「せん妄」と「不穏」。この二つの言葉、なんだか似ているようで、実は意味が違うんです。今回は、この「せん妄 と 不穏 の 違い」について、わかりやすく解説していきます。どちらも、心や体に変化が起きているサインなので、正しく理解することが大切ですよ。
せん妄と不穏:症状の核心に迫る
まず、せん妄と不穏の大きな違いは、その原因と現れ方です。せん妄は、脳の機能が一時的に低下することで起こる「意識障害」の一種。急にぼーっとしたり、周りの状況がわからなくなったり、幻覚や妄想が見えたり聞えたりすることがあります。まるで、脳がお疲れモードになって、正常に働けなくなってしまうイメージです。
一方、不穏は、精神的な不安定さや落ち着きのなさ、イライラ感などを指す言葉です。これは、直接的な脳の機能低下というよりは、ストレスや不安、病気などが原因で、心がざわざわしている状態と言えるでしょう。ですから、 せん妄は「脳の機能障害」が主な原因であり、不穏は「精神的な不安定さ」が主な側面 と言えます。
具体的に、それぞれの特徴をまとめてみましょう。
- せん妄:
- 急激な発症
- 意識レベルの低下(ぼーっとする、眠気が強いなど)
- 注意力が散漫になる
- 時間や場所がわからなくなる
- 幻覚や妄想
- 昼夜逆転
- 不穏:
- 落ち着きがない
- イライラしやすい
- 不安感が強い
- 興奮しやすい
- 不眠
せん妄のサインを見逃さない!
せん妄は、風邪をひいたときや、手術の後、高齢者の方によく見られます。体調が悪かったり、薬の影響で脳の働きが悪くなったりすることが原因となることが多いんです。たとえば、
- 急に「家族じゃない人が部屋にいる」と言い出す
- いつもと違う行動をとる(徘徊など)
- 日時がわからなくなり、混乱する
といったことがあれば、せん妄の可能性があります。このような症状は、身体的な病気が隠れているサインかもしれません。
不穏な心模様:なぜ起こる?
不穏な気持ちになるのは、誰にでも起こりうることです。試験前でドキドキしたり、心配事があって眠れなかったり。しかし、これが長く続いたり、日常生活に支障が出たりする場合は、何らかのサポートが必要になることもあります。
不穏の原因は、心理的なものだけではありません。体の病気、特に痛みや苦痛が続いている場合にも、精神的に不安定になり、不穏な状態になることがあります。
| 原因 | 症状 |
|---|---|
| 心理的ストレス | 不安、イライラ、落ち着きのなさ |
| 身体的苦痛 | 不眠、興奮、集中力の低下 |
せん妄と不穏、似ているようで違う「意識」
せん妄と不穏で大きく違うのは、「意識」のあり方です。せん妄の場合、意識がはっきりしない、つまり「意識レベルの低下」が見られます。周囲の状況を認識する能力が鈍ってしまうのです。
一方、不穏な状態でも、意識自体ははっきりしていることが多いです。もちろん、不安が強くて集中できない、ということはありますが、時間や場所を認識する能力は保たれている場合がほとんどです。だからこそ、本人は「なんだか落ち着かない」「不安でたまらない」と感じているのです。
原因へのアプローチ:なぜ大切なのか
せん妄と不穏の違いを理解することが、なぜ重要なのでしょうか。それは、それぞれの状態に合わせた適切な対応が必要だからです。
せん妄は、原因となっている病気や体の不調を改善することが最優先です。原因を取り除けば、せん妄の症状は改善することが期待できます。医療機関での専門的な治療が重要になります。
不穏の場合も、原因を探ることが大切です。心理的なカウンセリングや、リラクゼーション、あるいは身体的な原因があればその治療を行います。
- せん妄への対応:
- 原因疾患の治療
- 環境調整(静かで安心できる空間)
- 必要に応じた薬物療法
- 不穏への対応:
- 傾聴と共感
- リラクゼーション
- 原因疾患の治療
- 場合によっては心理的サポート
見極めるためのポイント:専門家の視点
「これはせん妄なのか、それとも単なる不穏なのか?」と迷ったときは、専門家の意見を聞くことが大切です。医師や看護師は、次のような点を注意深く観察して見極めます。
- 発症の速さ: 急に症状が出たのか、徐々に変化したのか
- 意識レベル: ぼーっとしているか、はっきりしているか
- 見当識: 時間、場所、人がわかっているか
- 幻覚・妄想の有無: 実際にはないものが見えたり、思ったりしているか
これらの情報をもとに、適切な診断と治療方針が立てられます。
不穏な状態でも、せん妄が隠れている可能性もあります。特に高齢者の方や、持病のある方の場合、体調の変化には十分な注意が必要です。
もし、身近な人に「不穏」な様子が見られたら
もし、ご家族や友人に「いつもと違う」「落ち着きがない」「イライラしている」といった様子が見られたら、まずは優しく声をかけてみましょう。:
- 話を聞く: 不安な気持ちを言葉にできるように、じっくり耳を傾ける
- 安心させる: 「大丈夫だよ」「そばにいるよ」と伝え、安心感を与える
- 無理強いしない: 本人が嫌がることは無理強いしない
そして、もし症状が続くようであれば、医療機関への相談を検討することが重要です。早期の発見と対応が、症状の改善につながります。
せん妄と不穏は、どちらも心や体にSOSが出ているサインです。それぞれの違いを理解し、適切な対応をすることで、大切な人の健やかな毎日をサポートしていきましょう。