「NFC」と「おサイフケータイ」、最近よく耳にする言葉ですが、一体何が違うのでしょうか?実は、この二つは密接に関係していますが、それぞれ役割が異なります。今回は、 NFCとおサイフケータイの違い を分かりやすく解説します。
NFCの基本:非接触型通信の仕組み
NFC(Near Field Communication)とは、「近距離無線通信」のこと。対応する2つの機器を、数センチメートル程度の非常に近い距離に近づけるだけで、データのやり取りができる技術です。これは、まるで「かざすだけ」で通信できる魔法のようなもの。例えば、お店のレジでスマホをかざしてお会計を済ませたり、駅の改札をタッチして電車に乗ったりする際に、このNFC技術が使われています。 この手軽さが、私たちの生活をより便利にしてくれるのです。
- NFCの主な特徴:
- ・非接触で通信できる
- ・通信距離が短い(数センチメートル程度)
- ・低消費電力
- ・カード、リーダー、端末など様々な機器で利用可能
NFCには、大きく分けて3つのモードがあります。一つ目は「リーダー/ライターモード」で、これはNFCタグ(情報を記録したICチップ)から情報を読み取ったり、書き込んだりするモードです。例えば、お店のポスターに貼られたNFCタグにスマホをかざすと、お店のウェブサイトが開く、といった使い方ができます。二つ目は「カードエミュレーションモード」で、これはスマホをICカード(クレジットカードや交通系ICカードなど)のように見せかけるモードです。これによって、スマホでお店のお支払いができたり、電車に乗れたりするわけです。三つ目は「P2P(Peer to Peer)モード」で、これは2台のNFC対応機器同士で直接データをやり取りするモードです。例えば、スマホ同士で連絡先を交換する、といった使い方が考えられます。
このように、NFCは様々な場面で活躍できる「通信の手段」そのものを指します。それが、次に説明する「おサイフケータイ」という、より具体的なサービスや機能の基盤となっているのです。
おサイフケータイの正体:NFCを使った便利なサービス
さて、では「おサイフケータイ」とは一体何でしょうか?これは、NTTドコモが提供する、NFC技術を活用したケータイ(スマートフォン)向けサービスブランドの総称です。つまり、おサイフケータイというのは、NFCという技術を使って、スマートフォンで「おサイフ」のような機能を実現した、 より具体的な「モノ」や「サービス」 なのです。
- おサイフケータイでできることの例:
- ・電子マネーでの支払い(iD、QUICPay、楽天Edyなど)
- ・交通系ICカード(Suica、PASMOなど)としての利用
- ・ポイントカード、クーポン、会員証としての利用
- ・かざして簡単ログイン
おサイフケータイは、NFCの「カードエミュレーションモード」を主に利用しています。スマホの中に、まるで本物のICカードが入っているかのように振る舞わせることができるのです。これにより、これまで物理的なカードを持ち歩いていたものが、スマホ一つで完結するようになりました。これは、多くの人が「スマホでおサイフがわりになる!」と感じる所以でしょう。
つまり、NFCは「通信の仕組み」であり、おサイフケータイはそのNFCという仕組みを利用して作られた「便利なサービス」や「機能」と言えます。NFCがなければ、おサイフケータイのようなサービスは成り立ちません。
NFCと「Felica」の関係性
NFCと並んでよく聞くのが「Felica(フェリカ)」という言葉です。これは、ソニーが開発した非接触型ICカード技術の名称で、日本で普及している交通系ICカードや電子マネーの多くがFelicaを採用しています。 NFCは、Felicaを含む様々な非接触ICカード技術の国際標準規格 のようなものです。
| NFC | Felica |
|---|---|
| 国際標準規格、通信技術 | ソニーが開発した非接触ICカード技術 |
| FelicaもNFCの規格の一部として機能することが多い | 日本で広く普及している技術 |
簡単に言うと、NFCは「広いくくり」で、Felicaはその中の「得意な分野」を持った技術、と考えると分かりやすいかもしれません。おサイフケータイの多くは、このFelica技術を搭載したNFCチップを使って実現されています。
そのため、おサイフケータイが使えるスマホには、NFC機能とFelicaチップが搭載されていることがほとんどです。ただし、NFC搭載でもFelica非対応のスマホや、Felica搭載でもNFCの他の機能(P2Pモードなど)が使えないスマホも存在します。このあたりが、少しややこしく感じる部分かもしれません。
おサイフケータイの機能とNFCの可能性
おサイフケータイの機能は、日々進化しています。電子マネーや交通系ICカードはもちろん、近年では、スマートフォンのロック解除にNFCタグを使ったり、お店のメニューをかざして表示したりと、その活用範囲は広がっています。 NFCの可能性は、おサイフケータイという枠を超えて、私たちの生活の様々な場面で便利さを提供してくれるでしょう。
- おサイフケータイの主な機能:
- ・キャッシュレス決済
- ・交通機関の利用
- ・ポイントカード・クーポン管理
- ・店舗での情報取得
- ・デジタル会員証
例えば、美術館で展示品に近づけてスマホをかざすと、その展示品に関する詳しい情報がスマホに表示される、といったこともNFCを使えば可能です。また、イベント会場でNFCタグをかざすと、スムーズに入場できる、といった使い方も考えられます。
おサイフケータイは、あくまでNFCという技術を「おサイフ」という用途に特化させて提供しているサービスです。しかし、NFC自体はもっと汎用的で、様々な用途に応用できるポテンシャルを秘めているのです。
iPhoneにおけるNFCとおサイフケータイ
iPhoneユーザーの方からすると、「iPhoneにはおサイフケータイってないの?」と思われるかもしれません。実は、iPhoneでもNFC機能は搭載されていますが、「おサイフケータイ」という名称のサービスはありません。代わりに、Apple Payというサービスがあります。
Apple Payは、iPhoneに搭載されているNFC機能と、Felicaチップ(日本国内版iPhone)を利用して、おサイフケータイと同様の機能を実現しています。つまり、 Apple PayはiPhoneにおける「おサイフケータイ」のようなもの だと考えてください。
iPhoneのNFCは、決済機能だけでなく、HomeKit対応家電の操作や、Suicaなどの交通系ICカードへのチャージ、さらには、近年では交通系ICカードの「 pás」機能(スマホをかざして改札を通る)としても利用できるようになっています。これは、NFCの技術がApple Payという形で、私たちの生活をより豊かにしてくれている証拠です。
まとめ:NFCは「技術」、おサイフケータイは「サービス」
ここまで見てきたように、NFCとおサイフケータイの最も大きな違いは、 NFCは「通信の技術」そのものを指す のに対し、 おサイフケータイは、そのNFC技術を利用して作られた「便利なサービスや機能の総称」 であるという点です。
例えるなら、NFCは「道」であり、おサイフケータイは「その道を通って行ける、便利なショッピングモール」のようなものです。道がなければショッピングモールには行けませんが、道だけあっても、そこにショッピングモールがなければ何もできません。
どちらも私たちの生活を便利にしてくれる大切な存在です。NFCという技術があるからこそ、おサイフケータイのような、スマホ一つで様々なことができるサービスが実現できているのです。
今後もNFC技術は進化し、おサイフケータイのようなサービスもさらに発展していくことでしょう。この二つの関係性を理解しておくことで、新しいサービスが登場した際にも、その仕組みを理解しやすくなるはずです。
これで、NFCとおサイフケータイの違いについて、バッチリ理解できたのではないでしょうか?