発達 障害 と ADHD の 違い:知っておきたい基本をわかりやすく解説!

「発達障害」と「ADHD」、これらの言葉を耳にすることは多いですが、具体的に何が違うのか、しっかり説明できますか? 実は、ADHDは発達障害の一種なんです。この違いを理解することは、自分自身や周りの人をより深く理解するため、そして適切なサポートを見つけるためにとても大切です。ここでは、発達障害とADHDの違いを、わかりやすく解説していきます。

発達障害の全体像とADHDの位置づけ

まず、「発達障害」というのは、脳の発達の特性によって、コミュニケーションや対人関係、行動などに特徴が見られる状態の総称です。生まれつきのもので、病気のように治るものではなく、その人らしい生き方を見つけていくことが大切になります。この発達障害という大きな枠の中に、ADHD(注意欠如・多動症)が含まれているのです。

つまり、ADHDは発達障害というカテゴリーの中の一つであり、すべてが同じではありません。発達障害には、ADHDの他に、自閉スペクトラム症(ASD)や学習障害(LD)なども含まれます。それぞれの特性は異なるため、混同せず、それぞれの違いを理解することが重要です。

発達障害とADHDの違いを理解する上で、以下の点がポイントになります。

  • 発達障害は包括的な用語であること。
  • ADHDは発達障害の代表的なものの一つであること。
  • それぞれに異なる特性があること。

これらの違いを把握することが、より正確な理解への第一歩となります。

ADHDの主な特性:不注意・多動性・衝動性

ADHDの人は、大きく分けて「不注意」「多動性」「衝動性」という3つの特性を持っています。これらの特性の現れ方や強さは人によって様々で、大人になってから気づく人も少なくありません。

不注意とは、例えば、

  1. 集中力が続かない
  2. 忘れ物が多い
  3. 指示を最後まで聞けない
  4. 物事に順番に取り組むのが苦手
といったことがあります。周りの人から見ると「ぼーっとしている」「やる気がない」ように見えることもありますが、本人は集中しようと努力していても、それが難しいのです。

多動性とは、じっとしていられない、そわそわしてしまう、落ち着きがないといった状態です。子供の頃は特に顕著ですが、大人になっても、足をもじもじさせたり、頻繁に席を立ったりといった形で現れることがあります。

衝動性とは、思いついたことをすぐに行動に移してしまう、順番を待てない、相手の話を遮ってしまうといった傾向です。後先を考えずに行動してしまうため、トラブルにつながることもあります。

自閉スペクトラム症(ASD)との違い

発達障害の中でも、ADHDとよく比較されるのが自閉スペクトラム症(ASD)です。ASDの人は、対人関係やコミュニケーションに困難を抱えたり、特定の物事への強いこだわりや限定された興味を持つといった特性があります。

ASDの特性は、以下のようなものが挙げられます。

  • 相手の気持ちや意図を理解するのが難しい
  • 視線が合いにくい、またはそらしがち
  • 決まった手順やルーティンを好む
  • 言葉の裏や比喩を理解するのが苦手

ADHDの人が「じっとしていられない」「忘れ物が多い」といった「行動」の特性が目立ちやすいのに対し、ASDの人は「コミュニケーション」や「興味・関心」の面で特徴が見られることが多いです。

ただし、これらの特性は明確に分けられるものではなく、ADHDとASDの両方の特性を併せ持つ人もいます。このことを「併存」と言います。

学習障害(LD)との違い

学習障害(LD)は、知的発達に遅れはないものの、「読む」「書く」「計算する」といった特定の学習能力に著しい困難がある状態です。ADHDやASDとは異なり、脳の機能的な問題が学習に影響を与えます。

学習障害の主な種類は以下の通りです。

  1. 読字障害(ディスレクシア): 文字を読むことに困難がある。
  2. 書字障害(ディスグラフィア): 文字を書くことに困難がある。
  3. 算数障害(ディスカルキュリア): 計算や数の概念を理解することに困難がある。

例えば、ADHDの人が不注意から宿題を間違えるのとは違い、LDの人は、たとえ集中していても、文字を正しく認識できなかったり、計算のルールが理解できなかったりします。

ADHDとLDは併存することもあります。例えば、ADHDの不注意さから授業についていけず、結果的に学習が遅れることもありますが、LDの場合は、学習そのものに固有の困難があるという違いがあります。

ADHDの診断と発達障害の診断

発達障害の診断は、専門医(精神科医や児童精神科医など)が、問診、行動観察、心理検査などを総合的に評価して行われます。ADHDの診断も、この発達障害の診断プロセスの一部として行われます。

診断のポイントは以下の通りです。

  • 幼少期からの発達の偏りがあるか。
  • 現在の生活や学業、仕事にどの程度影響が出ているか。
  • 他の精神疾患や発達障害の可能性はないか。

ADHDと診断されるには、不注意や多動性・衝動性の症状が、複数(6つ以上)かつ持続的(6ヶ月以上)に認められ、それが生活の場面(家庭、学校、職場など)で支障をきたしていることが条件となります。

発達障害全体の診断では、ADHDの特性だけでなく、ASDやLDなどの他の特性がないかも慎重に評価されます。そのため、ADHDは発達障害という大きな傘の下にある、特定の特性群を指すものと言えます。

大人になってからのADHDと発達障害

子供の頃は特性が目立たなくても、大人になってから「あれ?もしかしたら?」と発達障害やADHDに気づく人も増えています。社会生活を送る上で、求められることが複雑になり、特性による困難が顕在化するためです。

大人になってからのADHDの特性は、子供の頃とは少し形を変えて現れることがあります。例えば、

  • 仕事でのミスが多い
  • 人間関係でトラブルを起こしやすい
  • 約束を守れない
  • 片付けが苦手で部屋が散らかりがち
などです。多動性は、落ち着きがないというよりは、常に何かをしていたい、じっとしているのが苦手といった形で現れることもあります。

発達障害全般に言えることですが、大人になってから診断を受けることで、これまでの生きづらさの原因がわかり、安心感を得られることもあります。また、自分の特性を理解することで、より適した環境や働き方を見つけやすくなります。

重要なのは、診断を受けたからといって「障害者」というレッテルを貼るのではなく、その人ならではの強みや、特性とうまく付き合っていく方法を見つけるための第一歩だと捉えることです。

発達障害とADHDの違いは、ADHDが発達障害という大きなカテゴリーの中の一つであるということです。それぞれの特性を理解することで、自分自身や周りの人をより深く、温かく見守ることができるようになります。もし、ご自身や身近な人に気になる点があれば、一人で抱え込まず、専門家への相談を検討することも大切です。

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