樹脂 と プラスチック の 違い:意外と知らないその関係性

「樹脂」と「プラスチック」、これって同じものなの? それとも違うもの? 日常生活でよく耳にするこの二つの言葉には、実はちょっとした関係性があります。今回は、この 樹脂 と プラスチック の 違い を分かりやすく解説していきます。

「樹脂」と「プラスチック」は、こうして区別される!

まず、結論から言うと、「樹脂」と「プラスチック」は、互いに重なる部分が多いのですが、厳密には少し意味合いが異なります。一般的に、「樹脂」は、天然素材から作られたものや、人工的に作られた高分子化合物の「原料」や「中間体」を指すことが多いです。一方、「プラスチック」は、この「樹脂」を主成分として、様々な添加剤を加えて加工し、私たちの身の回りで使われる「製品」や「素材」のことを指す場合が多いのです。

例えるなら、小麦粉が「樹脂」で、それを使って作られたパンやお菓子が「プラスチック」のような関係性と言えるでしょう。 この原料と製品という区別を理解することが、樹脂 と プラスチック の 違いを把握する上で重要です。

もう少し詳しく見ていきましょう。

  • 樹脂(レジン)
    • 天然由来のもの(例:天然ゴム、松やに)
    • 合成高分子化合物(例:ポリエチレン、ポリプロピレンなど、プラスチックの原料となるもの)
  • プラスチック
    • 樹脂を主成分とし、熱や圧力で成形できる素材
    • 私たちの身の回りの製品(ペットボトル、おもちゃ、家電製品など)

「樹脂」の語源と歴史

「樹脂」という言葉の語源は、ラテン語の「resina(レジーナ)」に由来し、これは植物の樹液、特に松などの樹液を意味していました。古くから、この樹液は接着剤や塗料、医薬品などに利用されてきました。天然の樹脂は、その独特の性質から貴重な素材として扱われていたのです。

科学技術の進歩により、人工的に様々な性質を持つ「合成樹脂」が作られるようになりました。これらの合成樹脂が、現代のプラスチックの基盤となっています。つまり、 プラスチックの歴史は、天然樹脂から合成樹脂へと進化してきた歴史そのもの と言っても過言ではありません。

初期の合成樹脂には、以下のようなものがありました。

  1. ベークライト:世界初の完全合成プラスチック
  2. セルロイド:写真フィルムやメガネのフレームなどに使われた
  3. ビニール:塩化ビニル樹脂の初期のもの

「プラスチック」が私たちの生活を変えた理由

プラスチックは、その加工のしやすさ、軽さ、丈夫さ、そして安価であることから、爆発的に普及しました。かつてはガラスや金属、木材などが使われていた多くの製品が、プラスチックに置き換わっていきました。これにより、製品の軽量化や製造コストの削減が可能になり、私たちの生活はより便利で豊かになったのです。

プラスチックがもたらした変化は多岐にわたります。例えば、

分野 以前の素材 プラスチックへの置き換え
包装 紙、ガラス ペットボトル、フィルム包装
自動車 金属 バンパー、内装部品
家電 金属、木材 筐体、内部部品

このように、プラスチックは現代社会に不可欠な素材となっています。

「樹脂」と「プラスチック」の化学的な視点

化学的に見ると、「樹脂」も「プラスチック」も、多数の小さな分子(モノマー)が連なってできた「高分子」という物質です。この高分子になる過程を「重合」と呼びます。合成樹脂の多くは、この重合反応によって作られています。

例えば、ペットボトルの原料であるポリエチレンテレフタレート(PET)は、エチレングリコールとテレフタル酸という二つのモノマーが重合してできています。この「原料」となるモノマーや、重合したばかりの「樹脂」の状態を指して「樹脂」と呼ぶことが多いのです。

重合の仕方によって、高分子の性質は大きく変わります。

  • 線状高分子 :鎖のようにまっすぐつながっている。
  • 分岐高分子 :鎖から枝分かれしている。
  • 架橋高分子 :鎖同士が網の目のようにつながっている。

これらの構造の違いが、プラスチックの硬さや弾力性、耐熱性などに影響を与えます。

「天然樹脂」と「合成樹脂」の違い

「樹脂」という言葉は、前述したように天然由来のものと人工的に作られたものの両方を指します。「天然樹脂」は、植物や昆虫などから採取されるもので、古くから利用されてきました。一方、「合成樹脂」は、石油などを原料に化学的に合成されたものです。

天然樹脂の例としては、

  1. 松やに(ロジン):インクや接着剤に使われる
  2. シェラック:塗料や食品コーティングに使われる
  3. 天然ゴム:タイヤなどに使われる(厳密にはエラストマーですが、広義には樹脂と捉えられることも)

合成樹脂は、その種類が非常に多く、私たちの身の回りのほとんどのプラスチック製品の原料となっています。用途に応じて様々な性質を持つように設計されています。

「エンジニアリングプラスチック」とは?

プラスチックには、大きく分けて「汎用プラスチック」と「エンジニアリングプラスチック」があります。汎用プラスチックは、安価で大量生産に向いており、包装材や日用品など、幅広い用途に使われています。一方、エンジニアリングプラスチックは、より高い強度、耐熱性、耐薬品性などの機能を持たせた高性能なプラスチックです。

エンジニアリングプラスチックは、以下のような特徴を持っています。

  • 高い機械的強度
  • 優れた耐熱性
  • 良好な耐薬品性
  • 寸法安定性

これらの特性を活かして、自動車部品、電気・電子部品、航空宇宙産業など、高度な性能が求められる分野で使われています。

代表的なエンジニアリングプラスチックには、

名称 主な用途
ポリアミド(ナイロン) 衣料用繊維、ギア、ベアリング
ポリカーボネート CD/DVD、ヘルメット、自動車部品
ポリアセタール 精密機械部品、ファスナー

「リサイクル」における「樹脂」と「プラスチック」

近年、環境問題としてプラスチックごみが注目されていますが、リサイクルにおいては「樹脂」と「プラスチック」という言葉がどのように使われるかを知っておくと役立ちます。一般的に、廃プラスチック製品を回収し、再加工して再び製品にするプロセスを「リサイクル」と呼びます。

リサイクルの方法には、

  1. マテリアルリサイクル :プラスチック製品を溶かして、再びプラスチック製品の原料(再生樹脂)として利用する方法。
  2. ケミカルリサイクル :化学的に分解して、モノマーなどの原料に戻し、新しいプラスチックを合成する方法。
  3. サーマルリサイクル :焼却して熱エネルギーを回収する方法。

この中で、マテリアルリサイクルでは、回収されたプラスチック製品が「再生樹脂」として生まれ変わります。つまり、 プラスチック製品が「再生樹脂」という「原料」に戻る というイメージです。

リサイクルマークなどでも、プラスチックの種類を表す記号が使われています。例えば、

  • PET(ポリエチレンテレフタレート)
  • PP(ポリプロピレン)
  • PE(ポリエチレン)

これらの記号は、プラスチックの原料となる「樹脂」の名前であることが多いです。

まとめると、 樹脂 と プラスチック の 違い は、原料と製品、あるいは素材という側面に焦点を当てた言葉の使い分けであり、両者は密接に関係しているのです。

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