TQCとTQMの違いを徹底解説!品質管理の進化を知ろう

TQCとTQM、どちらも品質管理に関わる言葉ですが、その意味合いや目指すところに違いがあります。この記事では、「TQCとTQMの違い」を分かりやすく解説し、それぞれの特徴や進化の過程を学んでいきましょう。

TQCとTQM、その核心的な違いとは?

TQC(Total Quality Control:総合的品質管理)は、製品やサービスが設計、製造、販売、そして使用されるまでの全ての段階で、品質を管理することを目指す考え方です。一方、TQM(Total Quality Management:総合的品質経営)は、TQCの考え方をさらに発展させ、組織全体の経営戦略として品質を捉え、顧客満足度を最大化することを目指すものです。つまり、「TQCとTQMの違い」の最も大きな点は、 TQCが「管理」に重点を置くのに対し、TQMは「経営」そのものに品質を統合しようとする点 にあります。TQCが「どうやって品質を良くするか」という点に焦点を当てるのに対し、TQMは「品質を良くすることで、会社全体をどう成長させるか」という、より広い視点を持っています。

  • TQC :製品・サービスの品質向上に注力
  • TQM :組織全体の経営活動として品質を捉え、顧客満足度向上を目指す

TQCの歴史的背景と進化

TQCは、第二次世界大戦後にアメリカから日本に伝わった品質管理の考え方が基盤となっています。当初は、製造工程での不良品を減らすことに重点が置かれていました。しかし、時代が進むにつれて、単に不良品を減らすだけでなく、顧客が求める品質を理解し、それに応えるための活動へと発展していきました。

  1. 初期のTQC:製造工程の改善
  2. 中期TQC:設計段階からの品質作り込み
  3. 現代のTQC:顧客満足度を意識した品質管理

TQCの進化は、品質を「作る」ものから、「保証する」ものへと、その範囲を広げていきました。

TQMへの進化:経営戦略としての品質

TQMは、TQCの考え方をさらに推し進め、組織のトップから現場の従業員まで、全員が品質向上に責任を持つという考え方です。これは、品質が単なる製造部門の仕事ではなく、会社全体の競争力を高めるための重要な経営戦略であるという認識に基づいています。

TQMでは、以下の要素が重視されます。

要素 説明
顧客志向 顧客のニーズを深く理解し、期待を超える満足を提供すること
全員参加 組織の全ての人が品質活動に参加し、貢献すること
継続的改善 常に現状に満足せず、より良い品質を目指して改善を続けること

TQMは、品質を経営の核に据えることで、組織全体のパフォーマンス向上を目指します。

TQCとTQMの具体的な違い:目的と範囲

TQCの主な目的は、製品やサービスの品質を一定水準以上に保ち、不良品を削減することにあります。工場での生産プロセスや検査体制の強化が中心となります。一方、TQMは、顧客満足度の向上を究極の目標とし、そのために組織全体のあらゆる活動を品質管理の視点で見直します。営業、マーケティング、開発、製造、カスタマーサービスなど、部門の垣根を越えた活動が求められます。

TQCにおける品質管理の対象

TQCでは、主に以下のものが品質管理の対象となります。

  • 製品・サービスそのもの :設計通り、仕様通りの品質が実現されているか
  • 製造プロセス :不良品が出ないような、安定した工程になっているか
  • 検査体制 :最終製品の品質が保証されているか

つまり、TQCは「モノ」や「コト」の品質を直接的に管理することに重点が置かれています。

TQMにおける品質管理の範囲

TQMでは、TQCで管理される対象はもちろんのこと、さらに広範囲をカバーします。

  1. 顧客の要求・期待 :顧客が何を求めているのか、どうすれば満足してもらえるのか
  2. 組織の文化・風土 :品質を大切にする意識が組織全体に根付いているか
  3. 従業員の育成・モチベーション :品質向上に貢献できる人材が育っているか
  4. サプライヤーとの連携 :原材料や部品の供給元からの品質も管理されているか

TQMは、組織全体を一つのシステムとして捉え、そのシステム全体の品質を高めることを目指します。

TQCにおける「管理」の視点

TQCにおける「管理」とは、具体的には以下のような活動を指します。

  • 品質基準の設定 :どのような品質が求められるのか、具体的な基準を定める。
  • 品質の測定・評価 :設定した基準に基づいて、製品やプロセスの品質を測定し、評価する。
  • 改善策の実施 :測定・評価の結果、問題点が見つかれば、その原因を分析し、改善策を実行する。
  • 品質パトロール :日常的な業務の中で、品質が維持されているかをチェックする。

これらの活動は、品質を「守り、育てる」ための具体的な行動と言えます。

TQMにおける「経営」の視点

TQMにおける「経営」とは、品質を経営戦略の柱として位置づけることを意味します。

経営視点 具体的な活動
トップのリーダーシップ 経営層が品質向上を最優先課題として掲げ、主導する。
戦略立案 品質目標を会社の経営戦略に組み込み、長期的な視点で計画を立てる。
組織文化の醸成 「品質第一」という考え方を組織全体に浸透させ、従業員の意識改革を促す。
リソース配分 品質向上に必要な人材、予算、時間などを戦略的に配分する。

TQMは、品質が企業の競争力や持続的な成長に直結するという考え方に基づいています。

TQCとTQMのツールと手法

TQCでは、品質管理の目的を達成するために、以下のような統計的な手法がよく用いられます。

  • QC七つ道具(パレート図、特性要因図、ヒストグラム、管理図、散布図、グラフ、チェックシート)
  • 実験計画法
  • 抜取検査

これらのツールは、問題の発見や原因究明、改善効果の測定などに役立ちます。

一方、TQMでは、TQCで使われる手法に加え、より広範なマネジメント手法が取り入れられます。

  1. PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Action)の徹底
  2. シックスシグマ
  3. リーン生産方式
  4. ISO9000シリーズなどの品質マネジメントシステム
  5. 顧客満足度調査

TQMは、組織全体のパフォーマンスを向上させるための様々な手法を統合的に活用します。

TQCとTQMの進化のまとめ

TQCとTQMの違いをまとめると、TQCは「品質管理」という特定の分野に焦点を当てた手法であり、TQMはそれを「経営」というより大きな枠組みに統合し、組織全体の成長を目指す戦略であると言えます。

  • TQC :品質の「管理」に重点(技術的、統計的手法中心)
  • TQM :品質を「経営」に統合(組織文化、戦略、全員参加重視)

TQCはTQMの基盤であり、TQMはTQCをさらに発展させたものと理解することができます。

TQCとTQMの違いを理解することで、企業が品質に対してどのように取り組むべきか、その進化の過程が見えてきます。どちらも、より良い製品やサービスを顧客に提供し、企業価値を高めるために不可欠な考え方です。

関連記事: