OSHMS と OHSAS の 違い:安全管理の進化を理解しよう!

「OSHMS と OHSAS の違い」について、一見難しそうに感じるかもしれませんが、実は私たちの働く環境の安全を守るための大切な仕組みの話なんです。簡単に言うと、OHSAS は昔からある「指針」のようなもので、OSHMS はそれをさらに進化させた、より新しい「国際規格」なのです。この二つの違いを知ることで、より安全で健康的な職場づくりにどう貢献できるかが分かります。

OHSAS 18001 から ISO 45001 へ:名前が変わっただけじゃない!

OHSAS 18001 というのは、以前から多くの企業が「労働安全衛生マネジメントシステム」の基準として使っていたものです。これは、会社が従業員の安全や健康を守るためのルールや仕組みをしっかり作って、それを実行していくための「ガイドライン」のようなものでした。つまり、企業が「こういうことに気をつけましょうね」と自主的に取り組むのを助けてくれるものでした。

しかし、時代が進むにつれて、もっと世界中で共通して使える、よりしっかりした国際的な「規格」が必要になってきました。そこで登場したのが、ISO 45001 です。この ISO 45001 こそが、現在の OSHMS の代表格と言えるものです。OSHMS という言葉は、より広い意味で「労働安全衛生マネジメントシステム」全般を指すこともありますが、ここでは ISO 45001 を OSHMS として説明していきますね。

OSHMS(ISO 45001)への移行は、単に名前が変わっただけでなく、より厳格で、より包括的な安全管理を目指すための大きなステップアップなのです。

  • OHSAS 18001: 以前の指針、自主的な取り組みを促進
  • OSHMS (ISO 45001): 現在の国際規格、より強制力があり、グローバルな視点

ISO 45001 が OHSAS 18001 より優れている点

では、具体的に OHSMS (ISO 45001) が OHSAS 18001 からどう進化したのか見ていきましょう。一番大きな違いは、国際標準化機構(ISO)が発行する規格になったことです。これにより、世界中の国や企業で同じ基準で安全衛生管理を評価できるようになりました。これは、グローバルに事業を展開する企業にとっては、とても大きなメリットです。

さらに、ISO 45001 では、単に事故が起こらないようにするだけでなく、より積極的に「労働者の健康」にも焦点を当てています。例えば、メンタルヘルスケアの重要性がより強調されていたり、ハラスメントの防止なども含まれています。これは、働く人が心身ともに健康でいられることが、安全な職場づくりに不可欠だという考え方が強まったからです。

項目 OHSAS 18001 OSHMS (ISO 45001)
発行元 OHSAS Project Group ISO (国際標準化機構)
対象 労働安全衛生 労働安全衛生、健康

このように、OSHMS (ISO 45001) は、より包括的で、より最新の安全衛生管理の考え方を取り入れた規格と言えます。

「リスクアセスメント」へのアプローチの違い

リスクアセスメントというのは、仕事をする上で「どんな危険があるか」「その危険が起きたらどうなるか」「それをどう防ぐか」を調べることです。OHSAS 18001 でもリスクアセスメントは重要でしたが、ISO 45001 では、その考え方がより深まりました。

ISO 45001 では、単に「事故が起こる確率」だけでなく、「危険が健康に与える影響」もより詳しく評価するようになりました。例えば、単に物が落ちてくる危険だけでなく、長時間同じ姿勢で作業することによる体の負担や、職場の人間関係によるストレスなども含めて、広範なリスクを評価することが求められます。

これは、企業がより proactively(先回りして)リスクを発見し、対策を打つことを促すためのものです。具体的には、以下のような点が強化されています。

  1. 潜在的な危険源の特定
  2. リスクの大きさの評価
  3. リスク低減措置の実施
  4. 継続的な見直し

つまり、OSHMS (ISO 45001) では、より多角的で、より先進的なリスクアセスメントが重視されているのです。

「トップマネジメント」の役割の変化

トップマネジメントというのは、会社の経営層のことです。OHSAS 18001 の頃から経営層の関与は重要でしたが、ISO 45001 では、その役割がさらに強調されています。

ISO 45001 では、経営層が「労働安全衛生」を単なるコストではなく、事業戦略の重要な一部として位置づけることが求められています。つまり、安全衛生管理を会社の成長や競争力強化にどうつなげていくのか、という視点が不可欠になったのです。経営層が積極的にリーダーシップを発揮し、安全衛生文化を組織全体に浸透させることが、より強く推奨されています。

具体的には、以下のような行動が期待されます。

  • 安全衛生方針の策定と周知
  • 安全衛生目標の設定と進捗管理
  • 安全衛生に関する資源の提供
  • 安全衛生パフォーマンスの評価

これは、安全衛生管理が現場の担当者だけのものではなく、会社全体で取り組むべき課題であることを明確にしたものです。

「従業員の参加と協議」の重要性

従業員が安全衛生管理にどう関わるか、という点も OSHMS (ISO 45001) で大きく変わりました。OHSAS 18001 の時も従業員の意見を聞くことはありましたが、ISO 45001 では、より積極的に「参加」と「協議」を促すことが求められています。

「参加」とは、従業員が安全衛生の改善活動に自ら参加することです。「協議」とは、安全衛生に関する決定を行う際に、従業員やその代表者と十分に話し合うことです。これは、現場で働く従業員こそが、危険を一番よく知っているという考えに基づいています。彼らの声を聞き、一緒に改善策を考えることで、より実効性のある安全対策を立てることができるからです。

具体的には、以下のような機会が設けられるべきです。

  1. リスクアセスメントへの参加
  2. 安全衛生教育の実施
  3. 事故やヒヤリハット報告への対応
  4. 改善提案制度の活用

OSHMS (ISO 45001) では、従業員一人ひとりが安全衛生の担い手であるという意識を高めることが、非常に重要視されています。

「パフォーマンスの向上」への焦点を当てる

OHSAS 18001 もパフォーマンスの向上を目指していましたが、ISO 45001 では、その「パフォーマンス」という言葉の捉え方がより広がり、より測定可能なものになりました。

単に事故件数が減ったかどうかだけでなく、従業員の健康状態がどう変化したか、安全衛生に関する意識がどれだけ向上したか、といったことも含めて、総合的な「パフォーマンス」を評価しようとしています。そして、その評価に基づいて、さらに改善を続けていくことが求められています。

これは、PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)をより効果的に回すための仕組みと言えます。PDCAサイクルとは、計画を立て(Plan)、実行し(Do)、評価し(Check)、改善する(Act)という一連の流れです。ISO 45001 は、このサイクルを継続的に回すことで、安全衛生管理のレベルを常に高めていくことを目指しています。

パフォーマンス向上のために、企業は以下のような取り組みを行うことが推奨されます。

  • 定期的な内部監査の実施
  • マネジメントレビューの実施
  • 外部審査の活用
  • ベンチマーキング(他社との比較)

OSHMS (ISO 45001) は、安全衛生管理を「やった」で終わらせず、「さらに良くしていく」ことを強く意識した規格なのです。

「継続的改善」の仕組み

「継続的改善」というのは、一度システムを作って終わりではなく、常に「もっと良くできないか」と考え、改善を続けていくことです。OHSAS 18001 でもこの考え方はありましたが、ISO 45001 では、この継続的改善の仕組みがより具体的かつ、組織全体に浸透するように設計されています。

ISO 45001 では、組織の状況や外部環境の変化に合わせて、安全衛生マネジメントシステムを常に最新の状態に保つことが求められます。例えば、新しい技術が登場したり、法律が変わったり、あるいは従業員の働き方が変化したりした場合、それらに対応できるようにシステムを見直す必要があります。これは、安全衛生管理が「生き物」のように、常に変化に対応していく必要があるという考え方です。

継続的改善を促すための具体的な活動には、以下のようなものがあります。

  1. 事故やヒヤリハットの原因究明と対策
  2. 従業員からのフィードバックの活用
  3. 最新の安全衛生情報へのアクセス
  4. 教育訓練の効果測定と見直し

OSHMS (ISO 45001) は、一度取得すれば安泰というものではなく、常に進化し続けることを前提とした規格なのです。

まとめ

「OSHMS と OHSAS の違い」について見てきましたが、いかがでしたでしょうか。OHSAS 18001 から OSHMS (ISO 45001) への移行は、単なる名称変更ではなく、よりグローバルで、より包括的で、より従業員の健康まで配慮した、次世代の安全衛生管理システムへの進化と言えます。この進化を理解し、自社の安全衛生管理に活かしていくことが、より安全で、より健康的な職場づくりにつながるはずです。

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