「sdgs と esg の 違い」について、最近よく耳にするけれど、実はよく分かっていない、という方もいるかもしれませんね。どちらも「持続可能な社会」を目指す上で大切な考え方なのですが、その役割やアプローチには違いがあります。この違いを理解することで、私たちがより良い未来のために、どう行動すれば良いのかが見えてくるはずです。
sdgsとesg：それぞれの役割と関係性
まず、sdgs（持続可能な開発目標）は、2030年までに世界が達成すべき、17の目標と169のターゲットからなる国際的な目標です。「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」といった、地球全体で取り組むべき大きな課題を示しています。これは、まるで未来への大きな地図のようなものです。sdgsは、私たちが目指すべき「ゴール」そのものと言えるでしょう。
一方、esg（環境・社会・ガバナンス）は、企業が事業活動を行う上で、環境（Environment）、社会（Social）、そして企業統治（Governance）という3つの側面を重視する考え方です。これは、企業がsdgsというゴールに向かって進むための「具体的な方法」や「行動指針」のようなものだと考えてください。 esgの視点を取り入れることは、企業が持続的に成長し、sdgsの達成に貢献するための重要な鍵となります。
sdgsとesgは、一方が他方を包含するというよりは、互いに連携し、補完し合う関係にあります。sdgsが「何をすべきか」という大枠を示すのに対し、esgは「どうやって、誰が」という具体的な実行部分を担うのです。例えば、sdgsの「気候変動に具体的な対策を」という目標に対し、esgでは「再生可能エネルギーの導入」「CO2排出量の削減」といった具体的な企業活動が求められます。
- sdgs：世界が目指すべき「ゴール」
- esg：企業がゴール達成のために取るべき「行動・視点」
sdgsの「誰が」と「いつまでに」
sdgsは、国連で採択された、2030年を達成期限とする国際目標です。この目標は、政府だけでなく、企業、NPO、そして私たち一人ひとりが協力して達成することを目指しています。つまり、sdgsの達成においては、 「誰が」 関わるのか、そして 「いつまでに」 達成するのかが明確に定められているのです。
sdgsの17の目標は、以下の通りです。
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任 つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
これらの目標は、地球上のすべての人々が、より良く、そして持続可能な生活を送るための包括的な計画と言えます。それぞれの目標は、独立しているのではなく、互いに関連し合っています。例えば、教育の向上は貧困の削減に繋がり、クリーンなエネルギーは気候変動対策に貢献します。
esgの「どうやって」に焦点を当てる
esgは、企業が事業活動において、環境（E）、社会（S）、ガバナンス（G）という3つの側面を考慮する経営手法です。これは、企業が短期的な利益だけでなく、長期的な視点で持続可能な成長を目指すために重要視されています。
esgの構成要素は、具体的には以下のようなものを含みます。
| E (環境) | 温室効果ガス排出量の削減、再生可能エネルギーの利用、廃棄物削減、水資源の保全など |
|---|---|
| S (社会) | 従業員の労働条件、人権尊重、ダイバーシティ＆インクルージョン、地域社会への貢献、製品の安全性など |
| G (ガバナンス) | 役員報酬、情報開示の透明性、コンプライアンス、株主との関係、腐敗防止など |
企業がesgを重視することで、リスク管理能力の向上、ブランドイメージの向上、優秀な人材の確保、そして投資家からの評価向上といったメリットが期待できます。これは、企業が社会的な責任を果たしながら、経済的な成功も収めるための「両立」を目指す考え方です。
esg投資とは、こうしたesgの観点を重視する企業に投資することであり、近年、世界的に注目されています。投資家は、企業の財務情報だけでなく、esgに関する取り組みを評価基準に加えることで、より持続可能で、長期的なリターンが期待できる投資先を見つけようとしています。
sdgsとesgの「対象」の違い
sdgsは、国連加盟国すべてが対象であり、地球規模の課題解決を目指すための「グローバルな目標」です。これは、政府、国際機関、NGO、そして市民社会全体が協力して取り組むべきものです。
一方、esgは、主に「企業」がその事業活動において実践するべき考え方や行動指針です。企業がどのように事業を行い、社会や環境に影響を与えているかを評価し、改善していくことに焦点が当てられます。
まとめると、
- sdgs：世界全体で目指すべき「達成目標」
- esg：企業が目標達成のために「実践するべきこと」
という違いがあります。
sdgsとesgの「アプローチ」の比較
sdgsは、貧困、飢餓、気候変動、教育など、多岐にわたる課題に対して、具体的な目標とターゲットを設定し、それらを達成するための包括的なアプローチを取ります。これは、いわば「あるべき姿」を明確に示したものです。
esgは、企業が事業活動を通じて、環境負荷の低減、社会的な公正の実現、そして透明性の高い経営を行うことを通じて、sdgsに貢献するというアプローチを取ります。これは、sdgsという大きな目標を達成するために、企業が「どのように行動すべきか」という具体的な道筋を示しています。
どちらも持続可能な社会の実現を目指していますが、
- sdgs：広範囲な課題解決に向けた「計画」
- esg：企業活動を通じた「実行」
という点でアプローチが異なります。
sdgsとesgの「成果」の測定方法
sdgsの成果は、各国が設定した目標の達成度や、貧困率の低下、環境指標の改善など、国際社会全体で定期的にモニタリングされ、報告されます。これは、グローバルな視点での進捗確認となります。
esgの成果は、企業のesg評価スコア、温室効果ガス排出量の削減率、従業員の満足度、コンプライアンス違反件数などの具体的な指標を用いて測定されます。これらは、企業が自社のesgパフォーマンスを改善し、sdgsへの貢献度を示すために用いられます。
これらの測定方法は、
- sdgs：マクロな視点での「進捗報告」
- esg：ミクロな視点での「企業パフォーマンス評価」
という違いがあります。
sdgsとesgは、どちらも「持続可能な未来」という共通のゴールを目指すための、異なる役割とアプローチを持つ考え方です。sdgsが地球全体が目指すべき大きな目標を示す「羅針盤」だとすれば、esgは企業がその羅針盤を頼りに、持続可能な航海をするための「具体的な航海術」と言えるでしょう。これらの違いを理解し、それぞれの役割を果たすことで、私たちはより良い未来を築いていくことができるのです。