「連帯保証人」と「連帯債務者」、どちらも借金に関わる言葉ですが、その意味や責任の重さには大きな違いがあります。この二つの違いを理解することは、いざという時に自分や大切な人を守るために非常に重要です。本記事では、「連帯保証人 と 連帯債務者の違い」を分かりやすく解説し、それぞれの特徴と注意点について詳しく見ていきましょう。
責任の発生源と範囲:ここが一番違う!
連帯保証人と連帯債務者の最も大きな違いは、責任が発生する「原因」と「範囲」にあります。連帯保証人は、あくまでも「本来の債務者(借金をした本人)が返済できなくなった場合に、代わりに返済する義務」を負います。つまり、主たる債務者の返済義務があって初めて、保証人の責任が生じるのです。一方、連帯債務者は、最初から借金をした本人と同じように、債権者に対して「自分の借金」として直接返済する義務を負います。
この違いは、債権者からの請求のされ方にも影響します。連帯保証人の場合、債権者はまず本来の債務者に請求するのが原則です。しかし、連帯保証人には「催告の抗弁権」(先に債務者に請求してくださいという権利)や「検索の抗弁権」(債務者に財産があるなら、そちらを先に差し押さえてくださいという権利)があります。ただし、これらの権利は「連帯」という言葉がついていることで、ほとんどの場合、使えなくなってしまうのが現実です。
対して、連帯債務者は、債権者から見れば「誰に請求しても、借金全額を回収できる」という非常に都合の良い存在です。そのため、債権者は、連帯債務者のうちの一人に、借金全額の支払いを請求することができます。 この「誰に請求しても全額取れる」という点が、連帯債務者の恐ろしいところであり、知っておくべき重要なポイントなのです。
連帯保証人 vs 連帯債務者:比較表
| 項目 | 連帯保証人 | 連帯債務者 |
|---|---|---|
| 責任の発生源 | 主たる債務者の返済不能時 | 最初から本人と同じ |
| 債権者からの請求 | 原則、主たる債務者へ | 連帯債務者全員へ請求可能 |
| 請求された場合の返済額 | 主たる債務者の残額 | 借金全額 |
| 抗弁権 | 限定的(連帯によりほぼ失効) | なし |
連帯保証人のリスク:知っておきたい「二次的責任」
連帯保証人の責任は、あくまでも「主たる債務者の借金」に対して発生します。これは、主たる債務者が借金を返済できなくなった場合に、その借金残高を肩代わりするということです。例えば、100万円の借金があり、主たる債務者が返済できなくなった場合、連帯保証人は最大100万円を請求される可能性があります。しかし、これはあくまで「主たる債務者が返済すべき額」に限られます。
連帯保証人には、本来、債権者に対して「先に本人に請求してください」という催告の抗弁権や、「本人の財産から先に回収してください」という検索の抗弁権があります。しかし、契約書に「連帯」と明記されている場合、これらの権利はほとんど認められません。つまり、債権者は、主たる債務者が返済能力があっても、いきなり連帯保証人に請求できるのです。
これは、保証人にとって非常に不利な状況と言えます。本来は「もしもの時のための保険」のような存在であるはずが、実質的には主たる債務者と同じように、借金返済の責任を負うことになるからです。 保証人になるということは、自分の人生設計にまで大きな影響を与えかねない、重大な決断であることを理解しなければなりません。
- 主たる債務者の返済能力を事前に確認する
- 保証契約の内容を十分に理解する
- 万が一の際の連絡体制を確立する
連帯債務者のリスク:直接的な「一次的責任」
連帯債務者の場合、契約した時点から、借金をした本人と同等の立場で債権者に対して返済義務を負います。つまり、借金が100万円であれば、連帯債務者の一人は、他の連帯債務者の返済状況に関わらず、債権者から100万円全額を請求される可能性があるのです。
例えば、AさんとBさんが連帯債務者として100万円の借金をしたとしましょう。Aさんが返済を滞納した場合、債権者はAさんに全額請求することも、Bさんに全額請求することもできます。Bさんは、「Aさんにも請求してください」とか、「Aさんの分はAさんに払ってもらってください」ということは言えません。 Bさんは、借金をした本人がAさんであったとしても、自分自身の借金として、全額を返済する義務を負うのです。
さらに、連帯債務者の一人が一部返済した場合でも、他の連帯債務者の義務が減るわけではありません。債権者は、まだ残っている借金部分について、他の連帯債務者全員に請求することができます。このように、連帯債務は、一人一人が借金全額に対する責任を負う、非常に重い責任と言えます。
- 借金の内容と金額を正確に把握する
- 連帯債務者同士で返済計画を共有する
- 万が一の返済分担について事前に話し合っておく
連帯保証人が主たる債務者に代わって返済した場合
連帯保証人が主たる債務者の代わりに借金を返済した場合、その返済した金額については、主たる債務者に対して「求償権」という権利を持つことになります。これは、本来返済すべきだった主たる債務者に対して、「私が代わりに払った分を返してください」と請求できる権利のことです。
しかし、この求償権を行使できるかどうかは、主たる債務者の返済能力に大きく左右されます。もし主たる債務者が返済能力がない場合、連帯保証人が代わりに支払ったとしても、その金額を回収できない可能性が高いのです。つまり、連帯保証人としては、借金返済の負担を負うだけでなく、その負担額を回収できないという二重の苦しみを味わうこともあり得ます。
したがって、連帯保証人になるということは、単に「借金を肩代わりする」というだけでなく、「その回収リスクまで負う」ということを意味します。 この求償権の行使の難しさを理解しておくことは、安易に保証人になることを避けるための重要なポイントです。
求償権について、さらに詳しく見ていきましょう。
- 求償権の発生
- 求償権の範囲
- 求償権の行使
連帯債務者の一人が返済した場合
連帯債務者の一人が、本来の借金全額、あるいは一部を返済した場合、その返済した金額については、他の連帯債務者に対して「求償権」を持つことになります。これは、連帯保証人の場合と同様に、「自分が代わりに払った分を、本来の債務分担に応じて返してください」と請求できる権利です。
例えば、AさんとBさんが連帯債務者で100万円の借金があり、本来は50万円ずつ返済する約束だったとします。Aさんが全額100万円を返済した場合、AさんはBさんに対して、50万円の返還を請求できます。しかし、ここでも問題となるのは、Bさんの返済能力です。もしBさんに返済能力がなければ、Aさんは回収できないリスクを負うことになります。
連帯債務者同士の関係は、法律上、それぞれが借金全額の責任を負うため、内部的な負担割合がどうであっても、債権者からは誰にでも全額請求される可能性があります。 この「内部的な負担割合と、外部への返済義務の乖離」を理解しておくことが、連帯債務者として最も注意すべき点です。
連帯債務者間の求償権について、さらに詳しく見ていきましょう。
- 連帯債務者間の負担割合
- 求償権の発生時期
- 求償権の行使方法
連帯保証人と連帯債務者:どちらがよりリスクが高い?
一般的に、連帯債務者の方が連帯保証人よりもリスクが高いと考えられます。その理由は、前述したように、連帯債務者は最初から借金をした本人と同じように、借金全額に対する「一次的責任」を負うからです。一方、連帯保証人は、あくまでも「主たる債務者の返済不能」という条件が満たされて初めて責任が発生する「二次的責任」を負います。
ただし、連帯保証人にも「連帯」という言葉がついていることで、実質的には主たる債務者とほぼ同等の責任を負うケースが多いのが現実です。そのため、どちらの立場になったとしても、借金返済の義務を負う可能性は非常に高いと言えます。
ここでは、それぞれの立場での具体的なリスクについて、より詳しく比較してみましょう。
- 連帯保証人のリスク
- 連帯債務者のリスク
- どちらがより不利か
連帯保証人と連帯債務者:似ているようで違う「連帯」の意味
「連帯」という言葉が両方に使われているため、混同しやすいのですが、その「連帯」の意味合いには違いがあります。連帯保証人の「連帯」は、保証人としての責任が、本来の債務者から独立したものではなく、主たる債務者の責任と一体化していることを示します。しかし、あくまでも主たる債務者の責任があってこその保証人の責任です。
一方、連帯債務者の「連帯」は、各債務者が、他の債務者の負担部分とは関係なく、債権者に対して借金全額の返済義務を負うことを意味します。これは、各債務者が「独立して」借金全額の責任を負うということです。したがって、連帯債務者においては、一人一人が独立した債務者として、債権者からの請求に応じる義務があるのです。
ここでは、「連帯」という言葉に隠された、より詳細な意味合いを見ていきましょう。
- 連帯保証における「連帯」
- 連帯債務における「連帯」
- 「連帯」がもたらす責任の重さ
弁護士に相談するタイミングと重要性
連帯保証人や連帯債務者になるということは、非常に大きなリスクを伴います。もし、借金に関わることで不安を感じたり、すでに返済に困っている状況であれば、できるだけ早く専門家である弁護士に相談することをお勧めします。弁護士は、あなたの状況を正確に把握し、法的な観点から最善の解決策を提案してくれます。
特に、借金の返済が滞ってしまい、債権者から督促を受けている場合や、連帯保証人・連帯債務者として法的な責任を追及されている場合は、一人で抱え込まず、すぐに相談することが重要です。弁護士に相談することで、冷静に状況を整理し、適切な対応を取ることができます。
ここでは、弁護士に相談する際の具体的なメリットや、相談すべきケースについて詳しく見ていきましょう。
- 弁護士に相談するメリット
- 相談すべき具体的なケース
- 弁護士費用のこと
連帯保証人と連帯債務者の違いは、借金返済における責任の重さと、その発生源にあります。どちらの立場になっても、大きな責任を負うことになりますので、安易に引き受けるのではなく、そのリスクを十分に理解した上で慎重に判断することが大切です。もし不安や疑問があれば、迷わず専門家に相談しましょう。