「確定申告」と「医療費控除」、なんとなく聞くけど、何が違うんだろう?そんな疑問をお持ちの方も多いはず。今回は、この「確定申告と医療費控除の違い」について、分かりやすく、そして詳しく解説していきます。 この二つの関係性を理解することは、賢く税金を管理する上でとても大切です。
確定申告の基本:税金とお付き合いする大事な手続き
まず、確定申告とは、1年間の所得(稼いだお金)に対して、いくら税金を納めるべきかを計算し、税務署に申告する手続きのことです。会社員の方は、年末調整という形で会社が代わりにやってくれることが多いですが、個人事業主の方や、副業で収入があった方、医療費控除などの控除を受けたい方は、自分で確定申告をする必要があります。
確定申告では、単に所得を申告するだけでなく、さまざまな控除(税金が安くなる仕組み)を適用することができます。控除には、配偶者控除、扶養控除、そして今回注目する医療費控除など、たくさんの種類があります。
確定申告は、年に一度、原則として翌年の2月16日から3月15日までの間に行われます。この期間に、必要な書類を準備して、税務署に提出します。もし、本来納めるべき税金よりも多く税金を納めていた場合は、還付(返金)を受けることができます。
医療費控除とは?:病気やケガでかかったお金で税金が安くなる!
医療費控除は、自分自身や生計を一つにする家族のために支払った医療費が一定額を超える場合に、その超えた金額を所得から差し引くことができる制度です。つまり、所得が減ることで、結果的に納める税金が少なくなるという仕組みなんです。
この医療費控除を適用するためには、原則として確定申告が必要になります。 医療費控除の対象となるのは、病気やケガの治療にかかった費用はもちろん、通院のための交通費なども含まれます。ただし、美容整形や、予防接種など、治療を目的としないものは対象外になることが多いので注意が必要です。
医療費控除の計算方法は、少し複雑です。具体的には、以下のようになります。
- 1年間に支払った医療費の総額
- (総所得金額等が200万円を超える場合は、その200万円)
- − 保険金などで補填された金額
- − 10万円(または総所得金額等の5%のいずれか少ない方)
この計算式で出た金額が、所得から差し引かれる控除額となります。
確定申告と医療費控除の関係性:医療費控除は確定申告の中で行う手続き
ここで、確定申告と医療費控除の「違い」がより明確になるかと思います。 医療費控除というのは、確定申告という大きな枠組みの中の一つの「項目」または「手続き」なのです。
例えば、会社員の方で、1年間で家族の医療費が15万円かかり、かつ、その金額が所得から差し引ける一定額を超えたとしましょう。この場合、会社員の方は年末調整だけでは医療費控除を受けられません。そのため、ご自身で確定申告を行う必要があります。その確定申告書に、医療費控除の項目を記入し、医療費の領収書などを添付して提出することで、医療費控除が適用され、納めすぎた税金が還付される、という流れになります。
つまり、確定申告は「税金の計算と申告」という全体的な手続きであり、医療費控除はその中で「医療費を考慮して税金を安くしてもらう」ための具体的な方法と言えるでしょう。
確定申告の種類:どんな時に必要?
確定申告には、主に以下のようなケースで必要になることがあります。
- 自営業やフリーランスの方: 事業による所得がある場合。
- 給与所得者で、特定の控除を受けたい方: 医療費控除、寄付金控除、住宅ローン控除(初年度など)など。
- 副業など、給与所得以外の所得がある方: 年間の所得が一定額を超える場合。
- 不動産収入がある方: 家賃収入など。
会社員の方でも、年末調整だけでは対応できない場合(例:年の途中で退職して再就職しなかった場合など)は、確定申告が必要になることがあります。
医療費控除の対象となるもの・ならないもの
医療費控除を受けるためには、何が対象になるかを知っておくことが重要です。
対象となるもの:
- 医師や歯科医師などへの診療費、治療費
- 医薬品の購入費(病気の治療目的のもの)
- 通院のための交通費(公共交通機関、タクシー代など。自家用車のガソリン代などは原則対象外)
- 入院費、入院時の食事代(標準負担額を除いた部分)
- あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師による施術費(症状の改善が目的なもの)
対象とならないもの:
| 予防目的の健康診断、人間ドックの費用 | 美容整形、容姿を美しくするための手術代 |
| 差額ベッド代(個室料など) | 親族のために支払った医療費(生計を一つにしていない場合) |
| 健康維持・増進のための医薬品(ビタミン剤など) | 自家用車のガソリン代・駐車場代 |
医療費控除の申告方法:どうやって提出するの?
医療費控除の申告は、確定申告書に必要事項を記入し、医療費の領収書などを添付して行います。
申告に必要なもの:
- 確定申告書: 税務署や国税庁のウェブサイトで入手できます。
- 医療費の領収書: 1年間の医療費をまとめて、医療機関や薬局から発行されたもの。
- 源泉徴収票: 給与所得のある方。
- (該当する場合)マイナンバーカードまたは通知カードと本人確認書類。
近年では、e-Tax(電子申告)を利用することも可能です。e-Taxを利用すると、自宅にいながら申告ができ、還付金も早く受け取れる場合があります。
還付金について:税金が戻ってくる!
確定申告によって医療費控除が認められると、納めすぎた税金が還付金として返ってきます。還付金の受け取り方法は、通常、指定した銀行口座への振り込みとなります。
還付金の入金時期は、申告時期や税務署の混雑状況にもよりますが、一般的には申告後1ヶ月から2ヶ月程度かかると言われています。
還付金は、申告をしないと受け取れません。 もし、医療費控除の対象となるような医療費がかかった場合は、忘れずに確定申告を行いましょう。
まとめ:確定申告と医療費控除を理解して、賢く税金と付き合おう
「確定申告と医療費控除の違い」について、詳しく見てきました。簡単に言うと、確定申告は税金全体を計算・申告する手続きであり、医療費控除はその中で医療費を考慮して税金を安くしてもらうための制度です。この二つは別物ではなく、密接に関係しています。
医療費控除は、毎年のようにかかる医療費を考えると、非常に有効な節税対策になります。ご自身の状況に合わせて、上手に活用して、賢く税金と付き合っていきましょう。