「MRI」と「MRA」、どちらも医療現場でよく耳にする言葉ですが、具体的に何が違うのでしょうか?実は、MRIとMRAの違いは、検査で「何を見ているか」にあります。この二つの検査の違いを理解することで、ご自身の検査がなぜ行われるのか、そしてどのような情報が得られるのかがより明確になるはずです。この記事では、MRIとMRAの違いをわかりやすく解説していきます。
MRIの基本:体の内部を詳細に映し出す!
MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像法)は、強力な磁場と電波を使って、体の内部の断層画像を撮影する検査です。まるで、体の内部をスライスしたかのような、とても詳しい写真を見ることができます。骨や筋肉、脳、内臓など、体の様々な部分の組織の状態を調べるのに役立ちます。
MRIのすごいところは、放射線を使わないという点です。そのため、妊娠中の方でも比較的安全に検査を受けることができます(ただし、担当医の判断によります)。また、撮影する条件を変えることで、病気の種類によって見え方が変わることもあります。例えば、脳のMRIでは、:
- 脳腫瘍
- 脳梗塞
- 脳出血
といった病気の有無や、その広がりなどを把握するのに非常に有効です。 MRIは、体の内部構造を詳細に把握するための基本的な検査と言えるでしょう。
MRIで得られる画像は、白、黒、そしてその中間の灰色といった濃淡で表現されます。この濃淡の違いが、組織の種類や病気による変化を示しています。
| 白く見えるもの | 脂肪や出血したばかりの血液など |
| 黒く見えるもの | 空気や骨、新しい脳梗塞など |
| 灰色に見えるもの | 筋肉や脳、正常な血液など |
MRAの役割:血管の「流れ」に注目!
一方、MRA(Magnetic Resonance Angiography:磁気共鳴血管造影)は、MRIの技術を応用して、血管の状態を詳しく調べる検査です。特に、血管の形や、血液の流れに焦点を当てて画像を作成します。MRAは、MRIと名前は似ていますが、見ているものが少し違うのです。
MRAでは、造影剤という薬を注射して検査をすることもあります。この造影剤は、血管の中を流れる血液をよりはっきりと写し出す効果があります。それにより、:
- 血管の狭くなっている部分
- 血管が詰まっている部分
- 血管がコブのようになっている部分(脳動脈瘤)
などを、より鮮明に発見することができます。MRAは、脳卒中の原因となる病気や、手足の血管の病気などを調べるのに役立ちます。
MRAでは、血管がまるで地図のように描出されます。これにより、:
- 血管の走行(どこを通っているか)
- 血管の太さ
- 血管の枝分かれ
といった情報を得ることができます。これは、血管の病気の診断や、手術の計画を立てる上で非常に重要です。
MRIとMRAの主な違い
MRIとMRAの最も大きな違いは、検査の目的にあります。MRIは、体の内部の組織全体を詳細に調べるのに対し、MRAは、血管とその中の血液の流れに特化しています。例えるなら、MRIは「体の地図全体」をくまなく調べるのに対し、MRAは「道路(血管)とその交通量(血流)」に注目するようなものです。
この目的の違いから、検査の進め方や、得られる情報にも違いがあります。
- 対象:
- MRI:脳、脊髄、内臓、筋肉、骨など、体の様々な組織
- MRA:血管(脳血管、心臓血管、手足の血管など)
- 主な目的:
- MRI:組織の異常(腫瘍、炎症、変性など)の発見・評価
- MRA:血管の狭窄、閉塞、動脈瘤、奇形などの発見・評価
どのような時にMRIとMRAが使われる?
MRIは、幅広い疾患の診断に用いられます。例えば、頭痛やめまい、手足のしびれなどの症状がある場合に、脳や脊髄の異常がないか調べるために行われます。また、関節の痛みや腫れ、腹部の不快感などの原因を探るためにも使われます。
MRAは、特に血管系の病気が疑われる場合に使われます。例えば、:
- 脳卒中(脳梗塞、脳出血)
- くも膜下出血
- 閉塞性動脈硬化症(足の血管が狭くなる病気)
などの診断や、これらの病気のリスクを調べるために行われます。また、手術前に血管の状態を確認するためにも重要です。
検査を受ける上での注意点
MRIもMRAも、磁場を利用するため、検査室には金属を持ち込むことができません。ペースメーカーなどの体内金属がある場合は、事前に必ず医師や技師に伝えてください。
また、検査中は体を動かさないようにする必要があります。じっとしていることが難しいお子さんや、不安な方には、鎮静剤が使われることもあります。検査時間が数十分かかることもありますので、リラックスして臨むことが大切です。
MRAで造影剤を使用する場合は、アレルギー反応が出ることが稀にあります。造影剤に関するアレルギーの有無なども、事前に確認されます。
MRIとMRA、どちらの検査が必要か?
MRIとMRAのどちらの検査が必要かは、患者さんの症状や、医師が疑っている病気によって決まります。例えば、:
- 脳の病気で、脳の組織そのものの異常(脳腫瘍など)を詳しく見たい場合: MRI
- 脳の病気で、脳の血管の詰まりや破裂(脳卒中など)が疑われる場合: MRA(場合によってはMRIと組み合わせて行うこともあります)
ご自身の症状や、どのような検査が行われるのかについては、遠慮なく担当の医師に質問するようにしましょう。
まとめ
MRIとMRAは、どちらも磁気共鳴を利用した検査ですが、その目的と、見ている対象が異なります。MRIは体の内部組織を詳細に、MRAは血管とその血流を重点的に調べます。それぞれの検査は、病気の診断や治療方針の決定に不可欠な情報を提供してくれます。この違いを理解することで、ご自身の検査について、より深く理解することができるはずです。