1000base t と 1000base tx の 違いを徹底解説!知っておきたいイーサネット規格

ネットワークの世界には、速さや性能を表す色々な規格があります。その中でも、「1000BASE-T」と「1000BASE-TX」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?今回は、この「1000BASE-T」と「1000BASE-TX」の「違い」について、分かりやすく解説していきます。どちらもギガビットイーサネットという速い通信規格ですが、実はいくつかの重要な違いがあるのです。

規格の基本と「1000BASE-T」と「1000BASE-TX」の比較

まず、イーサネット規格というのは、コンピューター同士がデータをやり取りするためのルールみたいなものです。1000BASE-Tと1000BASE-TXは、どちらも「1秒間に1000メガビット(約1ギガビット)」という速さで通信できる「ギガビットイーサネット」という仲間です。でも、この二つには、使われるケーブルの種類や、通信の仕組みに違いがあります。 この違いを理解することは、快適なネットワーク環境を構築するためにとても大切です。

  • 1000BASE-T: 現在、最も一般的に使われている規格です。
  • 1000BASE-TX: 1000BASE-Tよりも少し古い規格で、使われる機会は減っています。

具体的に、どんな違いがあるのか見ていきましょう。

ケーブルの種類による違い

1000BASE-Tと1000BASE-TXの最も大きな違いの一つは、使用できるケーブルの種類です。1000BASE-Tは、より一般的な「カテゴリ5e」以上のLANケーブルで通信できます。一方、1000BASE-TXは、より高性能な「カテゴリ6」以上のLANケーブルが推奨されています。

つまり、

  1. 1000BASE-T: カテゴリ5e、カテゴリ6、カテゴリ6aなど、幅広いケーブルに対応。
  2. 1000BASE-TX: カテゴリ6、カテゴリ6aなど、より高品質なケーブルが必要。

というわけです。お家やオフィスにあるLANケーブルが、どちらの規格に対応しているか確認するのも良いでしょう。

配線方法の効率性

通信の仕組みにも違いがあります。1000BASE-Tは、4組のツイストペアケーブル(より合わされた電線)をすべて使って、送受信を同時に行います。これにより、少ない本数のケーブルで高速通信を実現しています。

一方、1000BASE-TXは、2組のツイストペアケーブルを送信用、残りの2組を受信用と分けて使います。これは、よりシンプルでわかりやすい配線方法ですが、4組すべてを使う1000BASE-Tに比べると、ケーブルの効率は少し劣ると言えるでしょう。

比較表でまとめると、以下のようになります。

規格 使用するツイストペア数 通信方式
1000BASE-T 4組 送受信同時
1000BASE-TX 4組 (2組送信用、2組受信用) 送信用・受信用分離

互換性と普及状況

1000BASE-Tは、現在、ほとんどのコンピューターやネットワーク機器に標準で搭載されています。そのため、特別な設定なしに、多くの環境でギガビット通信を利用できます。逆に、1000BASE-TXは、少し前の機器や、特定の用途で使われることが多く、現在では1000BASE-Tが主流となっています。

つまり、

  • 1000BASE-T: 非常に高い互換性と普及率。
  • 1000BASE-TX: 普及率は低め。

ということです。新しい機器を購入する際は、ほとんどが1000BASE-Tに対応していると考えて良いでしょう。

通信速度と安定性

1000BASE-Tと1000BASE-TXは、どちらも1Gbps(1秒間に1ギガビット)の通信速度を理論上は出せます。しかし、実際の通信速度や安定性には、わずかな違いが生じることがあります。これは、先ほど触れた配線方法や、使用するケーブルの品質にも影響されます。

例えば、1000BASE-Tは、4組のペアを効率的に使うことで、ノイズ(信号の乱れ)に強くなるように設計されています。そのため、多少ケーブルが長かったり、ノイズが多い環境でも、安定した通信を維持しやすい傾向があります。

一方、1000BASE-TXは、よりシンプルな信号処理を行うため、高品質なケーブルとノイズの少ない環境が整っていれば、非常に高速で安定した通信が可能です。しかし、ケーブルの品質が低い場合や、ノイズが多い環境では、通信速度が低下したり、不安定になったりする可能性も考えられます。

まとめると、

  1. 通信速度: 理論上は同じ1Gbps。
  2. 安定性: 1000BASE-Tは、より幅広い環境で安定しやすい。1000BASE-TXは、高品質な環境で高い安定性を発揮。

となります。

ノイズ対策の違い

イーサネット通信において、ノイズは通信速度や安定性を低下させる大敵です。1000BASE-Tと1000BASE-TXでは、このノイズに対する考え方や対策に違いがあります。

1000BASE-Tは、4組のツイストペアケーブルをすべて使い、送受信を同時に行うことで、ノイズの影響を打ち消し合うような仕組みを持っています。これは「全二重通信」と呼ばれ、効率的なデータ転送を可能にしています。さらに、各ペアの信号を調整することで、クロストーク(隣のペアに信号が漏れること)を抑制し、ノイズに強くなっています。

対して、1000BASE-TXは、送信用と受信用でペアを分けるため、1000BASE-Tのような高度なノイズキャンセリング機能は持っていません。そのため、より高品質なケーブルを使用し、外部からのノイズの影響を最小限に抑えることが重要になります。例えば、シールド付きのLANケーブル(STP)を使用するなど、物理的なノイズ対策が効果的です。

以下に、ノイズ対策に関するポイントをまとめました。

  • 1000BASE-T: 信号処理によるノイズ低減。
  • 1000BASE-TX: 高品質ケーブルや物理的なシールドによるノイズ対策がより重要。

最大伝送距離

LANケーブルでデータを送れる距離にも、規格によって限界があります。1000BASE-Tと1000BASE-TXは、どちらも一般的に最大100メートルまで通信可能です。この点においては、大きな違いはありません。

しかし、これはあくまで理論上の最大距離であり、実際には使用するケーブルの品質や、途中に接続される機器(スイッチングハブなど)の性能によって、安定して通信できる距離は変わってきます。

たとえば、

  1. 1000BASE-T: カテゴリ5e以上のケーブルであれば、標準的に100mまで対応。
  2. 1000BASE-TX: カテゴリ6以上のケーブルを使用することで、100mまでの安定した通信が期待できる。

といったイメージです。より長距離の配線が必要な場合は、特殊な機器やケーブルが必要になることもあります。

消費電力と発熱

ネットワーク機器が動作する際には、電力を消費し、熱を発します。1000BASE-Tと1000BASE-TXでも、その消費電力や発熱量に違いが見られることがあります。

1000BASE-Tは、4組のツイストペアケーブルを効率的に利用する一方で、信号処理が複雑になるため、1000BASE-TXに比べてわずかに消費電力が高くなる傾向があります。特に、大量のデータを送受信するような、高負荷な状況では、その差が顕著になることがあります。

しかし、近年の省電力技術の進歩により、その差は小さくなってきています。また、発熱量についても、機器自体の設計や冷却性能に大きく依存するため、規格だけで一概に判断することは難しいです。

覚えておきたいポイントは以下の通りです。

規格 消費電力(傾向) 発熱(傾向)
1000BASE-T やや高め やや高め
1000BASE-TX やや低め やや低め

ただし、これはあくまで一般的な傾向であり、個々の機器によって異なります。

現在主流の規格とその理由

先述したように、現在、家庭やオフィスで最も一般的に利用されているギガビットイーサネット規格は1000BASE-Tです。その理由はいくつかありますが、最大の要因は「互換性の高さ」と「ケーブルの汎用性」にあります。

1000BASE-Tは、比較的安価で入手しやすいカテゴリ5e規格のLANケーブルでも、ギガビット通信を実現できます。これは、多くの既存のネットワーク環境を、大きなコストをかけずにアップグレードできることを意味します。また、ほとんどのネットワーク機器に標準搭載されているため、機器の選定や接続も容易です。

一方、1000BASE-TXは、より高性能なカテゴリ6以上のケーブルを必要とするため、初期投資が大きくなる傾向があります。また、普及率の低さから、対応している機器も限られます。

これらの理由から、総合的に見て、1000BASE-Tが現在の主流規格として広く普及しています。

どちらを選ぶべきか?

では、実際にネットワーク環境を構築する際に、どちらの規格を選ぶべきでしょうか?基本的には、特別な理由がない限り、「1000BASE-T」を選ぶのがおすすめです。

その理由は、

  • 汎用性: ほとんどの機器で利用でき、ケーブルも手に入りやすい。
  • コストパフォーマンス: 既存のケーブルを流用できる場合も多く、導入コストを抑えられる。
  • 安定性: 幅広い環境で安定した通信が期待できる。

という点です。もし、既存のネットワーク機器が1000BASE-TXにしか対応していない、あるいは、最高レベルの安定性と性能を求めるために、最新のカテゴリ6a以上のケーブルと機器を導入するのであれば、1000BASE-TXも選択肢に入りますが、一般的ではありません。

新規でネットワークを構築するなら、迷わず1000BASE-T対応の機器と、カテゴリ5e以上のLANケーブルを選ぶと良いでしょう。

結論として、1000BASE-Tと1000BASE-TXの「違い」は、主にケーブルの種類、配線方法、そして普及状況にあります。どちらもギガビット通信が可能ですが、現代においては1000BASE-Tがより一般的で、幅広い環境で利用されています。これらの違いを理解して、ご自身のネットワーク環境に合った規格を選ぶことが、快適なインターネットライフへの第一歩となるでしょう。

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