「給与所得」と「給与収入」、この二つの言葉、似ているようで実は違うんです。給料明細を見たり、税金の話を聞いたりする時に、この「給与所得」と「給与収入」の違 いを理解しておくことは、自分の手取り額や税金について正しく知る上でとても大切 です。今回は、この二つの違いを分かりやすく、そして詳しく解説していきますね。
給与所得と給与収入:基本のキ!
まず、一番基本的なところから説明しましょう。「給与収入」というのは、文字通り、会社からもらった「給料そのもの」のことです。いわゆる、額面のお給料ですね。ここには、基本給はもちろん、残業代や各種手当、ボーナスなどもすべて含まれます。
一方、「給与所得」というのは、この「給与収入」から、お仕事をする上で必要経費にあたるものを差し引いた金額のことです。給料をもらっている人にとって、その経費にあたるのが「給与所得控除」というものです。この給与所得控除は、収入金額に応じて決まっていて、税金がかかる対象となる金額を計算する際に使われます。
つまり、
- 給与収入: 会社から支払われた、税金などが引かれる前の「総額」
- 給与所得: 給与収入から、必要経費(給与所得控除)を差し引いた「税金計算のもとになる金額」
という違いになります。 この違いを理解することが、給与所得と給与収入の違いの第一歩 です。
給与所得控除って、結局いくら引かれるの?
先ほども少し触れましたが、「給与所得」を計算する上で重要なのが「給与所得控除」です。これは、実際に会社員などが仕事をするためにかかっている経費を、収入金額に応じて一定額でまとめて差し引いてくれる制度なんです。
例えば、交通費や仕事で着る服代、セミナー参加費など、働くためにお金はかかりますよね。でも、それをいちいち証明して経費として認めさせるのは大変です。そこで、国が「このくらいの経費はかかっているだろう」と、収入額に応じて決まった金額を差し引いてくれるのが給与所得控除です。
給与所得控除の金額は、収入が高くなるほど、控除される金額も大きくなります。これは、収入が高い人ほど、仕事にかかる経費も大きくなる傾向があるという考え方に基づいています。具体的な計算方法は少し複雑ですが、おおまかなイメージとしては以下のような感じです。
| 給与収入 | 給与所得控除額(例) |
|---|---|
| 162.5万円以下 | 収入金額の40% |
| 162.5万円超~360万円以下 | 収入金額×30%+16.25万円 |
| … | … |
この給与所得控除があるおかげで、実際に手元に残るお金(手取り)よりも、税金がかかる計算上の金額(給与所得)が少なくなる、というわけです。 給与所得控除は、税負担を軽減する大切な役割 を担っています。
税金はどうやって計算されるの?
「給与所得」と「給与収入」の違いを理解したら、次は税金の計算方法について見ていきましょう。所得税などの税金は、基本的には「所得」に対してかかります。なので、先ほど説明した「給与所得」が税金計算のベースになるんです。
具体的には、まず給与収入から給与所得控除を差し引いて給与所得を計算します。そこからさらに、社会保険料控除や生命保険料控除、扶養控除など、個人の状況に応じた「所得控除」を差し引いたものが「課税所得」となります。そして、この課税所得に税率をかけて所得税額が計算される、という流れです。
- 給与収入
- − 給与所得控除
- = 給与所得
- − その他の所得控除(社会保険料控除、生命保険料控除など)
- = 課税所得
- × 税率
- = 所得税額
このように、給与収入そのものに税金がかかるのではなく、色々な控除を差し引いた「給与所得」や「課税所得」に対して税金が計算されるのです。 税金計算の仕組みを理解することは、将来のライフプランを考える上でも重要 です。
源泉徴収票で確認してみよう!
毎年会社から受け取る「源泉徴収票」。この中には、「給与収入」や「給与所得」に相当する情報がたくさん載っています。これらの数字を理解することで、自分の給料がどのように扱われているのかがより明確になります。
源泉徴収票には、大きく分けて以下の項目があります。
- 支払金額: これが「給与収入」にあたります。
- 給与所得控除後の金額: これは「給与所得」に相当します。
- 所得控除の額: 社会保険料控除、生命保険料控除などが書かれています。
- 源泉徴収税額: 1年間に給料から天引きされた所得税の合計額です。
源泉徴収票の「支払金額」が、会社からもらった総額。「給与所得控除後の金額」が、税金計算の元になる金額ということです。 源泉徴収票は、あなたの給与に関する大切な記録なので、しっかり保管して内容を確認する習慣をつけましょう。
年末調整と確定申告
「年末調整」と「確定申告」は、どちらも税金に関わる手続きですが、その目的や対象者が異なります。「給与所得」と「給与収入」の違いを理解していると、これらの手続きもより分かりやすくなります。
- 年末調整: 会社員などが、その年の所得税額を確定させるための手続きです。通常、会社が従業員に代わって行います。給与所得控除に加えて、生命保険料控除や扶養控除などの所得控除の申告をすることで、源泉徴収された税金が多すぎた場合に還付されたり、不足していた場合に追加で徴収されたりします。
- 確定申告: 年末調整で税額が確定しない場合や、副業での所得がある場合、医療費控除などを適用したい場合などに、自分で税務署に所得を申告する手続きです。給与所得者であっても、一定の条件を満たす場合は確定申告が必要になります。
年末調整は、給与所得者にとって最も一般的な税金計算の締めくくり であり、確定申告は、より複雑なケースや、自分で税負担を調整したい場合に利用されます。
まとめ:給与所得と給与収入の違いを理解するメリット
ここまで、「給与所得」と「給与収入」の違いについて詳しく見てきました。この二つの違いを理解することには、たくさんのメリットがあります。
- 手取り額の把握: 額面のお給料(給与収入)だけでなく、差し引かれるもの(給与所得控除など)を理解することで、実際に手元に残る金額(手取り)がなぜそうなるのかが分かります。
- 税金の理解: 税金がどのように計算されているのか、なぜその金額になるのかを理解する助けになります。
- 将来設計: 転職や副業を考えた時に、収入と所得の違いを理解していれば、税金面での影響を予測しやすくなります。
- 節税対策: どのような控除が利用できるのかを知ることで、合法的な節税対策を検討するきっかけにもなります。
給与所得と給与収入の違いを正しく理解することは、お金との付き合い方をより賢く、より計画的に行うための第一歩 と言えるでしょう。
給与所得と給与収入の違い、少しはスッキリしましたでしょうか? 自分の給料明細や源泉徴収票を、ぜひ一度じっくり眺めてみてください。きっと、今まで見えなかったお金の流れが見えてくるはずですよ!