「雇用保険」と「国民健康保険」、どちらも日本で暮らす上で大切な社会保険ですが、その役割や加入条件、受けられる給付には違いがあります。ここでは、「雇用保険 と 国民 健康 保険 の 違い」を分かりやすく解説し、それぞれの制度が私たちの生活にどう役立つのかを見ていきましょう。
雇用保険と国民健康保険:目的と加入者の違い
まず、一番大きな違いはその「目的」と「誰が加入するのか」という点です。雇用保険は、お仕事をしている人が、万が一、病気やケガで働けなくなったり、失業したりしたときに、生活を支えるためのお金(給付金)を受け取れるようにするための制度です。つまり、 お仕事をしている人、または過去にお仕事をしていて保険料を納めていた人が対象 となります。
一方、国民健康保険は、お仕事をしているかどうかに関わらず、日本に住んでいるすべての人(会社の健康保険に加入している人などを除く)が、病気やケガをしたときに医療費の負担を軽くするために加入する保険です。国民健康保険の加入者は、以下のような方々です。
- 自営業やフリーランスの方
- 年金受給者の方
- パートやアルバイトで、会社の健康保険に加入していない方
- 退職して、会社の健康保険の任意継続をしていない方
このように、雇用保険は「働くこと」に焦点を当てた保険であり、国民健康保険は「医療を受けること」に焦点を当てた保険と言えます。それぞれの保険料の支払い方法や、受けられる給付内容も、この目的の違いによって異なってきます。表にまとめると、より分かりやすいでしょう。
| 保険の種類 | 主な目的 | 主な加入者 |
|---|---|---|
| 雇用保険 | 失業や休業時の生活保障 | 会社員、パート・アルバイトなど |
| 国民健康保険 | 病気やケガの際の医療費負担軽減 | 自営業者、年金受給者、学生など |
雇用保険の給付内容:もしもの時のセーフティネット
雇用保険の最も代表的な給付は「失業給付」(基本手当)です。これは、会社都合や自己都合で仕事を辞めた場合に、次の仕事が見つかるまでの間、生活を支援するために一定期間、給料の一部が支給される制度です。 失業給付を受け取るためには、一定期間、雇用保険に加入していたことや、求職活動をしていることなどの条件があります。
失業給付以外にも、雇用保険には以下のような給付があります。
- 育児休業給付金:育児のために仕事を休む期間の生活を支えます。
- 介護休業給付金:家族の介護のために仕事を休む期間の生活を支えます。
- 傷病手当金(健康保険の制度ですが、雇用保険とも関連がある場合があります):病気やケガで働けない期間の生活を支えます。
これらの給付は、突然の出来事によって収入が途絶えてしまった時の、まさに「セーフティネット」となります。日頃から雇用保険に正しく加入し、保険料を納めていることが、これらの保障を受けるための大前提となります。
国民健康保険の給付内容:医療費の負担を減らす
国民健康保険の主な役割は、病気やケガで病院にかかったときの医療費の負担を軽減することです。加入者は、医療費の「一部」を窓口で支払えば、残りの「大部分」は国民健康保険が負担してくれます。例えば、3割負担で済むというのは、この国民健康保険のおかげなのです。
国民健康保険には、医療費の負担を軽減する以外にも、以下のような給付があります。
- 出産育児一時金:お子さんが生まれたときに、まとまったお金が支給されます。
- 葬祭費:ご家族が亡くなったときに、葬儀にかかる費用の一部が支給されます。
- 高額療養費制度:1ヶ月の医療費が高額になった場合に、上限額を超えた分が払い戻されます。
これらの制度があることで、急な病気や出産、葬儀など、予期せぬ出費に慌てずに済むようになります。国民健康保険は、すべての国民の健康と安心を守るための、非常に重要な社会保険制度です。
保険料の決まり方:どうやって計算されるの?
「雇用保険」と「国民健康保険」では、保険料の決まり方も異なります。雇用保険の保険料は、お給料(基本給や各種手当など)の額を基にして計算され、加入者(従業員)と会社がそれぞれ一部ずつ負担するのが一般的です。つまり、お給料が高い人ほど、雇用保険料も高くなります。
一方、国民健康保険の保険料は、お住まいの市区町村によって計算方法が異なりますが、基本的には以下の3つの要素で決まります。
- 加入者の「所得」:所得が高いほど、保険料も高くなります。
- 加入者の「人数」:世帯の人数が多いほど、保険料の総額は高くなります。
- 加入者の「医療費」:その市区町村全体の医療費など、地域によっても影響を受けます。
国民健康保険料の計算は、世帯ごとに合算して決定されることが多いです。また、所得が低い世帯や、特別な事情がある世帯に対しては、保険料の減額や免除の制度が設けられている場合もあります。
加入手続き:どこで、どうやって手続きするの?
雇用保険に加入する手続きは、通常、会社が従業員を雇用した際に行います。自分で特別な手続きをする必要はなく、会社がハローワーク(公共職業安定所)に届け出をしてくれます。もし、アルバイトやパートで雇用保険の加入条件を満たしているのに、会社が手続きをしてくれない場合は、自分でハローワークに相談することも可能です。
国民健康保険の加入手続きは、お住まいの市区町村の役場で行います。具体的には、以下のような場合に手続きが必要です。
- 市町村の国民健康保険に新しく加入するとき(例:自営業になった、会社を辞めたなど)。
- 世帯に異動があったとき(例:結婚した、子どもが生まれたなど)。
- 他の健康保険に加入していた人が、国民健康保険に加入するとき。
手続きには、国民健康保険被保険者証(保険証)が発行されるとともに、国民健康保険料の通知書が届きます。国民健康保険は、加入義務がある制度なので、期限内に忘れずに手続きを行いましょう。
給付を受けるための条件:どんな時に受け取れる?
雇用保険の給付を受けるためには、いくつかの条件があります。例えば、失業給付を受け取るためには、原則として、離職日以前2年間に、被保険者期間が12ヶ月以上あることが必要です(自己都合退職の場合は、離職日以前2年間に被保険者期間が24ヶ月以上必要となる場合もあります)。また、求職活動を積極的に行っていることも条件となります。
国民健康保険の給付を受けるための条件は、比較的シンプルです。病気やケガで医療機関を受診し、保険証を提示すれば、保険給付を受けることができます。ただし、保険料を滞納している場合や、故意に病気やケガをした場合など、一部例外もあります。高額療養費制度や出産育児一時金などの給付を受けるためには、別途申請が必要な場合があります。
まとめ:知っておくことで安心な社会生活
「雇用保険 と 国民 健康 保険 の 違い」は、それぞれの目的や加入対象、給付内容にあります。雇用保険は、働く人の「働くこと」を支えるための保険であり、国民健康保険は、すべての人の「健康」を支えるための保険です。どちらも、私たちが安心して生活を送る上で欠かせない、大切な社会保険制度です。
それぞれの制度の仕組みや、いざという時に受けられる給付について理解しておくことは、将来の安心につながります。もし、ご自身の状況や、これらの保険制度についてさらに詳しく知りたい場合は、会社の総務部、ハローワーク、またはお住まいの市区町村の役場に相談してみることをお勧めします。