「工業簿記」と「商業簿記」、聞くだけでちょっと難しそう？でも大丈夫！この二つの違いを理解することは、ビジネスの世界を覗くための第一歩なんです。簡単に言うと、 工業簿記 と 商業 簿記 の 違い は、「何のお金の流れを追うか」にあります。商業簿記は、モノを仕入れて売るお店のお金の流れ。工業簿記は、モノを作り出す工場のお金の流れを追います。
「モノを売る」と「モノを作る」：根本的な違い
商業簿記は、いわば「お店屋さんごっこ」のお金の管理。仕入れ値、売値、お店の経費などを記録して、いくら儲かったか（利益）を計算します。例えば、パン屋さんなら、小麦粉やバターを仕入れてパンを作り、それを売ってお客さんからお金をもらいますよね。そのお金の出入りを記録するのが商業簿記です。
一方、工業簿記は、この「モノを作る」プロセスが加わるため、少し複雑になります。製品を作るために、どんな材料がいくら使われたか、工場で働く人たちの給料はいくらか、機械を動かす電気代はいくらなのか…といった、製造にかかったコスト（原価）を細かく計算する必要があるんです。 この原価計算が、工業簿記の最も重要なポイント と言えるでしょう。
- 商業簿記 ：仕入れた商品を売って利益を出す
- 工業簿記 ：材料を加工して製品を作り、そのコストを計算する
対象となる「モノ」：商品か、製品か
商業簿記で扱うのは、基本的には「商品」です。お店が仕入れてきたまま、あるいは少し手を加えてそのままお客さんに販売するものです。例えば、スーパーマーケットの野菜や、アパレルショップの洋服などがこれにあたります。
対して、工業簿記で扱うのは「製品」です。これは、材料や部品を組み立てたり、加工したりして、新たに作り出されたものです。自動車、家電製品、おもちゃなど、工場で製造されるものが製品です。
| 簿記の種類 | 対象となる「モノ」 |
|---|---|
| 商業簿記 | 商品（仕入れてきたまま、または少し加工） |
| 工業簿記 | 製品（材料から作り出されたもの） |
記録する「コスト」：何が違う？
商業簿記では、主に「仕入原価」と「販売費及び一般管理費」を記録します。仕入原価は、商品を仕入れるためにかかったお金。販売費及び一般管理費は、お店を運営するため（人件費、家賃、広告宣伝費など）にかかるお金です。
工業簿記では、これらに加えて、製品を作るためにかかった「製造原価」を詳細に記録します。製造原価は、さらに以下の3つに分けられます。
- 材料費：製品を作るために使われた材料の値段
- 労務費：製品を作るために働いた人たちの給料
- 経費：材料費、労務費以外の、工場を動かすためのお金（水道光熱費、減価償却費など）
目的：何を知りたい？
商業簿記の主な目的は、会社の「儲け」を知ることです。売上から、仕入れた商品の代金やお店の経費などを差し引いて、最終的にいくら利益が出たのかを把握します。これにより、経営者は「この商品はよく売れているな」「もっと広告を出した方がいいかな」といった、経営判断に役立てます。
工業簿記は、さらに踏み込んで「製品ひとつあたりいくらで作られたのか」という「原価」を明らかにすることに重きを置きます。この原価情報があると、
- 製品の販売価格をどう決めるか
- もっと効率的に作る方法はないか
- どの製品が儲かっているか、損しているか
といった、より詳細な原価管理や、将来の計画（予算策定）に役立つ情報が得られます。
会計報告書：どう見せる？
商業簿記では、主に「損益計算書」と「貸借対照表」を作成します。損益計算書は、一定期間の収益と費用をまとめたもので、会社の儲け（利益）が分かります。貸借対照表は、ある時点での会社の財産（資産）、借金（負債）、そして返済しなくても良いお金（純資産）のバランスを示します。
工業簿記でも、これらの基本的な報告書は作成しますが、それに加えて「製造原価報告書」を作成します。これは、製品を製造するためにかかった費用を詳細に示したもので、商業簿記にはない、工業簿記ならではの報告書です。
まとめると、
- 商業簿記 ：損益計算書、貸借対照表
- 工業簿記 ：損益計算書、貸借対照表、 製造原価報告書
となります。
どちらがより「細かい」？
一般的に、工業簿記の方が商業簿記よりも「細かい」と言われます。その理由は、前述したように、製品を作る過程での様々なコストを細かく集計・分析する必要があるからです。材料の種類、製造ライン、作業時間など、多岐にわたる情報を記録・管理しなければなりません。
例えば、ある製品を作るのに、Aという材料が500円、Bという材料が300円、そしてそれを組み立てるのに作業員が2時間かかり、時給1500円だったとします。これらの情報を一つ一つ集計していくのが工業簿記の仕事です。商業簿記では、仕入れた商品まとめて「仕入原価」として処理することが多いですが、工業簿記では「この製品を作るために、この材料がいくら、この作業員が何時間かかった」というレベルまで追跡するのです。
このように、工業簿記は、より詳細な原価計算を通じて、製造活動の効率化やコスト削減を目指すための重要なツールと言えます。
「工業簿記」と「商業簿記」の違い、いかがでしたか？どちらも会社のお金の流れを正しく記録・把握するための大切なものですが、その対象や目的が少しずつ異なります。この違いを理解しておけば、ビジネスのニュースや会社の決算書なども、きっとより深く理解できるようになるはずですよ！