「承知しました」と「了解しました」、どちらも相手の言葉や指示を理解したときに使う言葉ですが、実はニュアンスが少し違います。 この「承知しました」と「了解しました」の違いを正しく理解することは、ビジネスシーンでの円滑なコミュニケーションにおいて非常に重要です。 今回はこの二つの言葉の使い分けについて、分かりやすく解説していきます。
「承知しました」はへりくだる気持ちを表す
「承知しました」は、「承知する」という言葉を謙譲語にした形です。これは、相手の依頼や指示を「確かに受け止めました。それに対して、自分がお引き受けします」という気持ちを表すときに使われます。「承知しました」と言うことで、相手への敬意や、その指示を真摯に受け止めている姿勢を示すことができます。
具体的には、以下のような場面で使われることが多いです。
- 上司からの指示を受けたとき
- お客様からの要望を聞いたとき
- 自分よりも目上の方からの依頼を請けるとき
例えば、「この資料、明日までに作成をお願いします」と言われたときに、「承知しました。明日までに作成いたします。」と返答することで、相手は「ちゃんと仕事をしてくれるんだな」と安心します。
「承知しました」が持つ「へりくだる」というニュアンスは、相手への敬意をより強く示すことができます。そのため、ビジネスシーンで相手に失礼なく、かつ丁寧に対応したい場合には、「承知しました」を選ぶのが一般的です。
「了解しました」は対等な関係での理解を示す
一方、「了解しました」は、「了解する」という言葉を丁寧にした形です。「了解する」は、相手の言ったことを「理解した」「道理をわきまえた」という意味合いが強い言葉です。そのため、「了解しました」は、相手の指示や内容を「理解しましたよ」という事実を伝えるニュアンスが強くなります。
「了解しました」を使う場面としては、以下のようなものが考えられます。
- 同僚や部下とのやり取り
- 指示の内容が明確で、ただ確認したい場合
- 情報共有を受けたとき
例えば、同僚から「この会議、10時からだけど、資料は机の上に置いとくね」と言われたときに、「了解しました。ありがとうございます。」と返すと、自然な会話になります。
ここで表にまとめてみましょう。
| 言葉 | ニュアンス | 使う相手 |
|---|---|---|
| 承知しました | へりくだる、お引き受けする | 目上の方、お客様 |
| 了解しました | 理解した、確認した | 同僚、部下、対等な関係 |
「承知しました」と「了解しました」の使い分け:具体的な例
では、もう少し具体的な場面で、どのように使い分けるのかを見ていきましょう。「承知しました」と「了解しました」の違いは、相手との関係性や、その指示内容に対する自分のスタンスによって変わってきます。
例えば、上司から「このプロジェクトの件、来週中に報告書をまとめておいて」と指示されたとします。
- 「承知しました。来週中に報告書をまとめます。」
- 「了解しました。来週中に報告書をまとめます。」
この場合、上司への返答としては、「承知しました」の方がより丁寧で、指示をきちんと受け止めて実行する意思表示になります。一方、「了解しました」でも間違いではありませんが、少し事務的な響きになり、敬意の度合いが弱まる可能性があります。
次に、同僚から「今日のランチ、〇〇(お店の名前)でどう?」と誘われた場合。
- 「了解しました!行きましょう!」
- 「承知しました。行きましょう。」
この場合は、「了解しました」の方が自然な会話になります。「承知しました」を使うと、少し堅苦しい印象を与えかねません。
さらに、お客様から「この商品、もう少し安くなりませんか?」と相談された場合。
| NGな返答 | 良い返答 |
|---|---|
| 「了解しました。」(対応できるかどうかの確認になっていない) | 「承知いたしました。担当者に確認いたします。」 |
お客様からの要望に対しては、まず「承知いたしました」と受け止め、その上で対応策を伝えるのがマナーです。
「承知しました」のさらに深い意味合い
「承知しました」という言葉には、単に「分かりました」という意味だけでなく、相手の意向や状況を「汲み取って」「理解した上で」「責任を持って対応する」というニュアンスが含まれています。そのため、ビジネスシーンにおいて、相手に安心感を与えるための重要なクッション言葉とも言えるでしょう。
例えば、
- 「ご依頼の件、承知いたしました。〇〇(担当者名)に引き継ぎます。」
- 「ご要望の件、承知いたしました。納期については改めてご連絡いたします。」
- 「ご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご承知おきください。」
このように、「承知しました」は、相手の意図を理解し、それに対してどう行動するかまでを含んだ返答として使われることが多いのです。
「了解しました」の本来の使われ方
「了解しました」は、本来、相手からの「指示」や「説明」の内容を「理解した」という事実を伝える際に使われる言葉です。例えば、会議での決定事項や、業務の進め方などの「理解」を伝える場面で有効です。
以下のような場面が考えられます。
- 「今回のプロジェクトの目標値について、了解しました。その目標達成に向けて進めます。」
- 「先ほどの会議の議事録の内容、すべて了解しました。」
- 「このマニュアルの通りに進めれば良いのですね。了解しました。」
ただし、最近では「了解しました」を「承知しました」と同じように使う人も増えています。しかし、ビジネスの場においては、やはり「承知しました」の方がより丁寧で、相手に好印象を与えると考えられます。
「承知しました」と「了解しました」の使い分け:さらに具体例
ここでは、さらに具体的なシーンで、どのように使い分けるのが適切かを見ていきましょう。迷ったときは、「より丁寧さを優先する」という考え方も大切です。
例えば、上司から「この資料、至急で修正してほしい」と言われた場合。
- 「承知しました。すぐに修正いたします。」
- 「了解しました。すぐに修正します。」
この場合、「承知しました」の方が、指示を真摯に受け止め、迅速に対応する姿勢が伝わります。
次に、取引先からのメールで、納期変更の連絡があった場合。
- 「納期変更の件、承知いたしました。ご一報いただきありがとうございます。」
- 「納期変更の件、了解しました。ご一報ありがとうございます。」
取引先に対しては、常に丁寧な言葉遣いが求められるため、「承知いたしました」が適しています。
さらに、チーム内での情報共有で、同僚が「この資料、共有フォルダに入れといたよ」と言ってきた場合。
| NGな返答 | 良い返答 |
|---|---|
| 「承知しました。」(少し大げさな印象) | 「了解しました。確認します。」 |
このように、相手との関係性や、伝えたいニュアンスによって、適切な言葉を選ぶことが大切です。
「承知いたしました」は「承知しました」のより丁寧な形
「承知いたしました」は、「承知しました」をさらに丁寧にした形です。「いたしました」は、「しました」の謙譲語である「いたす」の丁寧語にあたります。そのため、「承知いたしました」は、目上の方やお客様に対して、より一層の敬意を表したい場合に用いられます。
具体的には、
- 非常に重要な依頼を受けたとき
- 相手への感謝の気持ちを強く伝えたいとき
- フォーマルな場面での返答
などで使用されます。例えば、「この度は、大変貴重なご依頼をいただき、誠にありがとうございます。承知いたしました。責任を持って対応させていただきます。」といった使い方ができます。
「拝承いたしました」はさらに格が高い表現
「拝承いたしました」は、「承知いたしました」よりもさらに格の高い、非常に丁寧な表現です。「拝」という言葉が付くことで、相手の言葉や依頼を「恐れ多くも拝受する」といった、深い敬意と謙虚さを示します。
「拝承いたしました」が使われるのは、
- 非常に厳しい条件の依頼を受けたとき
- 長年お世話になっている方からの依頼
- 特別な場面での返答
など、限られた場面になります。日常的なビジネスシーンで頻繁に使う表現ではありませんが、知っておくと、より高度な敬語表現を使いこなすことができるでしょう。
例えば、:
| 場面 | 表現 |
|---|---|
| 通常の指示 | 承知しました |
| 丁寧な依頼 | 承知いたしました |
| 特別な依頼 | 拝承いたしました |
「承知しました」「了解しました」という言葉の使い分けは、相手への敬意や、その場の状況を理解しているかどうかが伝わる大切なポイントです。どちらの言葉を使うべきか迷ったときは、相手との関係性や、伝えたいニュアンスを考えながら、より丁寧な方を選ぶと間違いがないでしょう。これらの使い分けをマスターして、ビジネスシーンでのコミュニケーションをさらに円滑に進めましょう。