知っておきたい!誤飲と誤嚥の違い、あなたの健康を守るために

「誤飲」と「誤嚥」、どちらも食べ物や異物が気道に入ってしまうことを指しますが、実はそのメカニズムと危険性は少し異なります。この二つの違いを正しく理解することは、私たち自身の、そして大切な人の健康を守るために非常に重要です。

誤飲と誤嚥、その基本的な違いを理解しよう

まず、根本的な違いは「どこに」異物が入り込むか、という点です。誤飲は、食べ物や飲み物、あるいは小さな物などが、誤って食道ではなく気管に入ってしまう状態を指します。例えば、子供がおもちゃの小さな部品を飲み込んでしまったり、大人が急いで食事をしていて食べ物が喉に詰まってしまったりするケースがこれにあたります。 この誤飲が、窒息や肺炎の原因となることがあるため、注意が必要です。

一方、誤嚥は、食べ物や飲み物、唾液などが、本来通るべき食道ではなく、誤って気管に入ってしまう状態です。これは、飲み込む力(嚥下機能)が低下している場合に起こりやすくなります。加齢や病気、手術の後遺症などが原因で、うまく食べ物や飲み物を飲み込めなくなることがあります。誤嚥性肺炎は、誤嚥によって気管に入った食べ物や細菌が肺で炎症を起こす病気で、高齢者にとっては命に関わることもあります。

このように、誤飲は「誤って気管に入った」という結果に焦点を当てているのに対し、誤嚥は「飲み込む機能の低下によって、気管に入ってしまう」というプロセスに焦点を当てていると言えます。それぞれの状況を把握し、適切な対策を講じることが大切です。

  • 誤飲の例
    • 子供が小さなボタンを飲み込んだ
    • 薬を水なしで飲もうとして喉に詰まった
  • 誤嚥の例
    1. 高齢者が食事中にむせながら飲み込んだ
    2. 寝ている間に唾液が気管に入ってしまった

誤飲のメカニズムとリスク

誤飲は、文字通り「間違って飲み込む」ことです。これは、食べ物や飲み物だけでなく、硬貨、ボタン、電池、小さな玩具など、様々な異物が原因となります。特に、小さなお子さんは、口にしたものをすぐに飲み込んでしまう習性があるため、身の回りの安全な環境づくりが重要です。

誤飲のリスクは、異物の大きさや形状、そしてそれがどこまで体内に侵入するかによって大きく異なります。小さな異物であれば、咳や嘔吐によって自然に排出されることもありますが、気道に詰まってしまうと、呼吸困難を引き起こし、非常に危険な状態になります。電池のような有害な物質であれば、消化管に損傷を与える可能性もあります。

以下に、誤飲の主な原因と対策をまとめました。

原因 対策
小さなお子さんが誤って口にする 危険な小物を手の届かない場所に置く、おもちゃの安全基準を確認する
食事中に急いでしまう よく噛んで、ゆっくり食べる
薬などを誤って飲む 用法・用量を守り、水などでしっかり飲む

何よりも、誤飲を防ぐためには、周囲の大人が常に注意を払い、安全な環境を整えることが不可欠です。

誤嚥のメカニズムとリスク

誤嚥は、食べ物や飲み物が、本来進むべき食道ではなく、誤って気管に入ってしまう状態です。これは、食事をするときに、口から喉、そして食道へと食べ物を運ぶ一連の「嚥下」という働きがうまくいかなくなることで起こります。この嚥下機能は、脳からの指令や、口、舌、喉の筋肉の連携によって成り立っています。

嚥下機能が低下する原因としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 加齢による衰え
  • 脳卒中(脳梗塞、脳出血)などの病気
  • パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患
  • 喉や食道の手術による後遺症
  • 長時間にわたる寝たきり生活

誤嚥が起こると、気管に入った異物(食べ物や唾液など)を体外に排出しようとして「むせ」が出ますが、嚥下機能が低下していると、このむせる力も弱くなることがあります。そのため、異物が肺にまで到達し、肺に炎症を起こす「誤嚥性肺炎」を引き起こすリスクが高まります。誤嚥性肺炎は、高齢者にとっては重篤な合併症となり、命に関わることも少なくありません。

誤嚥を防ぐための対策は、嚥下機能を維持・向上させることが中心となります。

  1. 嚥下体操や口の運動を日常的に行う
  2. 食事の姿勢を工夫する(上体を起こして食べる)
  3. 食事の形態を工夫する(刻み食、ミキサー食など)
  4. 口腔ケアをしっかり行い、口の中を清潔に保つ

誤飲と誤嚥、それぞれの予防策

誤飲と誤嚥、それぞれのメカニズムを理解した上で、具体的な予防策を立てることが重要です。誤飲は、主に「異物を口にしてしまう」ことから起こるため、物理的な対策が中心となります。

具体的には、以下のような対策が考えられます。

  • 家庭内の安全対策
    • 小さな子供の手の届く範囲に、誤飲の危険があるものを置かない。
    • 薬や化粧品などは、専用の保管場所へ。
    • 電池式の小物は、子供が簡単に開けられないような工夫をする。
  • 食事中の注意
    • 子供には、喉に詰まりやすい食品(丸いミニトマト、ぶどう、ナッツ類など)は、必ず切ってから与える。
    • 食事中は、遊ばせない、走らせない。

一方、誤嚥は、嚥下機能の低下が主な原因となるため、機能維持・向上のための対策が中心となります。

項目 具体的な対策
嚥下機能の維持 嚥下体操、舌の運動、頬の運動
食事の工夫 一口量を少なくする、ゆっくりよく噛む、とろみをつける
口腔ケア 食後の歯磨き、舌ブラシの使用

これらの予防策は、一人ひとりの状況に合わせて行うことが大切です。

誤飲・誤嚥が起きた時の対応

万が一、誤飲や誤嚥が起きてしまった場合、迅速かつ適切な対応が求められます。まず、窒息の兆候(咳き込み、呼吸困難、顔色が悪いなど)が見られたら、すぐに救急車を呼ぶことが最優先です。可能であれば、周囲に助けを求めましょう。

応急処置としては、以下のような方法があります。

  • 意識がある場合
    • 背部叩打法:胸骨の下あたりを手のひらの付け根で強く叩く。
    • 腹部突き上げ法(ハイムリック法):おへそのやや上に両手を回し、強く引き上げる。
  • 意識がない場合
    • 救急隊の指示に従い、必要であれば心肺蘇生法(CPR)を行う。

これらの処置は、正しい知識と練習が必要ですが、いざという時のために、講習会などで学んでおくことを強くお勧めします。

誤飲・誤嚥と関連する病気

誤飲や誤嚥は、それ自体が問題となるだけでなく、様々な病気を引き起こす原因ともなります。特に、誤嚥性肺炎は、高齢者の死亡原因の上位に挙げられるほど深刻な病気です。

誤嚥性肺炎以外にも、以下のような病気との関連が指摘されています。

  1. 誤飲による消化管閉塞や穿孔(穴が開くこと)
  2. 気道閉塞による低酸素脳症
  3. 食道や胃の炎症

これらの病気を予防するためにも、日頃から誤飲・誤嚥を防ぐための意識を持つことが大切です。また、持病のある方や、嚥下機能に不安がある方は、医師や専門家(言語聴覚士など)に相談し、適切なアドバイスを受けるようにしましょう。

誤飲・誤嚥のサインを見逃さない

誤飲や誤嚥は、突然起こることもありますが、初期にはいくつかのサインが現れることがあります。これらのサインに早く気づき、適切な対応をとることが、重症化を防ぐ鍵となります。

以下のようなサインが見られたら注意が必要です。

  • 食事中に頻繁にむせる、咳き込む
  • 食事の途中で飲み込みにくそうにする
  • 食後に声がかすれる、痰が多くなる
  • 体重が減ってきた、食欲がなくなってきた
  • 発熱や咳、痰などの肺炎の症状が見られる

特に、高齢者や、寝たきりの方、嚥下機能に不安のある方がいる場合は、これらのサインを見逃さないように、日頃から注意深く観察することが重要です。 些細な変化でも、専門家に相談することが、早期発見・早期治療につながります。

まとめ:誤飲と誤嚥、正しく理解して健康な生活を

誤飲と誤嚥の違い、そしてそれぞれの危険性についてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。どちらも、食べ物や異物が気道に入ってしまうという点で共通していますが、その原因やリスク、そして対策は異なります。これらの違いを正しく理解し、日頃から予防を心がけることで、誤飲や誤嚥による健康被害を防ぐことができます。ご自身や大切な人の健康のために、今日からできることを始めてみましょう。

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