「他職種」と「多職種」って、似ているようでちょっと違う言葉ですよね。「他職種と多職種の違い」を理解することで、チームで仕事をする上で、お互いの役割や連携の仕方がより明確になり、スムーズに進めることができます。今回は、この二つの言葉の意味と、それぞれの重要性について、わかりやすく解説していきます。
「他職種」とは? 自分の部署や担当外の仕事のこと
まず、「他職種」とは、文字通り「他の職種」のことです。例えば、あなたが営業部で働いているとしましょう。その場合、企画部、開発部、経理部などはすべて「他職種」にあたります。つまり、 自分の所属する部署や担当している業務とは異なる分野の仕事 のことを指します。普段あまり関わることのない部署の人たちや、専門分野が違う人たちとのやり取りが「他職種との関わり」と言えます。
- 営業部から見た他職種:企画部、開発部、人事部、総務部、経理部など
- 開発部から見た他職種:営業部、マーケティング部、デザイン部、カスタマーサポート部など
他職種との連携は、新しいアイデアを生み出したり、問題解決の糸口を見つけたりするために非常に大切です。例えば、営業が顧客の要望を開発部に伝えることで、より良い製品が生まれることがあります。しかし、専門用語が違ったり、仕事の進め方が異なったりするため、コミュニケーションには少し工夫が必要です。
他職種との連携がうまくいかないと、以下のような問題が起こりやすくなります。
- 情報共有が遅れる
- 誤解が生じやすくなる
- 責任の所在があいまいになる
- チーム全体の生産性が低下する
「多職種」とは? いろいろな職種が集まって協力すること
次に、「多職種」です。「多」がつくと、たくさんの職種が「集まって」いる、または「協力している」というニュアンスが強くなります。これは、 一つの目標を達成するために、異なる専門性を持つ複数の職種の人々が、チームとして協力し合うこと を指します。医療現場や介護の現場でよく使われる言葉ですが、最近では様々な業界でこの考え方が取り入れられています。
| 職種 | 役割 |
|---|---|
| 医師 | 診断、治療方針の決定 |
| 看護師 | 患者さんのケア、バイタルチェック |
| 薬剤師 | 薬の処方、説明 |
| リハビリテーション専門職 | 機能回復訓練 |
多職種連携では、それぞれの専門知識やスキルを活かしながら、患者さん(または顧客)にとって最善の方法を共に考え、実行していきます。お互いの専門性を尊重し、対等な立場で意見交換をすることが重要です。
多職種連携のメリットは、以下のような点が挙げられます。
- より包括的で質の高いサービス提供が可能になる
- 問題解決のスピードが速まる
- 個々の専門知識だけでは見落としていた視点が得られる
- チーム全体のモチベーション向上につながる
他職種との関わり方:共通認識を持つことの大切さ
「他職種」と関わる上で、最も大切なのは「共通認識」を持つことです。お互いの仕事内容や専門用語を完全に理解する必要はありませんが、「何のためにこの仕事をしているのか」「相手は何を期待しているのか」といった基本的な部分で、共通の理解を目指すことが重要です。
具体的には、以下のような工夫が有効です。
- 定期的な情報交換の場を設ける: 部署ごとの進捗状況や課題を共有するミーティングなどを開催する。
- 共通の目標を設定する: 部署をまたいだプロジェクトなどで、チーム全体の目標を明確にする。
- 相手の立場に立って考える: 自分の要望だけでなく、相手の状況や制約も考慮した上で依頼や相談をする。
「自分は営業だから、開発のことはわからない」ではなく、「開発の〇〇さんが、どのようなプロセスで開発を進めているのか、少しでも理解しよう」という姿勢が、他職種との円滑なコミュニケーションの第一歩となります。 相手の立場を理解しようとする姿勢こそが、他職種との連携を成功させる鍵となります。
多職種連携におけるコミュニケーションのポイント
「多職種連携」では、多様な専門性を持つ人々が集まるため、コミュニケーションには特別な配慮が必要です。お互いの専門用語を尊重しつつ、誰にでも理解できるように、平易な言葉で説明することが求められます。
- 傾聴の姿勢: 相手の話をしっかりと聞き、理解しようと努める。
- 専門用語の言い換え: 相手の専門外の人にもわかるように、専門用語をかみ砕いて説明する。
- 建設的な意見交換: 否定から入るのではなく、どうすればより良くなるかという前向きな姿勢で議論する。
多職種連携は、単に人が集まるだけではありません。それぞれの専門性を最大限に活かし、相乗効果を生み出すことが目的です。そのためには、 「自分は専門家である」というプライドを持ちつつも、「他の専門家の意見も聞く」という柔軟性 が不可欠です。
円滑な多職種連携のために、以下のようなツールや方法が役立ちます。
- 共通のプラットフォームの利用: 情報共有や進捗管理のためのツールを導入する。
- 定期的なカンファレンス: チーム全体で集まり、現状の課題や今後の方向性について話し合う。
- ファシリテーターの活用: 議論を円滑に進め、全員が発言しやすい雰囲気を作る役割を担う人を置く。
「他職種」と「多職種」の具体的な違いと使い分け
「他職種」は、あくまで「自分と違う部署や分野の人」という、少し距離のある関係性を指すことが多いです。一方、「多職種」は、より緊密に連携し、一つのチームとして活動する場面で使われます。
| 他職種 | 多職種 | |
|---|---|---|
| 関係性 | 関わるが、独立した存在 | 協力し合うチームの一員 |
| 目的 | 情報交換、特定課題の解決 | 共通の目標達成、包括的なサービス提供 |
| 関わりの深さ | 限定的、必要に応じて | 密接、継続的 |
例えば、ある会社で新しいキャンペーンを企画する場合。
- 営業部がマーケティング部の担当者に、顧客の反応についてヒアリングするのは「他職種との関わり」です。
- キャンペーンの企画・実行のために、マーケティング部、デザイナー、広報部、営業部などが集まってチームを組み、協力して進めるのは「多職種連携」と言えます。
このように、 「誰と」「どのような目的で」「どのくらいの深さで」関わるのか によって、「他職種」と「多職種」のどちらの言葉がより適切か判断することができます。
「他職種」における課題とその克服
「他職種」との関わりでよくある課題は、お互いの仕事の進め方や優先順位が理解できないことです。例えば、営業は「早く納品してほしい」と考えがちですが、開発部は「品質を最優先したい」と考え、時間がかかることがあります。この認識のズレが、ストレスやトラブルの原因になることがあります。
こうした課題を克服するためには、以下のようなステップが有効です。
- 相手の業務プロセスを理解する: 相手の部署が、どのような手順で仕事を進めているのか、その背景や理由を学ぶ努力をする。
- 期待値をすり合わせる: 「いつまでに、どのようなレベルで」という具体的な要望を明確に伝え、相手の回答をしっかり聞く。
- 感謝の気持ちを伝える: 手間のかかる依頼をしてもらった際には、感謝の言葉を忘れずに伝える。
「相手も、自分の部署と同じように、一生懸命仕事をしている」 という前提に立つことが、良好な関係を築く上で非常に大切です。相手の立場を想像し、思いやりのあるコミュニケーションを心がけましょう。
「多職種」連携を成功させるための環境づくり
「多職種連携」を成功させるには、個々の努力だけでなく、組織としての環境づくりも重要です。心理的安全性が高く、誰もが自由に意見を言える雰囲気は、活発な意見交換を生み出します。
- リーダーシップの役割: リーダーは、チームメンバー一人ひとりの意見を尊重し、公平に扱う。
- 情報共有の仕組み: 会議だけでなく、チャットツールや共有ドキュメントなどを活用して、常に最新の情報が共有されるようにする。
- 定期的な振り返り: プロジェクトの途中や終了時に、チームでうまくいった点、改善すべき点を振り返る機会を設ける。
「チームとして、より良い成果を出す」 という共通の目標意識を常に持ち続けることが、多職種連携を成功に導きます。お互いの専門性を認め合い、尊重し合う文化を育むことが、組織全体の力を高めることに繋がります。
多職種連携の具体的な進め方としては、以下のようなものがあります。
- キックオフミーティング: プロジェクト開始時に、メンバー全員で目的、目標、役割分担などを共有する。
- 定例会議: 週に一度など、定期的に集まって進捗確認や課題の共有、意思決定を行う。
- 非公式なコミュニケーション: 休憩時間やランチなどを利用して、気軽に話せる機会を作る。
まとめ:より良い仕事をするために「他職種」と「多職種」を理解しよう
「他職種」と「多職種」の違いを理解することで、仕事における人間関係やチームワークをより円滑に進めるためのヒントが得られます。他職種とは、自分の担当外の業務を持つ人々。多職種とは、多様な専門性を持つ人々が集まって協力し合うチームです。どちらの関係性においても、相手への理解と尊重、そして積極的なコミュニケーションが、仕事の成功には欠かせません。これらの違いを意識して、日々の業務に活かしてみてください。