会社を経営していく上で、「執行役員」と「取締役」という言葉を耳にする機会は多いですよね。でも、具体的に何が違うのか、ちょっと混乱してしまうこともあるかもしれません。この記事では、「執行役員と取締役の違い」を、分かりやすく、そして詳しく解説していきます。それぞれの役割や責任範囲を知ることで、会社の仕組みがよりクリアに見えてくるはずですよ！
役割と責任範囲：会社の舵取りと現場の指揮
「執行役員と取締役の違い」を理解する上で、まず大切なのは、それぞれの「役割」と「責任範囲」です。取締役は、会社の「最高意思決定機関」として、会社の方向性を決めたり、重要な戦略を立てたりする役割を担っています。例えるなら、船の「船長」のような存在で、どこへ向かうのか、どんな航路を進むのかといった、大きな決断を下します。 この意思決定が、会社の未来を大きく左右するため、取締役の責任は非常に重いのです。
一方、執行役員は、取締役が決定した方針を実行に移す、「現場の指揮官」のような存在です。具体的な事業の運営や、日々の業務の管理、部下のマネジメントなど、決まった戦略をどうやって実現していくかを考え、実行します。彼らは、事業部長や各部門のトップといった、実務を熟知した人材が選ばれることが多いです。
- 取締役：会社の「羅針盤」となり、進むべき方向を決める。
- 執行役員：決まった航路を、船員を率いて実際に航海する。
このように、取締役が「経営の監督」に重きを置くのに対し、執行役員は「業務の執行」に専念するという点で、両者の役割は明確に分かれています。もちろん、規模の小さな会社では、一人の人が両方の役割を兼ねている場合もありますが、一般的な大企業では、このように分業が進んでいます。
選任方法と任期：誰が、どのように選ばれるのか？
次に、「執行役員と取締役の違い」について、選ばれる方法と任期を見てみましょう。取締役は、株主総会で選任されます。株主は会社のオーナーですから、会社のトップを決める権利を持っているわけです。ですから、株主にとって会社の経営がうまくいっているかどうかは、自分の利益にも直結します。
- 取締役の選任 ：株主総会で決まる。
- 任期 ：通常2年（最長10年まで延長可能）。
執行役員は、取締役会で選任されます。取締役会は、取締役の中から構成される、より専門的な会議体です。執行役員には、会社の事業を実際に動かすための専門知識や経験が求められます。
- 執行役員の選任 ：取締役会で決まる。
- 任期 ：会社によって異なるが、取締役よりも短い場合が多い。
このように、選ぶ主体が異なることで、それぞれが期待される役割の違いが表れています。株主は会社の全体的な方針を、取締役会は具体的な業務執行を、それぞれ最適だと考える人に任せたいと考えているのです。
権限の範囲：どこまで判断できるのか？
「執行役員と取締役の違い」は、その「権限の範囲」にも現れます。取締役は、会社の経営に関する最終的な決定権を持っています。例えば、新しい事業を始めるかどうか、多額の設備投資を行うかどうか、といった、会社の将来を左右するような大きな決定は、取締役会で話し合われ、承認されなければ進められません。
一方、執行役員は、取締役会で決定された方針に基づいて、具体的な業務の執行に関する権限を持ちます。もちろん、その権限は与えられた範囲内でのものであり、それを超えるような大きな決定は、取締役会に相談したり、承認を得たりする必要があります。例えるなら、以下のような違いがあります。
| 取締役 | 執行役員 | |
|---|---|---|
| 権限 | 会社の経営全般に関する最終決定権 | 執行に関する権限（与えられた範囲内） |
つまり、取締役は「OKを出す人」、執行役員は「OKをもらって実行する人」というイメージが近いかもしれません。もちろん、執行役員も現場の責任者として、一定の裁量権は与えられています。
責任の所在：万が一、問題が起きたら？
「執行役員と取締役の違い」を考える上で、避けて通れないのが「責任の所在」です。万が一、会社に損害を与えるような行為があった場合、誰が、どのような責任を負うのでしょうか。
取締役は、株主に対して会社を適切に経営する義務（善管注意義務）を負っています。もし、取締役の過失によって会社が損害を受けた場合、株主代表訴訟などを通じて、取締役個人が損害賠償責任を問われることがあります。
- 取締役の責任 ：会社経営の監督義務違反、善管注意義務違反など。
執行役員も、会社に対して忠実に職務を遂行する義務があります。そのため、執行役員の故意または重過失によって会社に損害を与えた場合、会社に対して損害賠償責任を負う可能性があります。しかし、その責任の範囲は、基本的に「執行」に関するものに限られます。
- 執行役員の責任 ：業務執行における注意義務違反、忠実義務違反など。
- 責任の度合い ：取締役と比べると、経営判断全体への責任というより、個別の業務執行に対する責任が問われる傾向にある。
このように、責任の質と範囲が異なることが、「執行役員と取締役の違い」を理解する上で重要になります。
報酬体系：どうやって給料が決まるの？
「執行役員と取締役の違い」は、報酬の決め方にも表れます。取締役の報酬は、株主総会で決定されることが一般的です。会社の業績や、取締役の貢献度などを考慮して、株主が納得できる水準で決められます。
一方、執行役員の報酬は、取締役会で決定されます。執行役員は、日々の事業運営で具体的な成果を出すことが期待されているため、その成果を反映しやすいような報酬体系になっていることが多いです。例えば、個人の業績や、担当部署の業績がボーナスに大きく影響する、といった仕組みが考えられます。
- 取締役の報酬 ：株主総会で決まる。会社の業績や貢献度を考慮。
- 執行役員の報酬 ：取締役会で決まる。個人の業績や担当部署の成果が反映されやすい。
このように、報酬の決定プロセスや、報酬に反映される要素が異なるのは、それぞれの役割の違いを反映したものです。
まとめ：会社の成長を支える二つの役割
ここまで、「執行役員と取締役の違い」について、役割、選任方法、権限、責任、そして報酬という様々な側面から解説してきました。取締役が会社の「進むべき方向」を決め、執行役員がその「実行」を担う。この二つの役割が、それぞれの専門性を活かし、連携することで、会社は安定的に成長していくことができるのです。どちらか一方だけでは、会社はうまく回りません。この違いを理解することは、私たちが社会で働く上でも、会社という組織を理解する上でも、きっと役に立つはずですよ。