「養護老人ホーム」と「特別養護老人ホーム」、名前が似ているけれど、一体何が違うんだろう? この二つの施設の違いを理解することは、高齢者のための施設選びにおいて非常に重要です。 どちらも高齢者が安心して暮らせる場所ですが、その目的や入居できる条件、提供されるサービスには大きな違いがあります。
目的と対象者の違い
まず、一番大きな違いはその「目的」と「対象者」にあります。養護老人ホームは、経済的な理由や家族の援助が受けられないなど、様々な理由で在宅での生活が困難になった高齢者が、 自立した生活を送れるようになるまでの間、一時的に保護・支援することを目的としています。 ここでの生活を通して、社会復帰や家族との再統合を目指すのです。
一方、特別養護老人ホームは、病気や障がいなどにより、 常時介護が必要で、自宅での生活が極めて困難な高齢者を対象としています。 こちらは、長期的に施設で生活しながら、専門的なケアを受けることを目的としています。
例えるなら、養護老人ホームは「一時的な避難所兼リハビリ施設」のようなイメージで、特別養護老人ホームは「病気や障がいと付き合いながら、安心して暮らすための終の棲家」といったイメージです。それぞれの施設で、提供されるサポートの内容も大きく変わってきます。
- 養護老人ホーム:自立支援、社会復帰
- 特別養護老人ホーム:常時介護、療養支援
入居条件の厳しさ
入居できる条件も、両施設では異なります。養護老人ホームは、先ほども触れたように、経済的な困窮や、家族からの十分な援助が受けられないことが主な理由となります。 具体的には、所得が一定基準以下であったり、扶養義務のある親族がいない、あるいはいても援助が期待できないといった状況が考慮されます。
特別養護老人ホームへの入居は、より厳しい基準が設けられています。 「常時介護が必要である」という医学的な判断が最も重要視されます。 具体的には、日常生活を送る上で、食事、入浴、排泄などの介助が頻繁に必要となる状態であることが求められます。また、徘徊や認知症の症状があり、自宅では安全に生活できないといったケースも対象となります。
| 施設名 | 主な入居条件 |
|---|---|
| 養護老人ホーム | 経済的困窮、家族等からの援助不足 |
| 特別養護老人ホーム | 常時介護の必要性(医学的判断)、在宅生活困難 |
提供されるサービスの重点
提供されるサービスも、それぞれの目的に合わせて重点が異なります。養護老人ホームでは、 単なる生活の場を提供するだけでなく、生活能力の回復や社会復帰に向けた支援に力を入れています。 具体的には、生活相談、健康管理、レクリエーション活動、そして必要に応じて就労支援なども行われることがあります。
一方、特別養護老人ホームでは、 医療や介護といった専門的なケアが中心となります。 医師や看護師、介護福祉士、理学療法士などの専門職がチームを組んで、入居者一人ひとりの状態に合わせたきめ細やかなケアを提供します。食事や入浴、排泄の介助はもちろん、病状の管理やリハビリテーション、看取りケアまで、幅広いサービスが含まれます。
- 生活相談・支援
- 健康管理
- レクリエーション
- 就労支援(場合による)
利用料金の考え方
利用料金についても、違いがあります。養護老人ホームは、 公的な支援が厚い施設であり、利用者の収入に応じた負担となる場合が多いのが特徴です。 基本的には、地方自治体が運営費の一部を負担しており、利用者の所得税額や年金額などを基に、月々の利用料が決定されます。
特別養護老人ホームの利用料金は、 介護保険制度に基づいて計算されます。 介護度や居住費、食費、そしてサービス内容によって料金が変動しますが、介護保険が適用されるため、自己負担額は比較的抑えられています。ただし、施設によって若干の差はあります。
施設の種類と特徴
養護老人ホームには、さらにいくつかの種類があります。 一般的に「低所得者向けの施設」というイメージが強いですが、実際には「一般型」と「特定施設型」に分かれます。 一般型は、先ほど説明したような自立支援を目的とした施設で、特定施設型は、より介護が必要な状態でも入居できる場合があります。
特別養護老人ホームも、 「従来型」と「ユニット型」があります。 従来型は、大部屋での生活が中心ですが、ユニット型は、少人数のグループに分かれて生活するため、より家庭に近い環境で、プライバシーが保たれやすいという特徴があります。
職員体制と専門性
職員体制も、両施設では大きく異なります。養護老人ホームでは、 社会福祉士や生活相談員が中心となり、入居者の生活全般をサポートします。 施設によっては、看護師や介護職員も配置されていますが、その数は特別養護老人ホームに比べて少ない傾向にあります。
特別養護老人ホームには、 多職種による専門的なチームが配置されています。 医師、看護師、介護福祉士、ケアマネージャー、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、栄養士、そして施設によっては精神科医などが在籍し、入居者一人ひとりの多様なニーズに対応します。 この専門性の高さが、特別養護老人ホームの大きな強みです。
長期滞在と一時利用
利用期間についても、明確な違いがあります。養護老人ホームは、 あくまで「一時的な保護・支援」が目的であるため、入居期間に上限がある場合が多いです。 施設での生活を通して、自立した生活を送れるようになったり、他の施設への移行などが促されます。
特別養護老人ホームは、 「終の棲家」としての役割も担うため、長期的な、あるいは終身での利用が想定されています。 もちろん、状態が改善して自宅に戻れるようになれば退所も可能ですが、基本的には、住み慣れた自宅での生活が困難になった高齢者が、安心して最期まで暮らせる場所として機能しています。
「養護老人ホーム」と「特別養護老人ホーム」の主な違いについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか? どちらの施設がご家族にとって最適か、 それぞれの特徴を理解し、ご自身の状況や目的に合った施設を選ぶことが大切です。 不明な点があれば、お住まいの地域の役所や地域包括支援センターなどに相談してみることをお勧めします。