「自閉症」と「アスペルガー症候群」、これらの言葉を聞いたことはありますか? 最近では「自閉スペクトラム症(ASD)」という一つの言葉でまとめて呼ばれることが多くなりましたが、以前はこれらには違いがあるとされていました。今回は、この「自閉症とアスペルガーの違い」について、分かりやすく掘り下げていきましょう。
「自閉症」と「アスペルガー」の以前と今の捉え方
かつて、「自閉症」は知的発達の遅れを伴うことが多く、コミュニケーションや社会的な関わりに著しい困難が見られる状態を指していました。一方、「アスペルガー症候群」は、知的な遅れがなく、言語発達の遅れも目立たないものの、対人関係やコミュニケーション、限定された興味・こだわりといった特徴を持つ状態と考えられていました。 この「自閉症とアスペルガーの違い」は、支援のあり方や本人の自己理解に影響を与える重要なポイントでした。
-
自閉症の主な特徴(過去の定義):
- コミュニケーションの遅れや困難
- 社会性の発達の遅れ
- 限定された興味や行動
- 知的発達の遅れを伴うことが多い
-
アスペルガー症候群の主な特徴(過去の定義):
- コミュニケーションや社会性の困難
- 限定された興味や行動
- 知的な遅れや言語発達の遅れがない
しかし、これらの特徴は人によって様々であり、明確に線引きすることが難しい場合も多くありました。そこで、より包括的に理解するために、「自閉スペクトラム症(ASD)」という診断名が使われるようになったのです。
「自閉スペクトラム症(ASD)」という考え方
「自閉スペクトラム症(ASD)」は、以前の「自閉症」「アスペルガー症候群」といった診断名を統合したものです。これは、これらの状態が「スペクトラム(連続体)」のように、一人ひとりの特性の現れ方が多様であることを表しています。つまり、「自閉症とアスペルガーの違い」というよりも、 すべてがASDという大きな枠組みの中で、それぞれ異なる個性を持っている と捉えるようになったのです。
- ASDは、コミュニケーションや社会的な相互関係における持続的な困難
- 興味・関心の限定性、反復的な行動や感覚過敏・鈍麻など
- これらの特徴の現れ方や程度は、人によって大きく異なる
- 知的発達の遅れの有無や言語能力にも幅がある
ASDという考え方により、一人ひとりの特性に合わせたきめ細やかな支援が可能になりました。
コミュニケーションの特性
ASDのある方の中には、言葉を文字通りに受け取ったり、比喩や皮肉などのニュアンスを理解するのが難しかったりすることがあります。また、相手の表情や声のトーンから感情を読み取ることが苦手な場合もあります。これは、「自閉症とアスペルガーの違い」として語られていた頃から、両者に共通する特徴として認識されていました。
| コミュニケーションの特性 | 現れ方の例 |
|---|---|
| 言葉の直接的な理解 | 「冗談だよ」と言われても、真に受けてしまう。 |
| 非言語的サインの理解 | 相手の表情から怒っているのか悲しんでいるのか分かりにくい。 |
| 会話の進め方 | 一方的に自分の好きな話をしてしまうことがある。 |
こうした特性があるからといって、コミュニケーションが取れないわけではありません。伝え方を工夫したり、視覚的な情報を使ったりすることで、円滑なコミュニケーションが可能になります。
社会性の特性
社会的なルールや暗黙の了解を理解したり、集団の中で他者とどのように関われば良いのかを判断したりするのが難しい場合があります。また、相手が何を考えているのかを想像する「心の理論」が働きにくいこともあります。これも、「自閉症とアスペルガーの違い」というよりは、ASD全体に見られる特性です。
- 集団行動でのルールが分かりにくい。
- 友達の気持ちを察するのが難しい。
- 突然の予定変更に対応するのが苦手。
- 相手に合わせた会話のペースが掴みにくい。
一人ひとりのペースや理解度に合わせて、社会的なスキルの獲得をサポートしていくことが大切です。
興味・関心の特性
特定の物事に対して、非常に強い興味やこだわりを持つことがあります。それが、専門家並みの知識を持つほど熱中することもあります。一方で、興味の対象が非常に限定的で、それ以外のことにあまり関心を示さない場合もあります。これは、ASDのある方に共通して見られる特徴です。
- 電車や恐竜など、特定のテーマに夢中になる。
- 同じ行動を繰り返すことに安心感を覚える。
- 興味のないことには、ほとんど注意を払わない。
- 物の機能や構造に強い関心を示すことがある。
この「こだわり」は、強みにもなり得ます。興味のある分野を深めることで、才能が開花することもあります。
感覚の特性
光、音、触覚、味覚、嗅覚などの感覚に対して、過敏さ(強く感じすぎる)や鈍麻さ(弱くしか感じない)を示すことがあります。例えば、特定の音に耐えられなかったり、服のタグが気になって仕方なかったりすることがあります。これは、ASDのある方によく見られる特性です。
- 騒がしい場所が苦手で、耳を塞ぎたくなる。
- 特定の素材の服しか着られない。
- 食べ物の食感や匂いに敏感。
- 痛みを感じにくいことがある。
感覚過敏や鈍麻は、本人が不快感や不安を感じる原因になるため、環境を調整したり、感覚を落ち着かせるための工夫が有効です。
知的発達の状況
「自閉症とアスペルガーの違い」が語られていた頃は、アスペルガー症候群は知的発達の遅れがないとされていました。しかし、ASDという概念では、知的発達の遅れの有無は様々です。知的発達に遅れがある方もいれば、平均以上の方もいます。 この多様性を理解することが、一人ひとりに合った支援につながります。
| 知的発達の状況 | 特徴 |
|---|---|
| 知的発達に遅れがない(平均以上含む) | 「アスペルガー症候群」に近しい特徴を持つ場合が多い。 |
| 知的発達に遅れがある | 「自閉症」の定義に近い特徴を持つ場合が多い。 |
このように、知的発達の状況によって、支援の重点が変わってきます。
「自閉症とアスペルガーの違い」について、以前の捉え方と現在のASDという考え方について解説しました。大切なのは、これらが病気ではなく、その人ならではの特性であり、一人ひとりが持つ個性であるということです。この理解が、より良いサポートや、お互いを尊重し合える社会につながることを願っています。