「腫瘤」と「癌」の違い、正しく理解して安心を!

「腫瘤(しゅりゅう)」と「癌(がん)」という言葉、なんとなく似ているけれど、具体的にどう違うのか、はっきり説明できますか?実は、この二つの言葉は、医療現場で使われる際に、それぞれ異なる意味合いを持っています。今回は、この「腫瘤」と「癌」の「違い」を、皆さんに分かりやすく解説していきますね。正しく理解することで、漠然とした不安を解消し、より健康的な生活を送るための一歩にしましょう。

「腫瘤」は「できもの」の総称、「癌」はその中でも悪性のもの

まず、一番大切な「腫瘤」と「癌」の「違い」を理解しましょう。「腫瘤」とは、体の中の細胞が異常に増殖してできた「できもの」全般を指す、とても広い意味の言葉です。ですから、「腫瘤」の中には、良性のものもあれば、悪性のものもあります。例えるなら、「腫瘤」は「果物」という大きなカテゴリーで、その中に「りんご」「みかん」「ぶどう」といった種類があるようなイメージです。

一方、「癌」は、この「腫瘤」の中でも、特に悪性度が高く、周りの組織に広がり(浸潤)、体中の離れた場所に飛び火する(転移)性質を持つものを指します。つまり、「癌」は「腫瘤」という大きなカテゴリーの中の、ごく一部の「悪性腫瘍」のことなんですね。

したがって、「腫瘤」だからといって全てが危険なわけではありません。良性の腫瘤は、命に関わることは少なく、手術で取り除けば治ることがほとんどです。しかし、「癌」の場合は、早期発見・早期治療が非常に重要になります。この「腫瘤」と「癌」の「違い」を、さらに詳しく見ていきましょう。

  • 腫瘤: 体内にできる「できもの」全般
  • 癌: 腫瘤の中でも悪性度が高く、転移する性質を持つもの

腫瘤の種類と見分け方

「腫瘤」は、その性質によって大きく「良性腫瘍」と「悪性腫瘍(癌)」に分けられます。「良性腫瘍」は、ゆっくりと大きくなることが多く、周りの組織を侵したり、転移したりすることはありません。例えば、皮膚のできものや、子宮筋腫などがこれにあたります。

「悪性腫瘍」は、いわゆる「癌」のことです。こちらは、細胞の増殖が速く、周りの組織に食い込むように広がり、血管やリンパ管に入り込んで体の他の場所に「転移」することがあります。これが、癌が命に関わる病気とされる理由です。

腫瘤の種類 増殖の速さ 浸潤(周りへの広がり) 転移
良性腫瘍 ゆっくり なし なし
悪性腫瘍(癌) 速い あり あり

見分けるためには、専門医による検査が不可欠です。視覚的な判断だけでなく、細胞の性質を調べる「生検(せいけん)」という検査で、確定診断が行われます。

癌が「腫瘤」と呼ばれることがある理由

なぜ「癌」なのに「腫瘤」と呼ばれることがあるのか、不思議に思った方もいるかもしれませんね。それは、前述したように、「腫瘤」が「できもの」全般を指す広い言葉だからです。癌も、細胞が異常に増殖してできた「できもの」であることに変わりはありません。

例えば、医師が患者さんに「腫瘤ができましたね」と伝えた場合、その腫瘤が良性なのか悪性なのかは、まだ確定していない状態かもしれません。その後の詳しい検査で、「これは癌でした」と診断されるわけです。ですから、「癌」は「腫瘤」という大きな箱の中に入っている、特別なもの、というイメージを持つと良いでしょう。

また、医療記録や会話の中で、「悪性腫瘤」という言葉が使われることもあります。これは「癌」と同じ意味で使われることが多いです。このように、言葉の使い分けには、状況や文脈があるのです。

  1. 「腫瘤」は「できもの」の総称。
  2. 「癌」は「腫瘤」の中でも悪性なもの。
  3. 「悪性腫瘤」は「癌」と同じ意味で使われることが多い。

良性腫瘤の例と注意点

良性腫瘤は、命に直接関わることは少ないとされていますが、場所によっては注意が必要です。例えば、脳の中にできた良性腫瘤は、周りの脳組織を圧迫して、頭痛や吐き気などの症状を引き起こすことがあります。また、大きくなりすぎて、臓器の働きを妨げることもあります。

代表的な良性腫瘤には、以下のようなものがあります。

  • 脂肪腫(しぼうしゅ): 脂肪細胞からできた腫瘤。皮膚の下にできやすい。
  • 線維腫(せんいしゅ): 線維組織からできた腫瘤。
  • 子宮筋腫(しきゅうきんしゅ): 子宮の筋肉にできる腫瘤。

たとえ良性でも、気になるできものがあれば、一度医療機関で相談することが大切です。早期に発見し、適切な処置を受けることで、将来的なリスクを減らすことができます。

悪性腫瘤(癌)の発見と進行

悪性腫瘤、つまり癌は、その種類によって発見のしやすさや進行のスピードが異なります。初期の癌は、自覚症状がほとんどないことが多いため、検診などを通して早期に発見することが何よりも重要です。

癌が進行すると、以下のようなことが起こります。

  1. 浸潤: 周りの正常な組織を破壊しながら広がっていく。
  2. 転移: 血液やリンパの流れに乗って、体の離れた場所に新しい癌(転移巣)を作る。

転移が起こると、治療はより複雑になり、予後も厳しくなる傾向があります。だからこそ、早期発見・早期治療が、癌との闘いにおいて最も強力な武器となるのです。

「腫瘍マーカー」と「腫瘤」「癌」の関係

「腫瘍マーカー」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは、体の中で癌などの腫瘍ができると、血液や尿の中に増える物質のことです。腫瘍マーカーが高い値を示すと、「癌の可能性がある」と判断する材料の一つになります。

ただし、腫瘍マーカーは、癌以外でも上昇することがありますし、癌であっても腫瘍マーカーが正常範囲内のこともあります。そのため、腫瘍マーカーだけで癌の有無を断定することはできません。あくまで、診断の補助的な役割として利用されるものです。

以下に、代表的な腫瘍マーカーとその関連をまとめました。

腫瘍マーカー名 関連する可能性のある癌
CEA(シーイーエー) 大腸癌、胃癌、肺癌など
PSA(ピーエスエー) 前立腺癌
CA19-9(シーエーイチキューキュウ) 膵癌、胆道癌、胃癌など

腫瘍マーカーの結果と、画像検査や生検の結果を総合的に判断して、最終的な診断が下されます。

「腫瘤」と「癌」の「違い」を理解することは、ご自身の体の変化に気づき、適切な対応をとるために非常に大切です。どちらも「できもの」ではありますが、その性質と危険度は大きく異なります。もし、体に気になる変化があったり、不安を感じたりしたら、一人で悩まず、まずは専門のお医者さんに相談してくださいね。正確な診断と、適切なアドバイスを受けることが、健康への一番の近道です。

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