ネットワークの世界には、L2SW(レイヤー2スイッチ)とL3SW(レイヤー3スイッチ)という、とっても重要な機器があります。これらの機器は、まるで街の交通整理係のように、データの通り道をスムーズにしてくれています。今回は、そんなL2SWとL3SWの基本的な違いについて、分かりやすく解説していきましょう。
L2SWとL3SW、何が違うの?
L2SWとL3SWの主な違いは、データがどの「住所」を見て動いているか、という点にあります。L2SWは、MACアドレスという、機器固有の「家の電話番号」のようなものを見て、同じネットワーク内の機器同士でデータをやり取りします。例えるなら、同じ町内会の中で、誰に手紙を届けるかを決めるようなイメージです。 この、同じネットワーク内での通信を効率的に行うことがL2SWの重要な役割です。
- L2SWの主な役割:
- 同じネットワーク内の機器間でのデータ転送
- MACアドレスに基づいた通信
- ブロードキャストドメインの分割(限定的)
一方、L3SWは、IPアドレスという、インターネット全体で使われる「住所」を見て、異なるネットワーク間でのデータのやり取りを行います。これは、町内会を越えて、別の町(別のネットワーク)にある友達の家に手紙を届けるようなイメージです。L3SWは、ルーターのように、どの道を通れば目的地に一番早く着くか(最適な経路)を判断する能力を持っています。
| 機能 | L2SW | L3SW |
|---|---|---|
| 通信レベル | レイヤー2 (データリンク層) | レイヤー3 (ネットワーク層) |
| アドレス | MACアドレス | IPアドレス |
| 通信範囲 | 同一ネットワーク内 | 複数ネットワーク間 |
このように、L2SWは身近な範囲での通信を、L3SWはより広範囲なネットワーク間の通信を担当するという、役割分担があるのです。
L2SWの得意技:同じ町内でのスムーズなやり取り
L2SWは、主にLAN(Local Area Network)と呼ばれる、学校やオフィスなどの限られた範囲のネットワークで活躍します。皆さんが学校のコンピューター室でインターネットを使ったり、クラスメイトとファイルを共有したりする時、その裏側ではL2SWが「このデータは誰に送ればいいかな?」と、MACアドレスを見て一生懸命働いています。
- データがL2SWに届く
- L2SWは、データの宛先MACアドレスを確認
- 学習済みのMACアドレステーブルと照合
- 指定されたポートにデータを転送
L2SWは、このMACアドレスを学習する能力に長けており、一度学習したMACアドレスであれば、次に同じ宛先からのデータが来た時には、迷わずそのポートに転送することができます。これにより、無駄な通信が減り、ネットワーク全体のスピードが向上します。
しかし、L2SWは基本的に同じネットワーク内にしかデータを送れません。もし、別のネットワークにあるコンピューターと通信したい場合は、L3SWやルーターといった、より高度な機器の助けが必要になります。
L3SWのすごいところ:ネットワークの橋渡し役
L3SWは、IPアドレスを使って、異なるネットワーク同士を繋ぐことができます。例えば、皆さんの学校のネットワークと、インターネットという巨大なネットワークを繋ぐのがL3SWの役割です。IPアドレスは、インターネット上の「住所」のようなものなので、L3SWは「この住所は、こっちのネットワークにあるな」ということを判断し、適切な経路でデータを送ってくれます。
- L3SWの主な機能:
- ルーティング機能(経路選択)
- IPアドレスに基づいた通信
- VLAN間ルーティング
- ACL(アクセス制御リスト)によるセキュリティ
L3SWは、ルーターの機能とスイッチの機能を併せ持っているとも言えます。そのため、単にデータを送るだけでなく、どの経路が一番空いているか、ということを判断して、効率的な通信を実現します。これは、交通渋滞を避けて目的地まで早く着くための、賢いルート案内をしてくれるようなものです。
| 機能 | L2SW | L3SW |
|---|---|---|
| ルーティング | × (できない) | 〇 (できる) |
| IPアドレス | 見ない | 見る |
L3SWがあるおかげで、私たちのインターネット利用は、世界中の様々なネットワークとスムーズに繋がることができるのです。
L2SWとL3SWの使い分け
では、L2SWとL3SWは、具体的にどのように使い分けられているのでしょうか?
まず、L2SWは、一つの部署やフロアなど、比較的小さな範囲のネットワークを構築する際に使われます。例えば、オフィス内でプリンターを共有したり、ファイルサーバーにアクセスしたりするような、日常的な通信を支えるのがL2SWの得意分野です。
- L2SWが活躍する場面:
- 社内LANの構築
- 部署内のネットワーク
- Wi-Fiアクセスポイントの接続
一方、L3SWは、複数の部署やフロア、あるいは外部ネットワークと接続する必要がある、より大きなネットワークで活躍します。例えば、本社と支社を繋いだり、社内ネットワークとインターネットを接続したりする際に、L3SWが中心的な役割を果たします。
- L3SWは、異なるネットワークからのデータを受け取る
- 宛先IPアドレスを確認し、最適な経路を決定
- ルーティングテーブルを参照して、転送先を決定
- 決定された経路でデータを転送
このように、L2SWは「地元密着型」、L3SWは「広域ネットワークのエキスパート」といったイメージで捉えると、その役割の違いが分かりやすいでしょう。
VLANとL3SWの関係
VLAN(Virtual LAN)とは、物理的な配線を変更することなく、ネットワークを論理的に分割する技術です。例えば、同じフロアにいても、営業部と開発部でネットワークを分けたい、といった場合にVLANが使われます。
L2SWでもVLANを構築することは可能ですが、VLAN間で通信を行いたい場合は、通常、ルーターが必要になります。しかし、L3SWは、そのルーティング機能を持っているため、VLAN間での通信を直接行うことができます。これは、L3SWがVLANごとにIPアドレスを割り当て、そのIPアドレスに基づいてルーティングを行うためです。
| VLAN間通信 | L2SW + ルーター | L3SW |
|---|---|---|
| 設定の複雑さ | やや複雑 | 比較的シンプル |
| パフォーマンス | L3SW単体より劣る場合がある | 高いパフォーマンス |
L3SWを利用することで、VLAN間の通信をより効率的かつシンプルに管理できるようになります。
セキュリティとL3SW
L3SWは、ネットワークのセキュリティを高める上でも重要な役割を果たします。IPアドレスを元に通信を制御できるため、特定のIPアドレスからのアクセスを禁止したり、特定のサービスへのアクセスを許可したりといった、きめ細やかなセキュリティ設定が可能です。
- L3SWによるセキュリティ機能:
- ACL(Access Control List)による通信制御
- 不正な通信のブロック
- 特定のネットワークへのアクセス制限
これは、まるで家の玄関に監視カメラを設置したり、部外者の立ち入りを制限したりするようなものです。L3SWが、ネットワークの出入り口で、怪しい通信がないかをチェックしてくれるのです。
L2SWはMACアドレスレベルでの通信を行うため、IPアドレスに基づく詳細なセキュリティ設定はできません。そのため、より高度なセキュリティが必要な場合には、L3SWの導入が不可欠となります。
まとめ:ネットワークの進化を支える両者
L2SWとL3SWは、それぞれ異なる役割を持ちながら、現代のネットワークを支える重要な機器です。L2SWは、身近な範囲でのデータ通信をスムーズにし、L3SWは、異なるネットワーク間を繋ぎ、より広範囲な通信を可能にします。
これらの機器の仕組みを理解することは、ネットワークの仕組みを理解する上で非常に役立ちます。皆さんも、普段何気なく使っているインターネットやネットワークが、これらの賢い機器たちによって支えられていることを、ぜひ覚えておいてくださいね。