「呼吸器内科」と「呼吸器外科」、名前は似ているけれど、一体何が違うんだろう? と思ったことはありませんか? 実は、この二つは扱う病気や治療法に大きな違いがあるんです。今回は、そんな 呼吸器内科と呼吸器外科の違い を、分かりやすく解説していきますね。
専門分野とアプローチの違い
まず、一番大きな違いは、病気に対してどのようにアプローチするかという点です。呼吸器内科は、主に薬物療法やリハビリテーションといった「内科的な治療」で呼吸器の病気を診てくれます。例えば、長引く咳や息切れ、喘息、肺炎、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの診断と治療が中心です。
一方、呼吸器外科は、文字通り「外科的な治療」、つまり手術が必要な呼吸器の病気を専門としています。肺がん、気胸、縦隔腫瘍など、手術で病巣を取り除く必要がある場合や、気管や気管支の病気で手術が必要な場合に活躍します。
この二つの専門分野の違いを、もう少し具体的に見てみましょう。
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呼吸器内科の主な対象疾患:
- 喘息
- COPD(慢性閉塞性肺疾患)
- 肺炎
- 気管支炎
- 肺結核
- 間質性肺炎
- 呼吸不全
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呼吸器外科の主な対象疾患:
- 肺がん
- 気胸
- 縦隔腫瘍
- 気管・気管支の良性腫瘍
- 胸膜炎(一部手術が必要な場合)
このように、内科では「薬」や「検査」で原因を探り、症状を和らげる治療が主ですが、外科では「メス」を使って病気そのものを切り取る、という違いがあるんです。 どちらの科にかかるべきか迷ったときは、まずはかかりつけ医に相談するのが一番ですが、息切れがひどい、咳が止まらないといった症状で、原因がはっきりしない場合は内科から、胸に痛みがあり、怪我なども考えられる場合は外科的なアプローチが必要かどうかも考慮されます。
診断方法の違い
病気を診断する際にも、それぞれの専門分野で得意とする検査方法があります。呼吸器内科では、問診や聴診はもちろんのこと、血液検査、喀痰検査、レントゲン検査、CT検査、肺機能検査などを駆使して、病気の原因を特定していきます。
例えば、息切れの原因が喘息なのか、COPDなのか、あるいは心臓の病気なのかを区別するために、呼吸器内科では肺機能検査が非常に重要になります。この検査では、どれだけ空気を吸ったり吐いたりできるか、その速さなどを測ることで、肺の働き具合を詳しく調べることができます。
一方、呼吸器外科では、手術の計画を立てるために、より詳細な画像診断が不可欠です。
| 検査名 | 主な目的 |
|---|---|
| CT検査 | 肺の病変(腫瘍、炎症など)の大きさ、形、広がりを詳細に把握 |
| MRI検査 | 心臓や血管との関係、縦隔の腫瘍などを詳しく調べる |
| 気管支鏡検査 | 気管や気管支の内部を直接観察し、組織の採取(生検)を行う |
これらの検査結果を総合的に判断し、手術の適応や方法を決定していきます。 正確な診断なくして、適切な治療は始まらないので、診断方法の違いも、それぞれの専門性を理解する上で大切です。
治療法のアプローチ
診断がついたら、次は治療法です。呼吸器内科の治療の軸となるのは、薬物療法です。気管支拡張薬、吸入ステロイド薬、抗生物質、抗アレルギー薬などが病気の種類や症状に合わせて処方されます。また、病気によって呼吸リハビリテーションも重要で、運動療法や呼吸法を指導し、患者さんのQOL(生活の質)向上を目指します。
呼吸器外科の治療は、なんといっても手術が中心です。肺がんであれば、がんのある部分の肺葉や区域を切除します。気胸の場合は、肺から漏れた空気を抜き、再発を防ぐために胸膜を癒着させる手術を行うこともあります。
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手術前の準備:
- 精密検査(CT、MRI、気管支鏡など)
- 全身状態の評価(心電図、血液検査など)
- 麻酔科医との相談
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手術:
- 開胸手術(胸を大きく開く)
- 胸腔鏡手術(数カ所の小さな穴からカメラを入れて行う、体への負担が少ない)
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手術後のケア:
- 痛み止めの管理
- 呼吸リハビリテーション
- 感染予防
病状によっては、内科と外科が協力して治療を進めることも少なくありません。 例えば、肺がんでも初期であれば手術(外科)で治療し、再発予防や進行を抑えるために抗がん剤治療(内科)を行う、といった連携プレーが見られます。
連携の重要性
先ほども触れましたが、呼吸器の病気は複雑なものが多く、内科だけで解決できない場合や、外科手術だけでは完結しない場合が数多くあります。そのため、呼吸器内科医と呼吸器外科医の連携は、患者さんにとって非常に重要なんです。
例えば、肺がんと診断された場合、まず内科医が病気の進行度や患者さんの全身状態を評価し、手術が可能かどうか、どのような治療方針が良いかを検討します。その上で、手術が必要と判断されれば外科医に紹介され、手術が行われます。
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連携の例:
- 肺がん: 内科による診断、化学療法・放射線療法。外科による手術。
- 重症COPD: 内科による薬物療法、リハビリテーション。外科による肺容量減少術(一部)。
- 肺結核: 内科による抗結核薬治療。稀に、薬剤耐性菌などで手術が必要な場合(外科)。
この緊密な連携があるからこそ、患者さん一人ひとりに合った、最善の治療を提供できるのです。
受診するタイミング
「どんな時にどちらの科に行けばいいの?」という疑問も湧いてくるかもしれません。一般的に、以下のような症状がある場合は、まず呼吸器内科の受診を検討すると良いでしょう。
| 症状 | 考えられる科 |
|---|---|
| 長引く咳、痰、発熱 | 呼吸器内科 |
| 息切れ、息苦しさ | 呼吸器内科(心臓病の可能性もあるため、初診で判断が難しい場合も) |
| 喘鳴(ぜんめい、ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音) | 呼吸器内科 |
| 胸の痛み(特に息を吸うとき) | 呼吸器内科、または整形外科・循環器内科(原因による) |
一方、以下のような場合は、呼吸器外科の専門的な知識や技術が必要になる可能性が高まります。
- 怪我や外傷による胸部の痛みや呼吸困難
- 以前から指摘されている肺の影(腫瘍など)の精密検査や治療
- 喀血(血の混じった痰が出る)
- 原因不明の胸水
ただし、自己判断は危険です。まずはかかりつけ医に相談し、専門医への紹介を受けるのが最も安全で確実な方法です。
まとめ
呼吸器内科と呼吸器外科、それぞれの役割と専門分野について、ご理解いただけたでしょうか? 内科は「薬」や「検査」で病気を管理・治療し、外科は「手術」で病巣を取り除く、というのが大きな違いです。しかし、どちらの科も「呼吸器の病気」という共通の目標に向かって、互いに連携しながら患者さんの健康を守ってくれています。ご自身の症状に合わせて、適切な科を受診することが大切ですが、迷ったときは専門家である医師に相談することをお忘れなく。