「要介護1」と「要支援2」、どちらも介護保険サービスを利用する際に使われる言葉ですが、一体どんな違いがあるのでしょうか?この二つの違いを理解することは、ご自身やご家族が適切なサポートを受けるためにとても大切です。ここでは、「要介護1」と「要支援2」の違いを、わかりやすく、そして具体的に解説していきます。
介護度ごとの支援内容の違い
「要介護1」と「要支援2」の最も大きな違いは、日常生活においてどのくらいの支援が必要か、という点です。要支援2は、日常生活の大部分は自分でできるけれど、一部に支援が必要な状態を指します。一方、要介護1は、日常生活において、より多くの部分で介助が必要な状態と考えられます。
具体的に見ていきましょう。
-
要支援2の場合:
- 身だしなみ(着替え、整容など)や食事、排泄など、基本的な生活動作のほとんどは自分でできる。
- 掃除や洗濯、買い物など、一部の家事や外出に支援が必要になることがある。
- 例えば、一人での入浴が難しく、見守りや一部介助が必要な場合などが考えられます。
-
要介護1の場合:
- 食事や排泄、入浴などの基本的な生活動作の一部に、立ち上がりや姿勢の保持などで介助が必要になる。
- 家事も、全体的に支援が必要となる場面が増える。
- 例えば、立ち上がりや移動に不安定さがあり、手すりを使っても介助が必要だったり、調理や洗濯を自分で行うことが難しい、といった状況です。
この違いを把握しておくことは、ご本人にとって必要なサービスを適切に選択し、より快適な生活を送るために非常に重要です。
認定基準における違い
「要介護1」と「要支援2」の認定基準には、明確な違いがあります。これは、日常生活を送る上での「身体機能」や「認知機能」の低下の程度を評価する項目に基づいています。
介護保険の認定調査では、以下のような調査項目があります。
| 項目 | 要支援2 | 要介護1 |
|---|---|---|
| 立ち上がり・歩行 | 不安定だが、支えがあれば可能 | 介助が必要 |
| 食事 | ほぼ一人で可能 | 一部介助が必要 |
| 排泄 | ほぼ一人で可能(介助の必要は少ない) | 一部介助が必要(ズボンの上げ下ろしなど) |
これらの項目において、自立してできる動作の範囲が、要支援2と要介護1で異なります。
さらに、認定調査では、調査員が被保険者の状態を直接観察する「直接観察」と、ご家族や身近な方から聞き取りを行う「二次判定」があります。これらの結果を総合的に判断して、介護度(要支援1・2、要介護1〜5)が決定されます。
利用できるサービスの範囲と種類
「要介護1」と「要支援2」では、利用できる介護保険サービスの範囲や種類にも違いがあります。これは、それぞれの介護度で想定される支援の必要度に基づいています。
要支援2の方が利用できるサービスは、主に「介護予防サービス」です。
-
要支援2で利用できる主なサービス:
- 訪問介護(生活援助中心)
- 訪問看護
- 通所介護(デイサービス)
- 地域密着型通所介護
- 短期入所生活介護(ショートステイ)
- 福祉用具貸与
一方、要介護1になると、より積極的な「介護サービス」が利用可能になります。
-
要介護1で利用できる主なサービス(要支援サービスに加え):
- 訪問介護(身体介護の割合が増える)
- (訪問入浴介護、訪問リハビリテーションなど、より専門的なサービスも利用しやすくなる)
ご自身の状態に合ったサービスを選ぶことは、生活の質を維持・向上させる上で非常に重要です。
ケアプラン作成における違い
「要介護1」と「要支援2」では、ケアマネージャーが作成するケアプランの内容も異なります。これは、それぞれの状態に合わせた、よりきめ細やかな支援計画を立てるためです。
要支援2のケアプランは、あくまで「自立支援」に重点が置かれます。
-
要支援2のケアプランの特徴:
- 「できること」を維持・向上させるための支援が中心。
- 例えば、デイサービスでの機能訓練や、生活援助中心の訪問介護で、自立した生活をサポート。
- 目的は、将来的な介護度の進行を防ぎ、できる限り長く自立した生活を送れるようにすること。
要介護1のケアプランは、より具体的な「介護」に焦点を当てたものになります。
-
要介護1のケアプランの特徴:
- 日常生活動作における介助の必要度が高いことを踏まえ、具体的な介助内容が盛り込まれる。
- 例えば、入浴時の身体介護や、移乗の介助など、より専門的な支援計画。
- 目的は、日常生活の困難さを軽減し、安全かつ快適な生活を送れるようにすること。
ケアマネージャーは、ご本人の状況やご家族の意向を丁寧に聞き取り、最適なケアプランを作成してくれます。
自己負担額への影響
「要介護1」と「要支援2」では、利用するサービスの種類や頻度によって、自己負担額も変わってきます。一般的に、要介護度が高くなるほど、利用できるサービスの種類や量が増えるため、自己負担額も増加する傾向にあります。
介護保険サービスの自己負担額は、サービス費用の1割(一定以上の所得がある場合は2割または3割)が原則です。しかし、利用できるサービスの種類や量によって、総額が変わってきます。
-
自己負担額の考え方:
- 要支援2: 介護予防サービスが中心となり、利用できるサービス量には上限(支給限度額)がある。
- 要介護1: 介護サービスが中心となり、要支援2よりも利用できるサービス量が増える可能性がある。
ただし、自己負担額は、利用するサービスの内容、頻度、地域によっても異なります。また、所得に応じて自己負担額の上限が設定される「負担限度額認定」などの制度もあります。
正確な自己負担額については、担当のケアマネージャーや市区町村の窓口に確認することが大切です。
まとめ:自分に合ったサポートを見つけよう
「要介護1」と「要支援2」の違いについて、ここまで詳しく見てきました。どちらの介護度も、日常生活を送る上で何らかの支援が必要な状態であることには変わりありません。しかし、その支援の必要度や内容、利用できるサービスには明確な違いがあります。
この違いを理解し、ご自身の状態やご家族の状況に合わせた適切なサポートを受けることが、より安心して、そして自分らしく生活を送るための第一歩となります。もし、ご自身の状況について疑問がある場合は、迷わずケアマネージャーや地域包括支援センターに相談してみてください。