。 |
| 医療費控除を受けたい | 1年間の医療費が一定額を超えた場合。 |
| 住宅ローン控除(初年度) | 新築や購入した年の住宅ローン控除。 |
| 年収2000万円超 | 給与所得者でも、年間の給与収入が2000万円を超える場合。 |
確定申告では、1月1日から12月31日までの1年間の所得を計算し、それにかかる税金を計算します。その計算結果を、翌年の2月16日から3月15日までの間に税務署に提出します。もし、源泉徴収などで納めすぎた税金があれば、この申告によって還付を受けることができます。
「年末調整だけ」で終わる人、終わらない人
さて、ここで「年末調整だけ」で手続きが完了する人と、確定申告が必要になる人の違いを明確にしましょう。年末調整は、あくまで給与所得者の所得税額の最終的な精算手続きです。そのため、会社から毎月給料をもらっていて、他に特別な収入や控除がない場合は、年末調整だけで納税が完了することがほとんどです。
しかし、以下のような場合は、年末調整だけでは不十分で、確定申告が必要になります。
- 給与以外の所得がある: 例えば、フリーランスとしての収入、アパート経営からの家賃収入、FXや株式投資での利益など、給与所得以外の収入がある場合。
- 年末調整で申告できなかった控除がある: 例えば、年の途中で扶養家族が増減した、年の途中で退職して再就職した、年間の医療費が多額だった、ふるさと納税を多く行った(ワンストップ特例制度を利用しない場合)など。
- 災害や盗難にあった: これにより損失が生じた場合、所得から控除できることがあります。
これらのケースに当てはまる方は、年末調整が終わった後も、確定申告を行う必要があることを覚えておきましょう。
年末調整の「種類」と確定申告との関係
年末調整には、いくつかの「種類」というわけではありませんが、申告する内容によって、最終的な税額が変わってきます。ここでいう「種類」とは、申告できる控除の種類を指します。
会社員が年末調整で主に申告できる控除には、以下のようなものがあります。
- 基礎控除: 納税者本人に適用される控除。
- 配偶者控除・扶養控除: 配偶者や扶養している親族がいる場合に適用される控除。
- 社会保険料控除: 健康保険料、厚生年金保険料などを支払った場合に適用される控除。
- 生命保険料控除: 生命保険、介護医療保険、個人年金保険の保険料を支払った場合に適用される控除。
- 地震保険料控除: 地震保険の保険料を支払った場合に適用される控除。
- 住宅ローン控除(2年目以降): 初年度に確定申告をした後、2年目以降は年末調整で手続きできる。
これらの控除を申告することで、本来納めるべき所得税額が軽減されます。しかし、例えば「iDeCo(個人型確定拠出年金)」の掛金なども所得控除の対象になりますが、年末調整の書類だけでは申告しきれない場合もあり、そのような場合は確定申告で対応することになります。
年末調整で、これらの控除を正しく申告できているかどうかが、確定申告が必要かどうかの判断材料にもなります。
「還付」はどっちで受けられる?
「還付」とは、本来納めるべき税金よりも多く税金を納めていた場合に、その差額が返ってくることです。年末調整と確定申告、どちらでも還付を受けることができます。
年末調整による還付:
これは、毎月給与から天引きされていた源泉徴収税額が、年末調整で計算された年間の所得税額よりも多かった場合に発生します。多くの会社員は、年末調整でこの還付を受けることになります。還付金は、通常、年末の給与や年明けの給与と一緒に振り込まれます。
確定申告による還付:
確定申告で還付を受けられるのは、主に以下のようなケースです。
- 年末調整で申告しなかった控除(例:医療費控除、ふるさと納税など)を申告した場合。
- 年の途中で退職し、再就職せずにそのまま年を越した場合。
- 年の途中で会社を辞め、再就職したが、年末調整を受けていない場合。
確定申告で還付を受ける場合、税務署の審査を経て、申告から数週間~1ヶ月程度で指定した銀行口座に振り込まれます。
「申告時期」も全然違う!
年末調整と確定申告では、手続きを行う時期が全く異なります。この時期の違いも、両者の大きな違いの一つと言えます。
年末調整の時期:
年末調整は、その年の12月末までに完了させる手続きです。一般的には、11月頃から会社への書類提出が始まり、12月の給与計算の際に、その年の所得税額の確定と精算が行われます。
確定申告の時期:
確定申告は、その年の1月1日から12月31日までの所得について、翌年の 2月16日から3月15日まで の間に申告を行います。この期間を過ぎてしまうと、原則として申告ができなくなり、還付を受ける機会を逃してしまう可能性があります。ただし、還付申告については、この期限後でも5年間は申告することができます。
この申告時期の違いも、どちらの手続きが必要かを見分けるヒントになります。
「対象者」にも違いがある!
年末調整と確定申告の最も大きな違いの一つは、その「対象者」にあります。どちらの手続きが必要になるかは、ご自身の働き方や収入の状況によって決まります。
年末調整の対象者:
主に、会社などから給与を受け取っている「給与所得者」です。正社員はもちろん、パートやアルバイトの方も、一定の条件を満たせば年末調整の対象となります。
確定申告の対象者:
確定申告は、給与所得者だけでなく、以下のような様々な所得がある人が対象となります。
- 個人事業主・フリーランス: 事業で得た収入(事業所得)がある方。
- 不動産所得がある方: アパートやマンションの賃貸収入など。
- 一時所得がある方: 懸賞の賞金、競馬の払戻金など(一定額を超える場合)。
- 退職所得がある方: 退職金を受け取った方(源泉徴収で済んでいない場合)。
- 年金受給者: 公的年金等以外の雑所得がある方など。
- 上記以外にも、給与所得者であっても、一定の要件を満たす場合。
このように、確定申告はより幅広い層の人々が対象となる、より包括的な税金の申告手続きと言えます。
まとめ:あなたの状況で判断しよう!
「確定申告と年末調整の違い」について、ご理解いただけたでしょうか。簡単にまとめると、年末調整は会社員向けの「年間の税金精算」、確定申告は「自分で年間の税金を計算して申告する手続き」です。ほとんどの会社員は年末調整だけで済みますが、副業があったり、特別な控除を受けたい場合は確定申告が必要になります。ご自身の収入や控除の状況を把握し、どちらの手続きが必要か、あるいは両方必要かを見極めることが大切です。もし不安な場合は、税務署や税理士に相談してみるのも良いでしょう。