「社会保険」と「健康保険」、この二つの言葉、なんとなく似ているようで、実は違いがあります。 社会保険と健康保険の違い をきちんと理解することは、自分の生活を守る上でとても大切です。ここでは、この二つの違いを分かりやすく、そして詳しく解説していきます。
社会保険の全体像と健康保険の位置づけ
まず、社会保険というのは、病気、高齢、失業、障害など、人生で起こりうる様々なリスクに備えるためのお金やサービスをみんなで支え合う仕組み全体を指します。つまり、「社会保険」という大きな傘の中に、「健康保険」が含まれているイメージです。 社会保険と健康保険の違い を理解するには、この親子関係のような関係性を把握することが重要です。
健康保険は、その社会保険の一員として、主に病気やケガをしたときの医療費をみんなで負担し合うことを目的としています。例えば、病院にかかったときに、窓口で支払う医療費が3割で済むのは、健康保険に加入しているおかげなのです。この他にも、社会保険には以下のような種類があります。
- 年金保険
- 雇用保険
- 労災保険
- 介護保険
このように、健康保険は社会保険という大きな枠組みの中で、医療に関する保障を担っているのです。
健康保険の具体的な内容を見てみよう
健康保険について、もう少し具体的に見ていきましょう。健康保険に加入すると、どんなメリットがあるのでしょうか。
- 病気やケガをしたときの医療費負担の軽減 ：病院で診察を受けたり、薬をもらったりしたときの窓口負担が、原則1割～3割になります。
- 高額療養費制度 ：医療費が高額になった場合、自己負担額には上限が設けられています。上限を超えた分は、健康保険から払い戻されます。
- 出産育児一時金 ：お子さんが生まれたときに、一時金が支給されます。
- 傷病手当金 ：病気やケガで働けない期間、生活費を保障するために給料の一部が支給されます。
これらの制度は、予期せぬ病気やケガに備え、安心して生活を送るために非常に役立ちます。
健康保険には、大きく分けて「国民健康保険」と「被用者保険（会社員などが加入するもの）」の2種類があります。
| 種類 | 加入対象 | 運営者 |
|---|---|---|
| 国民健康保険 | 自営業者、無職、年金受給者など | 市区町村 |
| 被用者保険 | 会社員、公務員など | 健康保険組合、協会けんぽなど |
それぞれ加入する対象や保険料の決まり方が異なります。
社会保険料の支払いはどうなっているの？
社会保険料は、毎月の給料や収入から天引きされることが一般的です。この保険料は、社会保険の各制度を運営するための大切な財源となります。 社会保険と健康保険の違い を理解する上で、保険料の支払いについても知っておくことは重要です。
- 給与からの天引き ：会社員の場合、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料などは、給与から自動的に差し引かれます。
- 事業主との折半 ：健康保険料や厚生年金保険料は、加入者本人と事業主（会社）が半分ずつ負担するのが原則です。
- 国民健康保険料 ：自営業者などの場合、国民健康保険料は世帯ごとに計算され、市区町村に納付します。
保険料の金額は、収入や年齢、加入している保険の種類によって異なります。
社会保険料の計算方法には、収入に応じた「標準報酬月額」や「標準賞与額」といった考え方が用いられます。この金額が、保険料の元となるのです。
老後の生活を支える年金保険
社会保険の中核をなすものの一つが、年金保険です。これは、私たちが老齢になったり、障害を負ったり、あるいは亡くなったりしたときに、本人や遺族に年金を支給する制度です。
- 老齢年金 ：一定の年齢（原則65歳）に達し、保険料の納付期間などの条件を満たした人に支給されます。
- 障害年金 ：病気やケガによって所定の障害が残った場合に支給されます。
- 遺族年金 ：年金受給者などが亡くなった場合に、その遺族に支給されます。
年金保険は、長生きするほど、または障害を負った場合の生活を支える上で、非常に重要な役割を果たします。
年金保険料は、国民年金保険料と厚生年金保険料に分かれます。会社員であれば、厚生年金保険料として給与から天引きされ、国民年金保険料も含まれています。自営業者などは、自身で国民年金保険料を納付します。
万が一の失業に備える雇用保険
雇用保険は、働く人々が失業した場合に、生活を支えるための給付を行う制度です。また、失業しないための雇用対策や、スキルアップを支援する制度なども含まれています。
- 失業給付（基本手当） ：会社都合や自己都合で離職した場合に、一定期間、生活費として支給されます。
- 再就職手当 ：早期に再就職が決まった場合に支給されることがあります。
- 育児休業給付金 ：育児休業を取得した際に、所得の一部が補填されます。
雇用保険は、働くことのできる環境を維持し、万が一の離職の際にも安心して次のステップに進めるようにサポートしてくれます。
雇用保険料は、健康保険料と同様に、会社員の場合は給与から天引きされます。この保険料は、事業主と被保険者で負担します。
仕事中のケガや病気をカバーする労災保険
労災保険（労働者災害補償保険）は、業務中や通勤途中に起きたケガや病気、障害、死亡などに対して、労働者やその遺族に保険給付を行う制度です。 社会保険と健康保険の違い の中で、労災保険は特に「仕事」に特化した保障と言えます。
- 治療費の保障 ：業務上のケガや病気の治療にかかる費用が、全額または一部支給されます。
- 休業補償 ：治療のために働けなくなった期間、賃金の一部が補償されます。
- 障害補償 ：後遺障害が残った場合、その程度に応じて給付されます。
- 遺族補償 ：死亡した場合、遺族に給付されます。
労災保険の保険料は、原則として事業主が全額負担します。そのため、従業員が直接保険料を支払う必要はありません。これは、労働災害を防止し、万が一発生した場合の労働者の生活を守るという、事業主の責任を明確にするためです。
労災保険の給付を受けるには、労働災害が発生したことを所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。
高齢者の生活を支える介護保険
介護保険は、高齢化社会が進む中で、介護が必要になった高齢者を社会全体で支えるための制度です。40歳になると、この介護保険に加入することになります。
- 介護サービス ：要介護認定を受けた高齢者は、自宅での生活を支援するサービスや、施設でのサービスなどを利用できます。
- 自己負担額 ：利用できる介護サービスの費用は、原則として1割～3割の自己負担となります。
介護保険は、高齢者が尊厳をもって生活できるよう、また、その家族の負担を軽減するために重要な役割を担っています。
介護保険料は、65歳以上の人（第1号被保険者）は、年金からの天引きや口座振替で納付します。40歳から64歳までの人（第2号被保険者）は、健康保険料に上乗せして徴収されることが一般的です。
介護保険のサービスを利用するためには、市区町村に要介護認定の申請を行い、認定を受ける必要があります。
このように、社会保険は、健康保険だけでなく、年金、雇用、労災、介護と、人生の様々なステージで私たちを支える多様な制度の総称なのです。 社会保険と健康保険の違い は、社会保険が大きな枠組みであり、健康保険はその中の医療に関する部分を担っている、という理解が大切です。これらの制度を正しく理解し、上手に活用していくことで、より安心できる生活を送ることができます。