MRP発注方式とかんばん方式の違いを徹底解説!

生産管理の世界では、モノをいつ、どれだけ作るか、あるいは仕入れるかを決めるための様々な「発注方式」があります。その中でも代表的なのが、MRP(資材所要量計画)発注方式とかんばん方式です。今回は、この MRP発注方式とかんばん方式の違い について、分かりやすく、そして詳しく解説していきます。

MRP発注方式とかんばん方式の根本的な違い

MRP発注方式とかんばん方式の最も大きな違いは、 「いつ」「何が」「どれだけ」必要になるかを予測して計画を立てるのか 、それとも 「現場でモノが減ったら、それを補うために発注する」という仕組みで運用するのか という点にあります。

MRP発注方式は、将来の需要予測や生産計画に基づいて、必要な部品や材料の量を計算し、あらかじめ発注・生産のタイミングを決めておく「プッシュ型」の考え方です。一方、かんばん方式は、実際にモノが使われたり、生産されたりした分だけ、後工程から指示が来る「プル型」の考え方と言えます。 この「予測して動く」のか「実際のアクションに合わせて動く」のかが、両者の違いを決定づける重要なポイント です。

具体的に見ていきましょう。

  • MRP発注方式 :
    • メリット :
      • 将来の計画に基づいた発注ができるため、大量生産や多品種少量生産など、複雑な生産計画にも対応しやすい。
      • 在庫を最適化しやすく、過剰在庫や欠品を防ぐ効果が期待できる。
    • デメリット :
      • 需要予測の精度に大きく左右される。予測が外れると、在庫過多や欠品の原因になる。
      • システム導入や運用にコストがかかる場合がある。
  • かんばん方式 :
    • メリット :
      • 現場の状況に合わせて柔軟に対応できる。
      • ジャストインタイム(必要なものを、必要な時に、必要なだけ)の実現に貢献し、在庫削減につながる。
    • デメリット :
      • 需要の急激な変動には対応しにくい場合がある。
      • 後工程の遅延が、前工程の停止につながる可能性がある。

MRP発注方式の仕組み

MRP発注方式は、主に以下の3つの情報を使って計算されます。

  1. 親製品の生産計画 : いつ、どれだけの最終製品を作るかという計画です。
  2. 部品表(BOM) : 最終製品を1つ作るために、どのような部品がいくつ必要かを示したリストです。
  3. 在庫情報 : 今、手元にどれだけの部品や材料があるかという情報です。

これらの情報をもとに、MRPシステムは「親製品をいつまでに作るには、この部品がいつ、どれだけ必要か」を逆算し、発注や生産の指示を出します。まるで、未来の計画表を見ながら、必要なものを準備していくイメージです。

以下は、MRP発注方式の計算例を簡単な表で示しています。

部品名 必要量 現在在庫 発注量
部品A 3 100個 30個 70個
部品B 4 50個 10個 40個

かんばん方式の仕組み

かんばん方式は、枚方市にある松下電器(現パナソニック)で考案された、トヨタ生産方式の代表的な手法です。これは、「後工程は、前工程から必要なものを、必要な時に、必要なだけ、かんばん(カード)を使って引き取る」という仕組みです。

具体的には、

  • モノの置き場に「かんばん」が置かれており、
  • 後工程の作業員が、必要なモノをその置き場から取り出すと、
  • 取り出したモノの数だけ、かんばんも一緒に前工程に持っていき、
  • 前工程では、そのかんばんの数だけ、モノを補充する(作る、あるいは仕入れる)

という流れになります。 この「かんばん」が、モノの移動や製造の合図となるのです。

MRP発注方式と foragers 方式の比較

MRP発注方式と foragers 方式(※ここでは、かんばん方式を指すものとします)を比較すると、それぞれの適した状況が分かります。

  • MRP発注方式 :
    • 適した状況 :
      • 製品の種類が多く、部品点数も多い場合。
      • 生産計画が比較的安定している場合。
      • 将来の需要予測が立てやすい場合。
  • かんばん方式 :
    • 適した状況 :
      • 多品種少量生産で、生産ラインが柔軟に変更できる場合。
      • 需要の変動が比較的大きい場合(ただし、急激すぎる変動は難しい)。
      • 工程間のリードタイムが短い場合。

MRP発注方式のメリット・デメリット

MRP発注方式のメリットとデメリットをまとめると、以下のようになります。

  1. メリット :
    • 複雑な部品構成の製品でも、必要な資材を漏れなく、過不足なく管理できる。
    • 将来の計画に基づいて発注するため、計画的な生産・購買が可能になる。
    • 在庫の適正化に役立ち、欠品による生産遅延を防ぐ効果が期待できる。
  2. デメリット :
    • 需要予測の精度が低いと、計画が狂ってしまう。
    • システム導入や運用にコストがかかる場合がある。
    • 計画通りに進まない場合に、柔軟な対応が難しいことがある。

かんばん方式のメリット・デメリット

かんばん方式のメリットとデメリットをまとめると、以下のようになります。

  • メリット :
    • 現場の状況に合わせて、必要なモノだけを補充するため、無駄な在庫が発生しにくい。
    • 工程間の連携がスムーズになり、リードタイムの短縮につながる。
    • シンプルで分かりやすいため、導入しやすい場合がある。
  • デメリット :
    • 需要が急激に変動した場合、対応が遅れる可能性がある。
    • 後工程の遅延が、前工程の停止を招きやすい。
    • 部品点数が多い場合、かんばんの管理が煩雑になることがある。

MRP発注方式と foragers 方式の適用例

それぞれの発注方式が、どのような場面で使われているか、具体的な例を見てみましょう。

MRP発注方式の適用例 :

  • 自動車メーカー: 数万点にも及ぶ部品を組み合わせるため、MRPによって部品の調達計画を緻密に管理しています。
  • 家電メーカー: 多岐にわたる製品ラインナップを持つため、MRPで各製品に必要な部品の所要量を計算しています。

かんばん方式の適用例 :

  • 自動車の組み立てライン: 作業員が部品を引き取るたびに、かんばんが前工程に届き、部品が補充されることで、ジャストインタイム生産を実現しています。
  • 食品工場: 賞味期限のある材料を、必要な量だけ、必要なタイミングで供給するためにかんばん方式が活用されることがあります。

まとめ

MRP発注方式とかんばん方式は、それぞれ異なる考え方に基づいた発注方法です。MRPは「予測」を元にした計画的な管理、かんばん方式は「実際のアクション」に合わせた柔軟な管理が得意です。どちらが良いかは、製品の種類、生産量、需要の変動性など、会社の状況によって異なります。 両者の違いを理解し、自社の状況に最適な方式を選択することが、効率的な生産管理の鍵となります。

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