インターネットを使っていると、見えないところでたくさんのデータがやり取りされています。そのデータのやり取りには、主に「UDP」と「TCP」という二つの約束事(プロトコル)が使われています。今回は、この「UDPとTCPの違い」について、わかりやすく解説していきますね!
通信の「確実さ」と「速さ」のトレードオフ:UDP vs TCP
UDPとTCPの最大の違いは、データの「確実さ」と「速さ」にあります。TCPは、送ったデータが相手にちゃんと届いたかを確認してくれる、とても丁寧な通信方法です。たとえるなら、友達に手紙を送る時に、「届いたよ!」という返信を必ずもらうようなものです。だから、大切な情報を送る時には安心ですが、その分、確認作業があるので少し時間がかかってしまうこともあります。
一方、UDPは、とにかくデータを速く送ることを優先する通信方法です。手紙を送る時に、「とりあえずポストに入れておくね!」という感じで、相手に届いたかどうかは確認しません。だから、届かないデータが出てくる可能性もありますが、その分、すごく速く通信できます。この「確実さ」と「速さ」のどちらを重視するかで、使い分けられているんです。
つまり、 UDPとTCPの違いを理解することは、インターネットがどのように動いているのか、そしてなぜ私たちが快適にサービスを使えるのかを知る上で非常に重要です。
- TCPの特徴:
- データの到達確認を行う
- 順番通りにデータが届くことを保証する
- 信頼性が高い
- UDPの特徴:
- データの到達確認を行わない
- データの順番は保証されない
- 通信速度が速い
TCPが活躍する場面:信頼性が命!
TCPは、データの正確さが何よりも求められる場面で活躍します。例えば、ウェブサイトを見るとき、メールを送受信するとき、オンラインバンキングで取引をするときなどです。これらの通信では、データの一部が欠けたり、順番が入れ替わったりすると、情報が正しく伝わらず、大変なことになってしまいます。
TCPは、データを小さな「パケット」という単位に分けて送ります。そして、相手は受け取ったパケットに「ACK(確認応答)」という返信をします。もし、ACKが返ってこなければ、TCPはパケットを再送します。このように、何度も確認しながらデータを送るので、たとえネットワークが混雑していたり、一時的に不安定だったりしても、最終的には全てのデータが正確に届くようになっています。
| 通信の種類 | 使用されるプロトコル | 理由 |
|---|---|---|
| ウェブサイト閲覧 (HTTP/HTTPS) | TCP | ページの表示が崩れないように、全てのデータが正確に必要だから。 |
| メール送受信 (SMTP/POP3/IMAP) | TCP | メッセージの内容が正確に伝わる必要があるから。 |
| ファイル転送 (FTP) | TCP | ファイルが破損しないように、全てのバイトが正確に転送される必要があるから。 |
UDPが活躍する場面:スピードが命!
一方、UDPは、多少データが失われても、あるいは順番が入れ替わっても、全体の流れが止まることを避けたい場合に選ばれます。代表的な例が、リアルタイムの通信です。例えば、オンラインゲームや、ビデオ会議、IP電話などですね。
オンラインゲームで、キャラクターが少しカクついたり、一瞬動きがおかしくなったりしても、ゲーム全体が止まってしまったり、ラグで遊べなくなったりするよりはずっとマシですよね。ビデオ会議でも、一瞬音声が途切れても、会話が成立する方が重要です。
UDPは、TCPのような複雑な確認作業をしないため、その分、データの遅延が少なくなります。そのため、リアルタイム性が求められるアプリケーションにはUDPが適しているのです。たとえるなら、スポーツ中継で、一瞬映像が乱れても、全体が見えなくなるよりは良い、という感覚に似ています。
- ゲームのキャラクターの動き
- ビデオ会議での映像や音声
- IP電話での通話
ヘッダー情報の違い:軽快なUDP vs 丁寧なTCP
UDPとTCPは、どちらもデータを送るために、パケットの先頭に「ヘッダー」と呼ばれる情報をつけています。このヘッダーに、どのような情報が書かれているかが、両者の違いをさらに明確にします。
TCPのヘッダーは、シーケンス番号(データの順番を示す番号)や確認応答番号(どのデータが届いたかを示す番号)、ウィンドウサイズ(一度に送れるデータ量)など、データの信頼性を確保するための情報が豊富に含まれています。そのため、ヘッダー自体が比較的大きくなります。
一方、UDPのヘッダーは、送信元ポート番号、宛先ポート番号、長さ、チェックサム(データの誤りを検出する値)といった、必要最低限の情報しか持っていません。このシンプルな構造のおかげで、ヘッダーが小さく、データ送受信のオーバーヘッド(余計な処理)が少なくなります。これが、UDPが速い理由の一つです。
- TCPヘッダーの主な役割:
- UDPヘッダーの主な役割:
エラー処理:TCPは「再送」、UDPは「見守る」
通信中にデータが失われたり、破損したりした場合の対処方法も、UDPとTCPでは大きく異なります。このエラー処理の仕組みが、両者の信頼性に直接影響を与えます。
TCPは、エラーが発生した場合、失われたデータや破損したデータを「再送」します。これは、受信側が「このデータが届いていませんよ」という通知を送信側に送ることで実現されます。送信側は、その通知を受け取って、該当するデータをもう一度送り直すのです。この仕組みにより、TCPは高い信頼性を保っています。
UDPは、このようなエラー訂正機能を持っていません。データが失われたり破損したりしても、UDP自身は何もせず、ただ「見守っている」だけです。もし、アプリケーション側でエラー訂正が必要な場合は、自分でその仕組みを実装する必要があります。だからこそ、UDPを使うアプリケーションは、多少のデータロスに強いように設計されていることが多いのです。
| エラー処理 | TCP | UDP |
|---|---|---|
| データロス時の対応 | 自動的に再送する | 再送しない(アプリケーション側で対応が必要な場合あり) |
| データ破損時の対応 | 破損したデータを破棄し、再送を要求する | 破損したデータをそのままにする(チェックサムで検出は可能) |
コネクション:TCPは「接続あり」、UDPは「接続なし」
通信を開始する前に、UDPとTCPでは「コネクション」の有無が異なります。この「コネクション」という考え方が、両者の通信の特性に大きく影響しています。
TCPは、「コネクション指向」と呼ばれる通信方式をとります。これは、通信を開始する前に、送信側と受信側の間で「通信を始めます」「準備はいいですか?」といったやり取り(「スリーハンドシェイク」と呼ばれます)を行い、接続を確立してからデータを送り始める方式です。接続が確立されているため、データの送受信がスムーズかつ確実に行えます。通信が終わる時も、切断の合図を送って接続を閉じます。
一方、UDPは「コネクションレス」と呼ばれる通信方式です。これは、通信を開始する前に特別な接続確立のやり取りを行いません。いきなりデータを送りたい相手にパケットを送りつけます。そのため、TCPのような接続確立のオーバーヘッドがなく、すぐに通信を開始できるのが利点です。たとえるなら、友達に電話をかける前に「今から電話するね!」と連絡しないまま、いきなり電話をかけるようなイメージです。
この「コネクションあり」か「コネクションなし」かという違いは、通信の準備にかかる時間や、通信中の管理の複雑さに影響を与えます。
フロー制御と輻輳制御:TCPの「気配り」、UDPの「マイペース」
ネットワークは、たくさんの人が同時に利用しているので、時にはデータが流れすぎてしまって、混雑(輻輳)することがあります。TCPとUDPは、この混雑をどのように扱うかについても違いがあります。
TCPは、「フロー制御」と「輻輳制御」という仕組みを持っています。フロー制御とは、相手の受信能力に合わせて、送るデータの量を調整することです。輻輳制御とは、ネットワーク全体の混雑具合を見て、データの送信量を自動的に減らしたり増やしたりすることです。これらの仕組みがあるおかげで、TCPはネットワークに過度な負荷をかけずに、安定した通信を行うことができます。まるで、周囲に気を配りながら、みんなで仲良く使うための配慮と言えるでしょう。
UDPには、これらのフロー制御や輻輳制御の仕組みがありません。UDPは、自分の送りたいペースでひたすらデータを送り続けます。そのため、ネットワークが混雑している時にUDPを多用しすぎると、ネットワーク全体の遅延を悪化させてしまう可能性があります。UDPは、自分のペースで、という「マイペース」な通信方式なのです。
- TCPのフロー制御
- TCPの輻輳制御
- UDPはこれらの制御を持たない
まとめ:どちらが良いかは「目的次第」
ここまで「UDPとTCPの違い」について見てきましたが、どちらのプロトコルが優れているということはありません。それぞれの特徴を理解し、目的に合わせて使い分けることが大切なのです。
確実なデータ転送が必要な場面ではTCPを、リアルタイム性や速度を優先する場面ではUDPを選ぶ。そんな風に、インターネットの裏側で活躍するこれらのプロトコルを意識することで、普段使っているサービスが、より深く理解できるようになるはずですよ。