「委託」と「派遣」、どちらも外部の人に仕事を頼むときによく聞く言葉ですが、実はそれぞれ意味が違います。「委託」と「派遣」の違いを理解することは、ビジネスの場面だけでなく、自分が働く上でもとても大切です。ここでは、この二つの違いをわかりやすく解説します。
1. 業務の「中身」と「指示」で見る、委託と派遣の違い
まず、一番わかりやすい違いは、誰が「仕事の内容」を決めて「指示」を出すか、という点です。「委託」では、依頼する会社(委託元)は「こういう結果がほしい」という「成果物」や「目的」だけを伝えます。実際の仕事の進め方や、誰がどうやるか、という細かい指示は、すべて請け負った会社(受託会社)が行います。これは、まるで「料理を作ってほしい」と頼むのと似ています。どんな料理が食べたいかは伝えますが、どうやって作るかは料理人さんにお任せするイメージです。
一方、「派遣」の場合は、派遣会社から来た人が、依頼する会社(派遣先)の指示を受けて働きます。つまり、仕事の進め方や指示は、派遣先の会社から直接受けます。これは、まるで「お店で働いてほしい」と頼むのと似ています。どのお客さんに、どんな接客をするか、といった指示は、お店の店長さんから直接受けるようなものです。
この違いをまとめると、以下のようになります。
- 委託: 成果物や目的が重要。仕事の進め方は受託会社に任せる。
- 派遣: 指示系統が重要。派遣先の会社から直接指示を受ける。
この「誰が指示を出すか」という点が、委託と派遣を区別する上で最も重要なポイントです。
2. 責任の所在:誰が責任を持つ?
次に、もし仕事がうまくいかなかったり、何か問題が起きた場合、誰が責任を取るのか、という点も違います。「委託」の場合、仕事の成果物や結果に対する責任は、基本的に仕事を引き受けた「受託会社」が負います。依頼した会社(委託元)は、契約通りの成果が得られればOK、という考え方です。
しかし、「派遣」の場合は、指示を出している「派遣先」の会社が、派遣されてきた人の働きぶりや、その仕事の結果に対する責任を負うことが多くなります。もちろん、派遣会社にも一定の責任はありますが、直接指示を出している以上、派遣先が中心的な役割を担います。
表で整理してみましょう。
| 契約形態 | 主な責任 |
|---|---|
| 委託 | 受託会社(成果物や結果) |
| 派遣 | 派遣先(指示した業務の遂行) |
3. 契約関係:誰と誰が契約を結ぶ?
「委託」では、依頼する会社(委託元)と、仕事を引き受ける会社(受託会社)の間で「業務委託契約」というものが結ばれます。これは、あくまで「会社と会社」の契約になります。
一方、「派遣」では、働く人(派遣スタッフ)は「派遣会社」に所属しています。そして、派遣会社と、その人を働かせる「派遣先」の会社の間で「労働者派遣契約」が結ばれます。さらに、働く人は派遣会社と雇用契約を結んでいます。つまり、契約関係が少し複雑になります。
4. 労働者の管理:誰が管理するの?
「委託」の場合、仕事をするのは受託会社の社員さんや、その会社が手配した人たちです。依頼する会社(委託元)は、彼らの雇用や労務管理(給料を払ったり、休暇を管理したりすること)には一切関与しません。受託会社がすべて責任を持って行います。
対して「派遣」では、派遣されてきた人は、派遣会社に籍を置きながら、派遣先の会社の指揮命令を受けて働きます。そのため、給料の支払いなどは派遣会社が行いますが、日々の業務の管理や指示は派遣先が行う、という形になります。
5. 目的とする業務:どんな時に使う?
「委託」は、特定の専門知識や技術が必要な業務、あるいは自社では行いたくないノンコア業務(会社の主軸ではない業務)を外部に任せたい場合に適しています。例えば、ウェブサイト制作、広告運用、経理業務の一部、データ入力などが挙げられます。
「派遣」は、一時的に人手が足りない場合や、特定のスキルを持つ人材を短期間だけ確保したい場合に便利です。例えば、繁忙期の事務作業、イベントスタッフ、ITエンジニアのプロジェクト参画などが考えられます。
これらの使い分けは、それぞれの契約形態の特性を活かすためにも重要です。
6. 契約期間:どれくらいの期間、頼める?
「委託」の場合、契約期間は業務内容やプロジェクトの規模によって柔軟に設定されます。数週間で終わるものから、数年間にわたる継続的な業務まで様々です。
「派遣」には、労働者派遣法によって、原則として一つの部署で働ける期間に上限(原則3年)が定められています。これは、派遣労働者の雇用の安定を図るためのルールです。
7. コスト:どんな費用がかかる?
「委託」の場合、契約内容によって定められた「業務委託費」を支払います。この費用には、通常、仕事をする人の人件費や、それに伴う経費などが含まれています。
「派遣」の場合、派遣会社に支払う「派遣料金」があります。この料金は、派遣スタッフの時給や日給に、派遣会社のマージン(手数料)などが加算されたものです。派遣会社が社会保険料などの負担も行います。
どちらの形態を選ぶかによって、コストの考え方も変わってきます。
まとめ
「委託」と「派遣」は、どちらも外部に仕事を依頼する方法ですが、その仕組みや責任の所在、契約関係などが大きく異なります。どちらの形態が自社の状況に合っているのかを理解することで、より効率的で効果的な人材活用や業務遂行が可能になります。今回解説した「委託 と 派遣 の 違い」を参考に、それぞれのメリット・デメリットを比較検討してみてください。