「契約書」と「覚書」、どちらも「約束」を交わすときに使われる言葉ですが、一体何が違うのでしょうか? 実は、 契約書 と 覚書 の 違い は、その効力や内容の重要度にあるんです。
法的な拘束力の大きな違い
まず、一番大事なのは「法的な効力」です。契約書は、法律で決められた「契約」の要件を満たしている場合が多く、守られなかった場合は裁判を起こして損害賠償を請求したり、契約を解除したりといった、法的な手段をとることができます。 この法的な拘束力こそが、契約書と覚書の最も大きな違いと言えるでしょう。
- 契約書: 守られないと困る、しっかりとした約束
- 覚書: 「こんなことを決めました」という確認
例えば、家を借りるときに結ぶ「賃貸借契約書」は、契約書です。家賃を払わなかったり、勝手に部屋を改造したりすると、大家さんから訴えられる可能性がありますよね。一方、会議で決まったことを「議事録」としてまとめたものは、覚書に近いイメージです。
では、具体的にどんな違いがあるのか、いくつかのポイントに分けて見ていきましょう。
「契約書」は、より重い約束
契約書は、お互いの権利や義務が明確に定められており、守られない場合のペナルティなども記載されていることが多いです。たとえば、物品の売買契約では、「いつまでに、何を、いくらで」といったことが細かく決まっています。もし、期日までに商品が届かなかったり、代金が支払われなかったりすると、契約違反となり、損害賠償などの責任を負うことになります。
契約書は、後々「言った、言わない」のトラブルを防ぐために、非常に重要な役割を果たします。
- 当事者の特定: 誰と誰の約束なのかをはっきりさせる
- 目的の明確化: 何のためにこの契約を結ぶのかを具体的に示す
- 権利と義務の記載: お互いが何をすべきで、何を受け取る権利があるのかを定める
- 違反時の措置: 約束が守られなかった場合の対応を決める
このように、契約書は、ビジネスはもちろん、日常生活でも「これはしっかり守らなければいけない約束だ」ということを、お互いに確認し合うためのものです。
「覚書」は、確認や合意の記録
覚書は、契約書ほど厳密な法的な効力を持たない場合が多いですが、「こんなことを決めました」「このような認識で一致しました」ということを記録しておくためのものです。たとえば、何か新しい事業を始める前に、まずはお互いの協力体制や大まかな方針について「覚書」を交わすことがあります。
覚書は、あくまで「合意の確認」であり、契約書のように直接的な法的強制力は弱い傾向があります。
| 項目 | 契約書 | 覚書 |
|---|---|---|
| 法的効力 | 高い | 低い場合が多い |
| 目的 | 権利・義務の発生・変動 | 合意・確認・記録 |
もし、覚書に書かれた内容が守られなかったとしても、すぐに裁判を起こして損害賠償を請求するのは難しいことが多いです。ただし、状況によっては、証拠として使われることもあります。
覚書は、まだ詳細が決まっていない段階や、あくまで「念のため」記録しておきたい場合に便利です。
「名称」だけで判断は禁物
実は、「契約書」と名前がついていても、内容によっては法的な効力が弱い場合や、逆に「覚書」と名前がついていても、内容によっては契約書と同等の効力を持つ場合があるんです。 つまり、名称だけで「これは絶対大丈夫」「これはあまり重要じゃない」と判断するのは危険です。
大切なのは、その書類に「どんな内容」が書かれているか、そして「お互いがどのような意思」でサインしたか、ということです。
- 書かれている内容: 権利や義務について、具体的にどうなっているか
- 当事者の意思: 「これは法的に拘束される約束だ」という認識があるか
ですので、書類を受け取ったら、まずは中身をしっかり確認することが大切です。
「合意」を証明する役割
契約書も覚書も、根本的には「お互いの合意」を証明するためのものです。どちらも、後々「そんな約束はしていない」という争いを防ぐために役立ちます。 ただし、その「合意」が、どれだけ法的に重いものなのか、という点が重要です。
例えば、友人と「来週、映画に行こうね」と約束した場合、これは口約束であり、覚書のようなものです。でも、もし「映画のチケット代を私が払うから、君はポップコーン代を払ってね」という約束なら、これはもう少し具体的な合意になります。
そして、もし「この映画の試写会に招待してくれたら、感想をSNSに投稿します。もし投稿しなかったら、〇〇円支払います」というような内容であれば、これはもう契約書に近いものになってきます。
「約束の具体性」が鍵
契約書と覚書のもう一つの違いは、「約束の具体性」にあります。契約書は、取引の条件、期日、金額、品質など、非常に詳細かつ具体的に定められていることが多いです。一方、覚書は、合意した事項の概要や、今後の進め方など、比較的抽象的な内容でまとめられることもあります。
具体性が高いほど、法的な拘束力も強まる傾向があります。
例えば、
- 「来月、商品のサンプルを送ります」という内容:覚書的
- 「来月15日までに、仕様Aに基づいた高品質なサンプルを10個、無償で送付します。もし遅延した場合は、1日あたり〇〇円の遅延損害金を支払います」という内容:契約書的
このように、いつ、何を、どのような条件で、といった情報が具体的に書かれているほど、契約書としての性質が強くなります。
「継続的な関係」の始まり
契約書は、一度成立すれば、その内容に従って当事者が義務を履行していく、という継続的な関係を生み出すことが多いです。例えば、賃貸契約であれば、毎月の家賃の支払いという義務が続きます。
覚書は、ある特定の時点での合意を確認するだけで、その後の継続的な義務までを必ずしも定めるものではありません。しかし、覚書で合意した内容が、その後の円滑な関係の土台となり、結果的に継続的な取引につながることもあります。
- 契約書: 継続的な権利・義務の発生
- 覚書: 一時的な合意の確認、または継続的な関係の「出発点」
どちらの書類であっても、お互いを尊重し、誠実に対応することが、良好な関係を築く上で最も重要です。
まとめ:どちらも大切、でも目的は違う
「契約書」と「覚書」の主な違いは、法的な拘束力の強さと、記載される内容の具体性にあります。契約書は、より厳密で法的な効力を持った約束であり、守られない場合は法的な手段が取られます。一方、覚書は、合意した内容の確認や記録が主な目的であり、法的な拘束力は弱い傾向があります。
しかし、どちらの書類も、お互いの認識のずれを防ぎ、円滑なコミュニケーションを助ける重要な役割を持っています。書類を受け取った際は、その名称だけでなく、内容をしっかり理解し、自身の状況に合わせて適切に判断することが大切です。