「刑事事件」と「民事事件」、ニュースなどでよく耳にする言葉ですが、一体何が違うのでしょうか? 実は、この二つは根本的に目的も手続きも異なります。今回は、この「刑事 と 民事 の 違い」を、皆さんが理解しやすいように、分かりやすく解説していきますよ。
事件の主役は誰?~国か、個人か~
まず、一番大きな違いは、 事件の当事者 です。刑事事件では、国(検察官)が「犯罪を犯した人」を相手取って、刑罰を科すことを目的とします。一方、民事事件は、個人や企業など、私人同士の権利や義務に関する争いを解決するためのものです。例えば、借金の返済や、物の売買でのトラブルなどがこれにあたります。
刑事事件は、社会全体の秩序を守るという公的な側面が強いのに対し、民事事件は、あくまで関係者間の個人的な権利を守ることに焦点が当てられています。ですから、刑事事件で有罪となれば罰金や懲役といった刑罰が科されますが、民事事件で敗訴しても、それは相手方にお金を払うなどの「損害賠償」や、約束を守るなどの「義務の履行」に留まります。
ここで、それぞれの特徴をまとめた表を見てみましょう。
| 刑事事件 | 民事事件 | |
|---|---|---|
| 当事者 | 国(検察官) vs 犯罪を犯した人 | 個人・企業など vs 個人・企業など |
| 目的 | 刑罰を科す | 権利・義務の解決 |
| 結果 | 有罪・無罪、刑罰 | 損害賠償、契約履行など |
どっちの「罪」?~犯罪と不法行為~
次に、どのような行為が問題になるのか、その性質について考えてみましょう。刑事事件の対象となるのは、「犯罪」です。これは、法律で「犯罪」と定められており、国が罰を与えるべき行為のこと。例えば、窃盗や傷害、詐欺などがこれにあたります。
一方、民事事件で問題になるのは、「不法行為」や「債務不履行」などです。不法行為とは、故意または過失によって他人に損害を与えてしまった場合。例えば、交通事故で相手を怪我させてしまった場合などです。債務不履行は、契約などで約束したことを守らなかった場合を指します。
「犯罪」と「不法行為」は、似ているように見えて、実は法律上の扱いが異なります。同じような行為でも、刑事事件として立件されるか、民事事件として争われるかは、その行為の悪質性や法律の規定によって決まります。
ここで、いくつかの例を挙げて、どちらの事件になるか考えてみましょう。
- 友達のお金を勝手に使ってしまった → 刑事事件(窃盗罪)
- 約束の期日にお金を返さなかった → 民事事件(債務不履行)
- 車で歩行者を轢いて怪我をさせてしまった → 刑事事件(過失運転致傷罪)と民事事件(損害賠償)の両方になりうる
裁判の流れは違う?~起訴と訴訟~
事件が起こった後、裁判になるまでの流れも大きく異なります。刑事事件では、「起訴」という手続きを経て裁判が始まります。検察官が「この人は犯罪を犯しました」と裁判所に訴えることで、刑事裁判が開かれます。
対して、民事事件では、「訴訟」といいます。これは、権利や義務について争いがある場合に、当事者の一方が相手方に対して裁判所に訴えを起こすことです。
起訴された場合、裁判所は検察官が示した証拠に基づいて、被告人が有罪か無罪かを判断します。一方、訴訟では、原告と被告がそれぞれ主張や証拠を提出し、裁判所がどちらの主張が正しいか、あるいはどのように権利を調整するのが適切かを判断します。
裁判手続きの大きな違いとして、刑事裁判では「推定無罪の原則」が適用されることが挙げられます。これは、有罪が確定するまでは無罪と推定されるという、非常に重要な原則です。民事裁判では、そのような原則はありません。
証拠の集め方と役割~検察官と当事者~
裁判を有利に進めるためには、証拠が不可欠です。刑事事件では、主に検察官が捜査機関と協力して証拠を集めます。警察官が逮捕し、検察官がさらに捜査を進め、証拠を収集・整理して裁判所に提出します。
民事事件では、当事者自身が証拠を集めるのが原則です。例えば、契約書、領収書、メールのやり取り、目撃者の証言などが証拠となります。もし、自分だけでは証拠を集めるのが難しい場合は、弁護士に相談したり、裁判所に証拠調べを申し立てたりすることもできます。
裁判所は、刑事事件では検察官の提示した証拠と被告人側の弁護士が用意した証拠を照らし合わせ、有罪か無罪かを判断します。民事事件では、原告と被告が提出した証拠を比較検討し、どちらかの主張を認めるか、あるいは和解などを促します。
証拠集めのスピード感や、集められる証拠の種類にも違いがあります。
- 刑事事件の証拠収集 : 捜査機関の強制力(家宅捜索など)が働くことがある
- 民事事件の証拠収集 : 基本的に当事者の任意による
最終的な「決着」のつけ方~刑罰と判決~
刑事事件の最終的な決着は、「刑罰」という形で現れます。裁判の結果、有罪となれば、罰金、懲役、禁錮などの刑罰が科されます。これは、社会的な制裁であり、前科として記録されます。
一方、民事事件の決着は「判決」です。この判決は、当事者間の権利や義務について、裁判所が最終的な判断を下すものです。例えば、「原告に〇〇万円を支払うこと」「約束通り〇〇をすること」といった内容になります。
刑事事件で無罪となった場合、その人は犯罪者ではありません。しかし、民事事件で敗訴しても、それは「犯罪者」になったわけではなく、あくまで裁判所の判断に従って、相手方への債務を履行することになります。
「実刑」という言葉は、刑事事件で使われる言葉ですね。民事事件で敗訴しても「実刑」ということはありません。
もしもの時の「味方」~弁護士の役割~
刑事事件や民事事件に巻き込まれてしまった場合、一人で抱え込まずに専門家の助けを借りることが大切です。刑事事件では、弁護士は被告人の権利を守り、適正な裁判が行われるように弁護活動を行います。被疑者段階から弁護士に相談することも可能です。
民事事件でも、弁護士はあなたの代理人として、相手方との交渉や、裁判での主張・立証を行います。契約トラブルや損害賠償請求など、様々な民事問題で力になってくれます。
どちらの事件でも、弁護士に相談することで、事態の解決に向けた最善の方法が見つかることが多いです。まずは、お近くの弁護士会や法律相談センターなどに相談してみるのが良いでしょう。
弁護士に相談するメリットは多岐にわたります。
- 法的なアドバイスを受けられる
- 複雑な手続きを任せられる
- 相手方との交渉を有利に進められる
- 精神的な負担を軽減できる
まとめ~知っておくと安心~
いかがでしたか? 刑事 と 民事 の 違い、少しでも理解が深まったでしょうか? 刑事事件は「国 vs 個人」で犯罪者を罰すること、民事事件は「個人 vs 個人」で権利や義務の争いを解決すること、という大きな枠組みを覚えておくと、ニュースなどを理解する上でも役立つはずです。もしもの時に、これらの知識が皆さんの助けになれば幸いです。