「国民健康保険」と「健康保険」、どちらも病気やケガで病院にかかったときに、医療費の負担を軽くしてくれる大切なお金ですが、一体何が違うのでしょうか? 国民健康保険と健康保険の違いは、主に加入する人が誰か、そして運営している組織が違うことです。この違いを理解することで、自分に合った保険制度がより明確になります。
加入できる人の違い:誰がどっちに入るの?
国民健康保険と健康保険の最も大きな違いは、誰が加入できるかという点です。国民健康保険は、主に自営業者やフリーランス、無職の人、そしてパート・アルバイトで社会保険に加入していない人などが加入する、地域を基盤とした保険です。一方、健康保険(正式には「被用者保険」と呼ばれることもあります)は、会社員や公務員など、どこかに雇われている人が加入する保険になります。
具体的に見てみましょう。
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国民健康保険の加入者例:
- 個人事業主
- 農業・漁業従事者
- 専業主婦(夫)で配偶者が国民健康保険に加入している場合
- 退職して国民健康保険に切り替えた人
- 学生でアルバイト収入があるが、社会保険に加入していない人
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健康保険(被用者保険)の加入者例:
- 正社員
- 契約社員
- パート・アルバイトでも一定の条件を満たしている人(週20時間以上勤務など)
- 公務員
この加入できる人の違いは、保険制度を維持していく上で非常に重要です。
運営母体の違い:誰が保険を運営しているの?
国民健康保険と健康保険では、運営している組織が異なります。国民健康保険は、市区町村が運営主体となっています。つまり、お住まいの市町村が保険者となり、保険料の徴収や給付などを行っています。そのため、地域によって保険料率やサービス内容に若干の違いが見られることがあります。一方、健康保険は、主に「協会けんぽ」(全国健康保険協会)や、企業が独自に設立した「組合健保」(健康保険組合)などが運営しています。これらは、事業所単位や業種単位で組織されており、加入者の健康管理や福祉事業なども積極的に行っています。
保険料の決まり方:どうやって保険料を払うの?
保険料の計算方法にも違いがあります。国民健康保険の保険料は、前年の所得、世帯の加入者数、そしてお住まいの市区町村ごとに定められた税率などに基づいて計算されます。所得が高いほど、また加入者が多いほど保険料は高くなる傾向があります。一方、健康保険の保険料は、加入者の給与(標準報酬月額)に対して、事業主と被保険者が折半して負担するのが一般的です。つまり、給与が高いほど保険料も高くなりますが、会社が保険料の半分を負担してくれるというメリットがあります。
給付内容の違い:どんな保障が受けられるの?
病気やケガをした際に受けられる給付内容も、制度によって多少の違いがあります。どちらの保険制度でも、医療費の自己負担割合(原則3割)や、高額療養費制度(一定額以上の医療費がかかった場合に払い戻される制度)などは共通しています。しかし、健康保険(特に組合健保)では、付加給付といって、法定給付(法律で定められた給付)に加えて、独自の給付(例えば、自己負担割合がさらに軽減される、出産育児一時金や育児休業給付金が上乗せされるなど)が受けられる場合があります。国民健康保険にも、市区町村によっては独自の助成制度がある場合もあります。
病気になったときの窓口負担:病院でいくら払うの?
病院にかかった際に、窓口で支払う自己負担額は、国民健康保険でも健康保険でも、原則として年齢や所得によって1割、2割、または3割となります。例えば、現役世代であれば多くの人が3割負担となります。ただし、70歳以上になると「高齢受給者証」が交付され、所得に応じて1割または2割負担となることが多いです(後期高齢者医療制度に移行する方もいます)。どちらの保険制度に加入していても、この自己負担割合の基本的な考え方は同じです。
病気で働けなくなったときの保障:お給料はもらえるの?
病気やケガで長期間働けなくなった場合、どちらの保険制度でも「傷病手当金」という制度があります。これは、働けない期間中の生活を支えるために、給与の一部が支給されるものです。ただし、傷病手当金の支給額や期間には、それぞれの保険制度で定められた条件があります。健康保険の方が、より手厚い保障が受けられるケースも少なくありません。また、障害が残ってしまった場合には、「障害年金」などの公的年金制度も関わってきます。
国民健康保険と健康保険の違いを理解することは、万が一の病気やケガに備える上でとても大切です。ご自身の状況に合わせて、どちらの保険制度に加入しているか、そしてどのような保障が受けられるのかを把握しておきましょう。