単式 簿記 と 複式 簿記 の 違い、意外と知らないその実態を徹底解説!

「単式簿記と複式簿記の違いって何?」そう疑問に思ったことはありませんか?実は、これらはビジネスの金銭の流れを記録する方法で、それぞれに得意なことがあります。単式簿記と複式簿記の違いを理解することで、なぜ複式簿記がより多くの場面で使われるのか、その理由が見えてきます。

記録のシンプルさ:単式簿記の基本

単式簿記は、とにかくシンプル!家計簿や個人のお小遣い帳のようなイメージです。お金が入ってきたら「収入」、出ていったらか「支出」と、一つの項目で記録していきます。これは、日々の収支を把握したい個人や、小規模な商店など、複雑な取引が少ない場合に便利です。

例えば、こんな風に記録します。

  • 1月1日:お給料 +10万円
  • 1月5日:食費 -2万円
  • 1月10日:電気代 -5千円

このように、入金と出金をその都度記録していくので、直感的に分かりやすいのが特徴です。 このシンプルさが、単式簿記の最大のメリットと言えるでしょう。

ただし、単式簿記では、取引がお金の動きだけでなく、他の財産にどのような影響を与えたのかまでは分かりにくいのです。例えば、借金が増えたのか、逆に資産が増えたのか、といった全体像を把握するのは難しい場合があります。

取引の全体像を捉える:複式簿記の仕組み

一方、複式簿記は、一つの取引を「二つの側面」から記録するのが特徴です。例えば、お店にお客さんが来て商品を買ってくれた場合、単式簿記では「売上」という収入だけを記録します。しかし、複式簿記では「売上」という収入があったと同時に、その商品の「在庫」が減った、という二つの事実を記録するのです。

この「二つの側面」を記録することで、お金だけでなく、会社が持っている財産(資産)、会社が誰かに払うべきお金(負債)、そして会社の利益(純資産)のバランスが常に保たれるようになっています。これは、まるで天秤のように、常にプラスとマイナスの合計がゼロになるように記録されるイメージです。

複式簿記の基本は、「借方(かりかた)」と「貸方(かしかた)」という二つの勘定科目を使います。それぞれの勘定科目に、取引によって増減した金額を記録していきます。例えば、現金が100円増えたら、借方に「現金」100円、貸方に「売上」100円、というように記録します。

複式簿記で記録された情報は、決算書としてまとめられます。主な決算書には、企業の財政状態を示す「貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)」と、一定期間の経営成績を示す「損益計算書(そんえきけいさんしょ)」があります。これらの決算書を見ることで、企業の全体像や経営状況を詳しく把握することができます。

記録の基本:仕訳と勘定科目

複式簿記の最初のステップは「仕訳(しわけ)」です。これは、日々の取引を借方と貸方に分けて記録すること。例えば、「現金で100円の商品を仕入れた」という取引があった場合、借方に「仕入」100円、貸方に「現金」100円、と記録します。このように、全ての取引を仕訳していきます。

仕訳で使われるのが「勘定科目」です。勘定科目には、現金、預金、売掛金(商品やサービスを提供したが、まだお金を受け取っていないもの)、買掛金(仕入れた商品やサービスの代金をまだ支払っていないもの)、売上、仕入、給料など、様々な種類があります。これらの勘定科目を適切に使い分けることが、正確な記録の鍵となります。

勘定科目は、大きく分けて以下の3つのグループに分けられます。

  • 資産 :会社が持っている財産(現金、建物、備品など)
  • 負債 :会社が将来支払わなければならない義務(借入金、買掛金など)
  • 純資産 :資産から負債を差し引いたもの。会社の本来の財産(資本金、利益など)

これらの勘定科目の増減を、借方・貸方のルールに従って記録していきます。例えば、資産が増えたら借方、減ったら貸方。負債が増えたら貸方、減ったら借方、といった具合です。このルールを覚えることが、複式簿記を理解する上で非常に重要です。

決算書の作成:財務状況の可視化

日々の仕訳を元に、一定期間(通常は1年)の終わりに決算を行い、財務諸表を作成します。複式簿記の最大の強みは、この決算書によって企業の経営状態を詳細に把握できる点です。

主要な決算書として、以下の2つが挙げられます。

  1. 貸借対照表(バランスシート)
    • ある時点での企業の財政状態を表します。
    • 「資産」「負債」「純資産」の3つの項目で構成され、常に「資産 = 負債 + 純資産」という関係が成り立っています。
  2. 損益計算書(プロフィット&ロス)
    • 一定期間の企業の経営成績を表します。
    • 「収益(売上など)」から「費用(売上原価、人件費など)」を差し引いた「利益」を計算します。

これらの決算書を分析することで、企業の儲け具合、借金の多さ、資産の状況などが一目でわかります。これは、経営者だけでなく、投資家や金融機関にとっても、企業を評価する上で非常に重要な情報となります。

両者の比較:どちらがどんな時に役立つ?

単式簿記と複式簿記の違いをまとめると、以下のようになります。

項目 単式簿記 複式簿記
記録方法 一つの側面(収入・支出) 二つの側面(借方・貸方)
複雑さ シンプル 複雑
把握できる情報 日々の収支、現金の増減 財政状態、経営成績、資産・負債・純資産のバランス
主な用途 家計簿、個人事業主の簡易記録 企業の会計、税務申告

単式簿記は、とにかく手軽に記録をつけたい場合に最適です。一方、複式簿記は、より正確で詳細な経営分析を行いたい場合に不可欠となります。

単式簿記のメリット・デメリット

単式簿記の最大のメリットは、その手軽さと分かりやすさです。専門知識がなくても、すぐに始められます。

  • メリット
    • 記録が簡単で、初心者でも理解しやすい
    • 日々の現金収入・支出の把握に役立つ
    • 特別な会計ソフトが不要な場合が多い
  • デメリット
    • 取引の全体像や、資産・負債の増減が把握しにくい
    • 正確な損益計算や、財政状態の分析が難しい
    • 税務申告など、より高度な会計処理には対応できない

複式簿記のメリット・デメリット

複式簿記は、その複雑さゆえに初期の学習コストはかかりますが、得られる情報量は圧倒的に多いです。

  • メリット
    • 企業の財政状態や経営成績を正確に把握できる
    • 資産、負債、純資産のバランスが分かり、経営判断に役立つ
    • 税務申告など、法的に必要な会計処理に対応できる
    • 外部への情報開示(投資家など)に不可欠
  • デメリット
    • 記録が複雑で、専門知識が必要
    • 記録に時間がかかり、手間がかかる
    • 会計ソフトの導入など、初期投資が必要な場合がある

どちらを選ぶべきか?

結局のところ、単式簿記と複式簿記のどちらを選ぶべきかは、その目的によって決まります。

  1. 個人のお金管理や、ごく小規模な個人事業
    • 日々の収支を把握したいだけであれば、単式簿記で十分な場合が多いです。
    • 家計簿アプリやスプレッドシートで簡単に記録できます。
  2. 法人や、ある程度の規模の個人事業
    • 正確な経営分析、資金繰りの把握、税務申告のためには、複式簿記が必須となります。
    • 将来的な事業拡大を見据えるなら、最初から複式簿記で記録することがおすすめです。

迷った場合は、税理士などの専門家に相談してみるのも良いでしょう。ご自身の事業内容や目的に合った方法を選ぶことが大切です。

単式簿記と複式簿記の違いは、記録の深さと、それによって得られる情報の質にあります。日々の生活のお金管理なら単式簿記、ビジネスの成長と正確な状況把握には複式簿記。それぞれの特徴を理解して、ご自身の状況に合った会計方法を選んでいきましょう。

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