会社のお金の動きを把握する上で、「財務会計」と「管理会計」という言葉を耳にする機会は多いでしょう。しかし、この二つが具体的にどう違うのか、迷ってしまう方もいるかもしれません。本記事では、 財務会計と管理会計の違い を、それぞれの目的や対象者、情報などを分かりやすく解説していきます。
目的と情報提供先の視点
まず、一番大きな違いは、その「目的」と「誰に情報を提供するのか」という点です。財務会計は、主に会社の外部の人たち、例えば株主さんや銀行さん、税務署などに、会社の財政状態や経営成績を正確に伝えることを目的としています。だから、ルールに沿って、誰が見ても同じように理解できるような、客観的な情報を提供する必要があるんです。
一方、管理会計は、会社を経営している内部の人たち、つまり社長さんや各部署のリーダーなどが、より良い経営判断をするための材料を提供することを目的としています。だから、外部の人に伝えるためのルールはありません。むしろ、会社の内情を詳しく、そしてタイムリーに知ることが大切なんです。
まとめると、
- 財務会計： 外部への情報提供、客観性・正確性重視
- 管理会計： 内部での意思決定支援、有用性・速報性重視
情報の種類と作成基準
財務会計で使われる情報は、主に過去の取引に基づいたものです。例えば、去年の売上はいくらだったか、いくら利益が出たか、といった過去の実績が中心になります。そして、これらの情報は、会計基準という厳格なルールに従って作成されます。これにより、どの会社でも同じ基準で比較できるようになっているんです。
対して、管理会計は、過去の実績だけでなく、将来の予測や計画に基づいた情報も扱います。例えば、「来月はどれくらい売上が上がりそうか」「新しい商品を作るのにいくらかかるか」といった、未来のことも含めて考えます。そのため、作成基準は会社ごとに自由に決めることができ、より現場のニーズに合わせた柔軟な情報を作成することができます。
具体的には、
- 財務会計：
- 過去の取引に基づく
- 会計基準というルールに従う
- 代表的なもの：損益計算書、貸借対照表
- 管理会計：
- 過去の実績＋将来の予測
- 会社ごとに自由に作成
- 代表的なもの：予算、原価計算
報告の頻度と詳細度
財務会計の報告は、通常、年に一度（決算時）や、四半期ごとなど、比較的決まった間隔で行われます。これは、外部への情報開示という性質上、一定の期間でまとめて報告することが一般的だからです。報告される情報は、会社全体の財政状態や経営成績をまとめた、比較的大まかなものになります。
一方、管理会計は、経営判断のスピードに合わせて、もっと頻繁に、そして詳細な情報を提供します。例えば、毎日の売上データや、部門ごとのコスト分析など、経営層が必要とする情報を、必要な時にすぐに入手できるようにします。そのため、報告の頻度や内容は、会社や状況によって大きく変わります。
比較してみましょう。
| 項目 | 財務会計 | 管理会計 |
|---|---|---|
| 報告頻度 | 年1回、四半期ごと | 随時、月次、週次など |
| 詳細度 | 会社全体をまとめたもの | 部門別、製品別など詳細 |
対象となる組織と単位
財務会計は、会社全体を一つの単位として捉え、その財政状態や経営成績を把握します。株主や債権者などの外部関係者は、会社全体としての健全性や収益性を知りたいからです。そのため、個々の部門や製品ごとの詳細な情報は、あまり重視されません。
それに対して、管理会計は、会社をさらに細かく、部門ごと、製品ごと、あるいはプロジェクトごとなど、様々な単位で分析します。例えば、「この製品の利益率はどれくらいか」「この部門のコストは適切か」といった、より具体的な課題を見つけるために、詳細な単位での情報が必要になるからです。
組織の単位で考えると、
- 財務会計： 会社全体
- 管理会計： 部門、製品、プロジェクトなど
法的拘束力と任意性
財務会計は、法律や会計基準といった、外部から強制されるルールに基づいて行われます。もし、これらのルールを守らないと、罰則があったり、会社の信頼を失ったりする可能性があります。これは、外部の人々が安心して会社との取引を行えるようにするためです。
一方、管理会計は、法律で定められたものではなく、会社が自主的に行うものです。より効果的な経営のために、各会社が「これは必要だ」「これは役に立つ」と考えた情報を作成し、活用します。だから、管理会計のやり方は、会社によって様々で、自由度が高いのが特徴です。
拘束力という点では、
- 財務会計： 法的拘束力あり
- 管理会計： 法的拘束力なし（任意）
このように、財務会計と管理会計は、それぞれ異なる目的、対象者、情報、そしてルールに基づいて行われています。どちらか一方が優れているというわけではなく、どちらも会社を健全に成長させていくために、欠かせない役割を担っているのです。