日本で暮らす外国籍の方々には、「特別永住者」と「永住者」という二つのステータスがあります。この二つの違いを理解することは、日本での生活や権利に関わる大切なことです。「特別永住者と永住者の違い」は、その成り立ちや付与される条件、そして一部の権利に違いがあります。この記事では、それぞれの特徴を分かりやすく解説していきます。
特別永住者とは？ その背景と特徴
「特別永住者」という言葉を聞くと、少し特別な響きを感じるかもしれません。これは、戦前からの歴史的経緯により、日本にルーツを持つ外国籍の方々、主に韓国・朝鮮籍の方々やその子孫の方々に与えられた特別な在留資格です。彼らは、国籍は日本ではありませんが、長年日本で生活し、地域社会の一員として貢献されてきました。 この「特別永住者」というステータスは、彼らが日本社会に深く根ざしていることを示す、非常に重要なものです。
特別永住者は、一般の「永住者」とは異なり、入管法（出入国管理及び難民認定法）の改正によって新たに設けられた制度です。その背景には、戦後の複雑な国際関係や、日本で生まれ育った方々が直面していた立場などがあります。
- 対象者： 主に、戦前からの日本に住んでいた朝鮮半島出身者とその子孫、および法務大臣が特別に永住を許可した方々。
- 在留資格の変更： 「永住者」とは別の、独立した在留資格として位置づけられています。
- 日常生活： 多くの特別永住者の方々は、日本国籍者と変わらない生活を送っています。
永住者とは？ 日本で長く暮らすためのステータス
一方、「永住者」は、一定の条件を満たした外国籍の方が、日本に無期限で在留することを許可されたステータスです。これは、国籍に関わらず、日本での生活を長期的に、そして安定的に続けたいと考える外国人にとって、非常に魅力的な資格と言えます。
永住者になるためには、いくつかの厳しい条件をクリアする必要があります。
- 素行善良： 法律や規則を守り、模範的な生活を送っていること。
- 独立の生計： 自分自身の収入で、生活を維持できる能力があること。
- 日本への貢献： 日本で一定期間（通常は10年以上）在留し、納税義務を果たしていることなど。
永住者も、特別永住者と同様に、日本での活動の自由度が高く、仕事や住む場所を選ぶ際に大きな制限はありません。ただし、日本国籍ではないため、選挙権など一部の公的な権利は持っていません。
| 項目 | 特別永住者 | 永住者 |
|---|---|---|
| 成り立ち | 歴史的経緯による | 一定期間の在留と条件クリア |
| 在留期限 | 無期限 | 無期限 |
特別永住者と永住者の主な違い
「特別永住者と永住者の違い」を理解する上で、最も重要なのは、その「成り立ち」と「法的な位置づけ」です。特別永住者は、前述したように歴史的な背景から生まれた特別な在留資格であり、永住者は、一定の条件を満たした外国人に与えられる一般的な在留資格です。
具体的には、以下のような点が挙げられます。
- 在留資格の根拠： 特別永住者は「日本国との平和的関係の切換え等のための経済的及び社会的、法的地位の安定等に関する法律」に基づき、永住者は「出入国管理及び難民認定法」に基づいています。
- 申請手続き： 特別永住者の在留資格の更新は、永住者の更新と比べて、一部手続きが簡略化されている場合があります。
- 取消しの要件： どちらの在留資格も、一定の重大な法律違反などがあった場合には取り消される可能性がありますが、その要件や手続きには微妙な違いがあります。
入国管理局との関係性
日本での外国籍の方々の在留を管理しているのが、出入国在留管理庁（旧：入国管理局）です。特別永住者と永住者で、入管との関わり方に違いがあるのでしょうか。
特別永住者の方々は、その在留資格が歴史的な背景に基づいているため、入管法上の「永住者」とは異なるカテゴリーとして扱われます。しかし、日常生活においては、永住者と同様に、安定した在留が保証されています。
- 在留カード： どちらのステータスの方も、在留カードを携帯する必要があります。
- 資格更新： 特別永住者の在留期間は原則として無期限ですが、法改正などにより、2012年7月以降、在留カードの更新が必要となりました。
- 在留管理： 両者ともに、法務大臣による在留管理の対象となります。
社会保障制度における違い
日本で生活する上で、社会保障制度は非常に大切です。特別永住者と永住者で、社会保障の利用に違いはあるのでしょうか。
結論から言うと、多くの場合、 特別永住者と永住者は、国民年金や健康保険といった社会保障制度において、日本国籍者とほぼ同等の扱いを受けます。 これは、日本で安定した生活を送る外国籍の方々が、安心して暮らせるようにするための配慮です。
- 国民皆保険： 原則として、どちらのステータスの方も、日本の健康保険に加入する義務があります。
- 年金制度： 国民年金や厚生年金といった年金制度も、同様に加入・受給の対象となります。
- 生活保護： 経済的に困窮した場合、生活保護の申請も可能です。
国籍や権利における違い
「特別永住者と永住者の違い」を語る上で、国籍や権利に関する点は非常に重要です。まず、 特別永住者も永住者も、日本国籍ではありません。
そのため、以下のような権利には違いがあります。
| 権利 | 特別永住者 | 永住者 | 日本国籍者 |
|---|---|---|---|
| 参政権（選挙権） | × | × | 〇 |
| 公務員になる権利 | ×（一部例外あり） | × | 〇 |
| パスポート | （国籍国のパスポート） | （国籍国のパスポート） | 〇（日本国パスポート） |
特別永住者には、地方参政権（市町村などの一部の選挙で投票できる権利）が認められる場合がありますが、これは永住者には認められていません。
まとめ：どちらも日本社会を支える大切な存在
「特別永住者と永住者の違い」は、その成り立ちや法的な位置づけ、そして一部の権利にありますが、どちらのステータスの方々も、日本で生活し、社会に貢献されている大切な存在です。日本で暮らす上で、これらの違いを理解し、互いを尊重していくことが、より良い共生社会の実現につながるでしょう。